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#あなワタ 二次創作

 こんばんは
 この記事は届木ウカAdvent Calendar 2020 25日目の記事です。
 担当しますのは昨日に引き続き、剥製です。
 本日の記事は届木ウカ商業デビュー小説「貴女が私を人間にしてくれた」の二次創作です。ネタバレなどあるので嫌な方は引き返してください。

※ネタバレ注意

 繰り返しますが、ネタバレがあるのでまだ読了されていない方は通販サイトや全国の書店などにてお買い求めいただくなどご対応お願いします。
 また二次創作が苦手な方はブラウザバックお願いします。
 シーンとしては物語の始まる前の愛依の成長記録の一片、です。

本文

1.
 未来アイドルだって夢を見る。
 アイドルは人に夢を与えるのが仕事だけど、私だってたまに夢を見て、そしてすべてを忘れてしまう。でも、何故だかその感覚は嫌いじゃない。夢から醒めた後は、だいたい脳がフレッシュに思えて、今までの私ではないように感じるからかな。
 たぶんきっと夢の中の私が素敵な出会いや経験をしていて、頭では忘れてしまっていても、この身体のどこかに溶け込んで私の一部になっているんじゃないかな、などと時々夢想する。

2.
 私たちが過ごす日常は、お風呂とトイレと寝る時以外は未来アイドル部の活動として世界中に配信されている。視聴者は「カントクさん」と呼ばれていて、いつも私と真依と実依のまわりを飛ぶドローンからの配信を見ては、応援をくれたり配信を盛り上げてくれたりする。
 私たちはアイドルなのでカントクさんたちに夢や希望を与えるのが生きがいだし、カントクさんたちも私たちの活動で元気をもらったり励まされたりしている。win-winの関係ってやつかな? 私は私にとってアイドルは天職だと胸を張って言えるし、これからも三人で最高のアイドル目指して邁進していく。

3.
 初等部五年生の頃、普段は見た夢のことを全然覚えてなかったのに、寝て起きてしばらく経ってもよく覚えていることがあった。あの頃は年齢が一桁の頃とは違って、ちょっと背伸びをした発言をしたり身体も少しずつ子どもじゃなくなってきて、カントクさんから「大人になったね」なんて言われることも多かった。真依も実依もちょうどその時期は、なぜか夢を覚えてると言っていて、それならとアイドル部顧問の教頭先生が朝活動の時間にと、見た夢の話をするコーナーを提案したのだった。
 私が見る夢は、見たこともない大きなホールでたくさんのお客さんに囲まれてステージの真ん中で踊ってたり、未来アイドル部みんなで史上初のエベレスト登山を成功させたりする夢だった。真依は好きだったゲームのDLCがたくさん出て嬉しかった夢の話をしてたし、実依はかわいい猫に囲まれて幸せだった夢の話がカントクさんに一番受けてたと思う。
 私は元々未来アイドル部のリーダーとして常に落ち着いていて時には情熱的なリーダーでいようと漠然と思っていたけど、見た夢のことを思い出して話しているうちに、それこそが私で、それこそが私の目指すアイドルなんだと思うようになっていた。カントクさんや教頭先生もそれを応援してくれるし、私も毎日が楽しい。

4.
 中等部に上がって以降は、まためっきり夢を見なくなったけど、この前の雑談でたまたま夢の話が出た。そういえば夢トークをしていた時期は、配信前に忘れないよう見た夢をメモしていた日記があったことを思い出し、早速引っ張り出してきた。毎日いろんな配信をしているので五年以上も前のことなんてもう覚えてないし、忘れてしまった意外なことが書いてあったら話のネタになるかもと思ったのだ。

20xx年○月○○日
 見た夢。水泳の全国大会で優勝した。水飛沫が妙にスローでリアルだった。最後の25mまで必死に諦めなかったので優勝できて嬉しかった。これで大好きなユウくんと一緒にいられる。ユウくんは優勝したら私だけを見てるって約束したから♡ユウくん大好き♡
 感想。恋愛の夢って初めて見た。胸がドキドキする

 ……なんとなく開いたページに早速意外な夢が出てきた。
 大会で優勝するような夢は何回も見ていて、カントクさんに話したのもなんとなく覚えているけど、初等部の頃で夢の中とはいえ、こんな色恋の感情が私の中にそもそもあったのが驚きだった。私はアイドルが恋愛をすることをNGだとは思わないけど、いまの私は最高のアイドルになる目標の方がずっと大事なので、自分の恋愛なんて今まで考えたこともなかった。
 でも、どうしてだろう。昔の自分も同じように思って、同じようにびっくりするだろう夢なのに。今日まで覚えてても不思議じゃないのに。どうしてすっかり忘れてしまったんだろう。
 その後ペラペラページをめくって、懐かしい話を思い出したり明日話せるようなネタを見つけたりして、考えるのはやめて眠った。

5.
 明くる日、恋愛の話は伏せて、真依と実依に夢の話を振ってみた。二人とも、夢自体はもう覚えてないけど、夢の話をした時に言ってたような未来像に今なってると言う。
 たしかに。私はリーダーシップを発揮する夢を見てそのことを話したことでどんどんリーダーらしくなっていった。真依はクールなキャラにプラスで元来のゲーム好きからどんどんゲーム担当になっていったし、実依も綺麗なものよりかわいいものに囲まれる方が好きになったりお笑いキャラっぽくなっていったりしていた。
 それは全部いままで私たちが見た夢の中で似たような話があった。やっぱり夢って無意識に影響を与えるのかもしれない。

6.
 また明くる日。夢を見た。すぐに明晰夢だと気付いたけど、私は誰かの視点で特に自由に動けそうにない。
 誰もいない夕暮れの町を歩いていた。私は水泳大会で優勝した女の子で、自身の全存在をかけて愛する男の子のもとへ向かっていた。私は幼くてまだ非力だけど、彼のことを手に入れるためならどんなことだってしようと考えていた。おそらくこの前の日記の子だ。
 見たこともない灰色の公営団地を歩いていく。夕焼けが濃い影を長々と描く。どこかの扉の前で立ち止まる。ピーンポーン。
「…はーい」
 男の子の気怠い声が反応する。ガチャ。
「おう、リリカ。どうしたんだよ」
「ユウくん、私水泳大会優勝したよ」
「らしいな。おめでと。で、どうしたの?」
 瞬間、私の中に困惑と悲嘆と嫉妬と、覚えたことのないたくさんの感情が溢れた。たくさんの感情にあてられ、私より幼い子がこんな強烈で複雑な感情を持つことに畏怖の念すら覚えた。リリカと呼ばれた女の子は僅かに震えている。
「約束したよね。私が水泳大会で優勝したら一生一緒だよって」
「…そうだっけ?」
「……」
 私は何かを行おうとするが、夢が終わってしまう感覚に引っ張られる

 …意識が深い暗闇に落ちていく。
 頭の電源が切れて脳の中がきれいに整理整頓されるような感覚を覚える。
 あーあーあー

7.
 未来アイドルだって夢を見る。
 起きた時にはすべてを忘れてしまうけど、夢の中の出来事はきっとあり得た私の可能性なんだろう。ステージで踊る私、未来アイドル部で楽しくおしゃべりする私。私が見た夢は私の無意識に作用し、私の人格を形成する。
 私は夢みたいな毎日を過ごして、全世界に夢みたいな思いを発信し続ける。
 だって私はアイドルだから。

後書き

 感想回は年末にあるので、とにかく二次創作を書こうと思って書きました。
 いっこ感想述べると、愛に依存するで「愛依」って名前がやば〜
 あと二次創作においては無粋ですが力量不足ゆえに補足をfusetterにあげました…


 三度の飯より自身の創作物への感想が好きというウカ様に対して、少しでも喜んでいただけるような何かになっていれば幸いです。

 また、突発的な思いつきで始めたこれまでの拙いAdvent Calendarを読んでくださった各位、並びに投稿ツイートをRT、favしてくださった皆様、加えて記事を投稿してくださった音宮さんに感謝を申し上げます。
 そして何より、今日まで約三年に渡って活動をされてきた届木ウカ様に最大限の感謝とこれからのご活躍を祈り申し上げます。あなたが私を剥製にしてくれました。

 本日で届木ウカAdvent Calendar 2020は終了です。2020とつけたのでもしかすると来年もあるかもしれません。その時はどなたか立ち上げてください。協賛させていただきますので

おわり

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