傘の下に雨が降る

 投稿予定の続き物の序章です。まだ次はできていません。
 次を書くに当たって、反応を見たいのでこちらにアップします。
 もしよければ感想をいただけると嬉しいです。

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 この街の天気予報は予言者たちよりもずっと正確だ。
 1週間前から予報されていた通り、今日は朝から大雨が降っている。
 僕が産まれるよりもずっと昔には外れることも多かったというが、大きな傘が出来てからこっち、天気予報が外れたことは一度としてない。
 気を紛らわせるために点けたテレビには、予言者たちがまた同じ議論を繰り返す。
 子どもが町から消えるだなんてそんなもの、ただ数字とにらめっこしているだけの彼らに何が分かるというのだろう。ただ、傘が出来た当初に増えすぎた人口が、徐々に減っているというだけなのに。
 何より、僕にとっては将来の子どもたちよりも君がいないことの方がずっと重要だ。
 テレビから聞こえる声の合間に、窓を打つ強い音が聞こえる。ある種のリズムを刻む人工的な自然が作った音は、僕の心臓を直接叩くようだった。
 どこか焦るような、落ち着かない気持ちに心地よさを感じながら、もたれ掛かった壁に耳を寄せる。
 雨が降るといつも鳴っていた電話を今もまだ待っている。そんな僕を君は笑うだろうか。
 君との電話は、いつも同じ内容なのに。
 街を覆う傘の外でも雨は降っているのだろうか。そこでは本物の夜空と本物の星が広がっているのだろうか。七色の橋だけはこの街のものも本物だというけれど、それは本当なのだろうか。そんなこと。
 小学生の時に学校の先生が言っていた。この街で起こる全ての物事に意味のないことなどないのだと。それはこの街を造った神たちがそういう風に計画をし、今もその通りに運営が成されているからだ。
 雨が降るのも、風が吹くのも、全ては計画のうち。だから天気予報も外れない。
 予言者たちは知っているだろうか。傘の外の雨がどんな音を鳴らしているのかを。知っているだろうか。君と僕を繋ぐこの電話が鳴らないことを。
 嘘つきな予言者たちの声を雨音に溶かす。このまま全てが溶けてしまえば良いのにと願いながら。

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