見出し画像

ベクトルが相手に向けられた時

『あー、辛い』
コロナがやってくる前から結婚式の計画を立てていたのに、あと1ヶ月を切ってからコロナウィルスがやって来て、度重なる欠席連絡、キャンセルするにはまだ規約もなく莫大な費用、長年頑張った遠距離恋愛の結果がこれか…という絶望感。

自分がこの世で一番悲劇なのかごとく、辛い辛い、そう思っていました。

当時はまだ考えが甘かったので、
『あと2ヶ月くらいすれば、収束するかな…』
と、光が見えてくるのをじっと待つことにしました。

光どころか、暗闇にどんどん突入していくような状況。まさにお先真っ暗。

…良いこともありました。
コロナ前最後のツアー旅行者になれて、貸切状態で海外を満喫出来て、名画や彫刻を自分たちだけで楽しめた贅沢な時間。
この為に、辛い経験があったのかな。そう思えるほど、唯一無二の、貴重な、心に残る温かい旅でした。

それとこれとは話が違うと、また辛い気持ちを抱えていたけど、ふと、
『悲劇の花嫁をいつまでもやっていても仕方ない。今、私に出来ること、小さくても出来ること、それってなんだろう?』
と、思い直しました。

とても多くの、辛い方々がたくさんいました。
海外の彼との遠距離恋愛、コロナで国の行き来が出来なくて辛い想いを抱えている。
結婚式が延期になった。海外挙式を夢見てたのに。
訴訟を式場と起こそうと思っている。
式で吹奏楽の演奏を仲間にしてもらう予定だったのに、集まることが許されない。
式場が経営不振でなくなってしまった。など…泣

ああ、自分は、自分のことしか見えてなかったのかな。辛かったけれど、もっと辛い人がいるんだな。
そう思いました。

試しに、

『私はピアノを弾くことが出来ます。辛い気持ちの方、リクエストを仰ってくだされば、可能な限りお応えします』

と、募集をかけてみました。
きっと来ないだろうなぁ。と。

すると、ぽつ、ぽつ、と、少しずつリクエストが来ました。

有名なJ-pop、ドラマの曲、ジブリ、ディズニーなど。

『涙が出てきました。もう少し頑張れそう』
『主人との、思い出の曲なんです。ありがとうございます。』
『みんなで演奏するはずだった曲、聴けて、またその日まで頑張ろうと思えました。』
『韓国の彼との思い出の曲です。本当にありがとうございます。』

…少しでも力になれたらと、始めた活動でした。
でも、私が気づいたら心洗われて、温かくなって、涙があふれそうでした。

なんでこんな時代、とか、なんでこんな目に、とか、いくらでも言える、そして全員がそれを目の当たりにしている特殊な状況に、ほんの少しの繋がりが、荒んだ心を潤してくれました。

多分、演奏をリクエストしてくれた方より、演奏した自分が、一番、笑顔になれたのかもなぁ。

小さなお話だけれど、きっと一生忘れられない出来事になりました。


#はたらいて笑顔になれた瞬間

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?