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象眠舎と味園ユニバース

昔ちょっといいなと思っていた人が吉澤嘉代子が好きと言ったので、私も好きだと言って近づく口実に聴くようになった。その人は結局他人に興味がなく、自分に興味のない人との逢瀬はドキドキはしたがちっとも楽しくなかった。ただ、嘉代子のことは好きになった。そんな私にとって愛すべきそして憎むべき象徴である、芯あるホワホワ系女子かよちゃんのライブ行きたいな、え、でも、象眠舎とはいったい…?!となったが、翌週は仕事も落ち着いていそうなので、普段なら家でサザエさん症候群に陥っているであろう日曜日の夕刻、意を決して行くことにした。
日も暮れた頃、騒々しい人混みをかいくぐって見つけた、暗闇にデーンと現れるユニバースの派手な看板。階段を降りて驚いた。まさかあんな喧騒の地下にこんなムーディー(?)な世界が広がっていたとは…鏡張りの壁に、奥の木には電球が飾られキラッキラ、天井からは惑星や万博のミャクミャクみたいなオブジェが吊り下がっていて、素敵〜!と、静かにテンションが上がった。飲み物を手に入れて、ソファに座るかスタンディングかで一瞬悩んだが、ここはミーハー魂、少しでも近くで嘉代子を見たい!!ということで、スタンディングを選択した。見ると、1人で来ている人もかなり多く、客層も老若男女、居心地は全然悪くなかった。ちびちびとジンジャーエールを啜りながら待つこと10分、メンバーの方々が続々と舞台へ上がり、公演が始まった。
始まりは、唯一予習していた65。曲名も覚えていなかったのだが、あたたかくまばゆくライトアップされた中、女性シンガーたちの心地よい歌声とバックミュージック、そしてクリスマス感のある曲調に胸が高鳴り、自然と体が揺れる。この時点でもうすでにああ今日来てよかった!と心を鷲掴みにされていた。正直、その後の曲も、シンガーの皆さんも、小西さん含む演奏者の皆さんのことも一切知らなかったのだが、もうこの一晩で大好きになってしまった。小西さんとは、絶対に目が合ったと思う!
実は連日のスタンディングライブだったので疲れがピークになり、休憩中は柵にもたれかかって目を瞑った。待っている間に流れる曲も、椎名林檎、シガーロス、テイラースウィフトたちのexile、アデルなど、絶妙に好みの選曲でなんだこの私に優しい空間は…と、自分中心に世界が回っているように錯覚してしまった。
そして後半、吉澤嘉代子…ドレスがシックで素敵。まずは鬼!ツノダンスがかわいい。続く月曜日戦争では天井の惑星もピカピカしていた!背伸びをして、前の人の頭をよけて、かよちゃんの姿を目に焼き付けようと必死だった。そして最後は残ってる。♪忙しい朝が連れて行っちゃうのぉ〜、の部分は昔同じように感じたことがあったので、毎回その時の自分を思い出してちょっとかわいそうで切なくなるのだが、そのあとの♪私の火は〜のろしをあげて〜を力強く歌うので、ちょっと励まされる。そんな個人的にちょっとばかり思い出のある曲。コアなファンからしたら大衆向けの選曲だったのかもしれないが、大満足だった。伴奏が終わらぬうちにお辞儀をして去っていく姿もかっこよかったな。
楽器ってかっこいいなあ、音が本当に心地よく響いて、アンコールまでずっと楽しくて、本当に本当にいい夜だった。終演後ちょっと意外な感じの、昔で言う姉ギャル系お嬢たちも、いいライブやったなぁと言い合っていて、ですよね!!!と心の中で私も共感した。
1万円以上グッズを買うとポスターに小西さんからサインをもらえる特典がついていたが、小っ恥ずかしくて、象のマークのスウェットとステッカーを中途半端に買いました。
 セトリを知りたいけれど、ただ、曲名を知ったところで、あの夜の再現はできない気がする。生演奏とプロの照明。ライブの醍醐味。いい夜だったな、と噛みしめながら帰路に着いた。

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