自分の「相棒」はだれなのか?
自分の体は一つしかない。
頭脳も一つしかない。
でも仕事は増え続ける。
薬剤師の数は限られているし、お互いに自分の仕事を増やしたくないので、指示やおねがいにはビクビクしている。
一人薬剤師で数人の事務員がいる薬局、複数薬剤師に複数の事務員がいる薬局。色々な形態があると思う。薬剤師一人だけの薬局もある。
その中で、自分がいかに、「良い仕事」が出来るかは、自分の右腕になる人がそばにいるかどうかだ。
今までは事務員は文字通り事務員としての仕事が中心だった。0402通知以降、事務員から調剤補助へ仕事の内容が転化してきたと思う。
そして、その成果が現れてきて数値にも出てきた頃だと思う。薬剤師の求人状況や給料の推移を見たら分かるだろう。
コロナ禍に入るまさに直前に出された通知。
この通知の範囲内で、薬剤師の補助をさらに高度化し薬剤師の右腕にまで事務員を育てられただろうか。
参考として以下を読んでみて欲しい。
某転職サイトの情報だが、まとまっていてわかりやすい。
この中に、アンケートの結果として
とある。
「薬剤師の指示、確認などの体制整備」の問題が上がっている、他にも個人の熱意や抵抗感など事務の戦力化に対する障害として挙げられている。
意外と、薬剤師自身が「0402通知に否定的」とも受け取られる。
個人的に、これはマネジメントする側の薬剤師ではなく、マネジメントされる側の薬剤師の心境だと思う。雇われ側の薬剤師に「事務員に仕事を奪われる」という、ある意味危機感みたいなものがあるのだろう。
このアンケートの結果では、0402通知のあと、非薬剤師の採用を強化したところが増えたらしい。
特に大手でこの動きが強かったのがうかがえる。
小さなところは、コロナ禍で処方や売り上げが減ったところにさらに新規で人員を投入することができないのであろう。
薬剤師が余剰になっている状況で、さらに人員をプラスするのはたしかに無駄だとおもう。
そのような環境下で雇用される薬剤師は、必然的に非薬剤師が可能な業務をやり続けることになる。
この状態はとても危険で、しばらくすると薬剤師の時間あたりの賃金低下が加速していくと思う。
この事務員と薬剤師の仕事内容のカニバリゼーションは、この先、薬剤師は「地域偏在」から「企業偏在」にクローズアップされる部分が変化することになると思う。
中小を含めた全ての企業、特に「調剤薬局」という形態。現在は買い手市場として優秀な薬剤師を比較的低い賃金で雇うことが地域によっては可能な状態だと思う。
しかし、超大手調剤薬局チェーンが全国に抱える「調剤薬剤師」が大量に控えている。
東京では給料が安い。
東京の薬学部の新卒でもあえて地方ドラッグストアを選ぶ薬剤師が増えているのは事実である。
給料が全然違うからである。
超大手調剤薬局チェーンの採用状況はどうだろうか。薬剤師の採用数と事務職の採用数の変動を確認すれば良いのだろうが、代表的な超大手調剤薬局チェーンが大手ドラッグストアに吸収されてしまった。多分、H社が全国に抱えている「調剤薬剤師」の再分配が起こるだろう。
そして、その後に「事務員」が今まで薬剤師がやっていた現場の作業が、非薬剤師業務として、行うようになり、対物薬剤師との置き換わりが進むだろう。
この置き換わりが起こり始めると、ピッキングなどの非薬剤師業務を中心に仕事をしていた薬剤師は間違いなく淘汰されるだろう。機械化よりも先にテクニシャン化が起こる。事務員は機械よりも汎用性が高いからだ。この先も不透明な調剤報酬。機械化して身動きを取れなくするよりも、マンパワーで調整した方が身動きそのものは取りやすい。
対物薬剤師は、現在までに、もし調剤の外部委託が間に合っていたならば、「調剤工場」の要員になれていた可能性はある。
実は、調剤の外部委託の議論はこのため(大手の調剤薬局チェーンの薬剤師の受け皿)にあったのではないかと考えている。
超大手の調剤薬局チェーンが超大手のドラッグストアに吸収されることは、対人加算の取れる薬剤師は最前線で、対人加算を得られない薬剤師は、別の現場への配置などで区分されていくことになるだろう。
大手のドラッグストアでは、使える薬剤師を残し、定期採用している事務職と合わせて、40枚制限を守りながら最大の効用を目指すことになる。
このなかで、自分たちがどのように生き残っていくか?であるが、これはドラッグストアでも調剤薬局でも大手でも中小でも同じだと思う。
以前に言ったように、薬剤師である自分を頂点に、事務員を戦力化して、自分の右腕としていくことである。
対人業務(広義の対人業務であり、服薬指導や、疑義照会、情報提供、かかりつけ、在宅など含む)を効率的にこなしていく必要がある。
今まで自分や、他の薬剤師がやっていた作業を「相棒」にやってもらうのである。
これに抵抗感を示したり、拒否感を示したりしていたら業務から外される可能性がある。
これは事務員にとってもおなじで、AIや機械に代替されやすい事務員という職業で、今後とも生き残っていくためには、薬剤師以上に変わらないといけない。
事務員も、薬剤師も、お互いに「私の仕事ではない」とか、「これは私の仕事」とか、縄張り意識を利かせていてはこの先生き残れないだろう。
患者さんに接する回数、時間を増やすことが、「かかりつけ患者を増やす」ことや、「かかりつけ薬局になる」ための最も効率の良い方法だと思う。
そのためには、事務員を今まで以上に戦力化し、信頼できる「相棒」になってもらう必要がある。
それを育てる、いや、
事務員のもつ可能性を活かすのは薬剤師である。