数学メモ:関数の極限(無理数)は微分係数にできる
問題
このような問題を扱った。
$$
\displaystyle{\lim_{x\to\infty}\sqrt{x}(\sqrt{1+x}-\sqrt{x})}
$$
(福岡大 医 2018 一部抜粋)
この問題は、普通に有理化してやってみるなら
$$
\displaystyle{\lim_{x\to\infty}\sqrt{x}(\sqrt{1+x}-\sqrt{x})}\\
=
\displaystyle{\lim_{x\to\infty}\frac{\sqrt{x}}{\sqrt{1+x}+\sqrt{x}}}\\
=
\displaystyle{\lim_{x\to\infty}\frac{1}{\sqrt{\frac{1}{x}+1}+1}}\\
=
\frac{1}{2}
$$
これで十分、文句なしの解答である。しかし、今回別の方法を考えた。
結論
結論だけ先に書くと、$${t=\frac{1}{x}}$$とおき、そのうえで微分係数の式に帰着させるのである。
変形だけ先に記す(説明は次以降のセクションで)。
このように置く理由が大切であり、この次のセクションで記す。
$$
\displaystyle
\lim_{x\to \infty}\sqrt{x}(\sqrt{1+x}-\sqrt{x})\\
=\lim_{t\to +0}\sqrt{\frac{1}{t}}(\sqrt{1+\frac{1}{t}}-\sqrt{\frac{1}{t}})\\
=\lim_{t\to +0}\frac{t\sqrt{\frac{1}{t}}(\sqrt{1+\frac{1}{t}}-\sqrt{\frac{1}{t}})}{t}\\
=\lim_{t\to +0}\frac{\sqrt{t+1}-1}{t}\\
=\lim_{t\to +0}\frac{(\sqrt{t+1}-1)-0}{t-0}\\
=\left. \frac{d}{dt}(\sqrt{t+1}-1)\right|_{t=0}\\
=\frac{1}{2\sqrt{0+1}}\\
=\frac{1}{2}
$$
微分係数を利用した極限(基本事項)
微分係数の定義の式が次のよう
$$
\displaystyle
f'(a)=\lim_{x \to a}\frac{f(x)-f(a)}{x-a}
$$
なので、$${f(0)=0}$$な関数を用いて
$$
\displaystyle
f'(0)
=\lim_{x\to 0}\frac{f(x)-f(0)}{x-0}
=
\lim_{x\to 0}\frac{f(x)}{x}
$$
と書けるので、逆に
$$
\displaystyle
\lim_{x\to 0}\frac{f(x)}{x}
=
f'(0)
$$
と書ける。
また、このことから$${f(0)=0,g(0)=0}$$な関数を用いて
$$
\displaystyle
\lim_{x\to 0}\frac{f(x)}{g(x)}
=
\lim_{x\to 0}\frac{f(x)-f(0)}{x-0}\frac{x-0}{g(x)-g(0)}
=
\frac{f'(0)}{g'(0)}
$$
を得る。
微分係数の定義の式に帰着させて得る極限
先程の式について
$$
\displaystyle
h(x)
=
\frac{f(x)}{g(x)}
$$
とおけば、
$$
\displaystyle
\lim_{x\to 0}h(x)
=
\lim_{x\to 0}\frac{f(x)}{g(x)}
=
\frac{f'(0)}{g'(0)}
$$
と書けることを表している。
(まるでロピタルの定理の一部!)
逆に言えば、適当な関数hが収束する可能性がある時は、この形に帰着させることで微分係数の定義に帰着できる可能性があると感じる。
x→0について議論してきたが、x→∞だったとしてもt=1/xと置き換えればt→0とすることで似た形に落ち着く。
(いくらかやってみればわかるが、f(x)やg(x)の極限が発散するときには上手くいかない。それ以外ではf(x)=g(x)=0となるように適当に置くことは基本出来るので、利用可能である)
では、分数関数ではないh(x)も、無理やり分数関数に帰着できれば、それを微分係数に帰着できるのではないかと感じる。イメージとしては、次の通りである。
例えば、$${\displaystyle{\lim_{x\to \infty}f(x)}}$$が収束する関数(x→∞に注意)について
$$
\displaystyle
\lim_{x\to \infty}f(x)
=
\lim_{t\to 0}f(t)
=
\lim_{t\to 0}\frac{tf(t)}{t}
=
\lim_{t\to 0}\frac{tf(t)-0\cdot f(0)}{t-0}
$$
(二行目でx=1/tと置き換えている
また、最後の一行はtf(t)がt=0で0になるという仮定の時の話である)
これは、分数関数でもそうでなくてもいいが、関数に1=t/tを掛けて、無理やり分数関数にしてやることで、微分係数の形に帰着させている。
これが成立するなら、tf(t)がt=0で0となるなら、微分係数という形で極限が得られるはずである。
(実際には式変形の末上手くいくことが多い)
次のセクションで実際にやってみよう。
実践
問題集などによく載っている問題に次のようなものがある。
$$
\displaystyle\lim_{x\to\infty}
(\sqrt{x^2+1}-x)
$$
を求めよ。
これも収束する極限なので、微分係数に帰着できる可能性がある。
先程の説明をなぞってみる。
先程同様に二行目からxをx=1/tと置き換えている
$$
\displaystyle
\lim_{x\to\infty}(\sqrt{x^2+1}-x)\\
=\lim_{t\to+0}(\sqrt{\frac{1}{t^2}+1}-\frac{1}{t})\\
=\lim_{t\to+0}
\frac{t(\sqrt{\frac{1}{t^2}+1}-\frac{1}{t})}{t}
$$
ここまでで、むりやり分数関数に変えた。
少し式を綺麗にすれば
$$
\displaystyle
=\lim_{t\to+0}
\frac{t(\sqrt{\frac{1}{t^2}+1}-\frac{1}{t})}{t}\\
=\lim_{t\to+0}
\frac{(\sqrt{1+t^2}-1)}{t}\\
=\lim_{t\to+0}
\frac{(\sqrt{1+t^2}-1)-0}{t-0}
$$
最後の式は$${i(t)=\sqrt{1+t^2}-1}$$と置けば明らかな微分係数の式であり、$${i(0)=0}$$、$${i'(t)=\frac{t}{\sqrt{1+t^2}}}$$
なことから
$$
\displaystyle
=\lim_{t\to+0}
\frac{(\sqrt{1+t^2}-1)-0}{t-0}\\
=\lim_{t\to+0}
\frac{i(t)-i(0)}{t-0}\\
=i'(0)\\
=0
$$
となり
$$
\displaystyle
\lim_{x\to\infty}
(\sqrt{x^2+1}-x)\\
=
\lim_{x\to\infty}
\frac{1}{\sqrt{x^2+1}+x}\\
=0
$$
の結果に一致する。
冒頭の入試問題もこの流れにしたがった解法である。
まとめ
無理数関数の別解として、微分係数の式への帰着を考えた。
分数関数でなくても、微分係数の式に帰着できることがある(無理関数は、その一例)。
特に解くのが早くなるわけではなさそうであり、ただ、気づいただけな感じである。
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