【競馬予想】2023年 宝塚記念のゆるっと展望予想

■宝塚記念

宝塚記念の例年の傾向として開催が進んだ馬場に雨季が重なり、上がりがかかるわりに道中はGⅠらしく緩まないというタフなレースになりがち
そのため、府中の直線で弾けるようなキレ味よりも小器用にエンジンの点火を繰り返したりそこそこ速い脚を長く使える馬が勝ちやすく、後ろにいると差し届かないことが多いので逃げ〜中団前目が有利

普段の日本競馬では重いような欧州血統の強さが増すのに注意が必要で、特にSadler's WellsやNureyevといった欧州系のベースとなる血を取り込みつつ、Nasrullah(+Princequillo)の持続的スピードを確保するのが大事だが、かといって今の日本競馬で米国血統がないと前に行けないので自然と米血の重要性も上がってくる

もちろんHyperionなどスタミナの血も必要になってくるが、鳴尾記念の展望でも書いたAlibhaiの血とRibotの組み合わせ(His Majesty、Graustark兄弟が代表例)は宝塚記念でもわりかし効くようで、鳴尾記念から宝塚記念へ連勝したラブリーデイ(Graustarkクロス内包)や、穴でブエナビスタを食ったナカヤマフェスタ(濃いめのHis Majestyクロス)などはわかりやすい例か

10年以上遡るなら日本ではなんとも珍しいHis Majesty直系であるタップダンスシチーも勝っているなど、注目しておいて損はないだろう


そう考えれば競走馬としても種牡馬としてもバチバチにやりあっているキタサンブラックとドゥラメンテを相手に宝塚記念という大舞台で完勝したマリアライトも、アロンダイトやクリソライトが出てくるような米国的素養のある牝系にNureyev≒Sadler's Wellsの権化たるエルコンドルパサー、Kingmambo内のGraustarkをまたぐRibotのクロスと各所へ仕込まれたNasrullah(+Princequillo)で、激走する条件は十分に満たしている

逆にSadler's Wells持ちだったりしても米血が足りず追走だけで足を使い切ってしまったエフフォーリアのような構成はわかりやすい要注意パターン


こういった点を踏まえれば宝塚記念馬にしてHis Majestyを擁したグラスワンダーの直系で、Nureyevもありノーザンテーストでスタミナの土台もしっかりあるボルドクフーシュや、Nasrullahの塊にNureyevを挿したドゥラメンテ×母方でGraustarkを隠し持つスターズオンアースなんかは面白い存在になれたはず

で、今回の宝塚記念において最大の争点はイクイノックスを疑問視するかどうかになるだろうが、上述の要素と有馬・ドバイで見せたパフォーマンスを加味するに積極的に嫌う理由はほぼないと思っている

父・キタサンブラックが幅広い競馬場・馬場で逃げ先行できるだけの追走力があり、母方でトニービンなどNasrullah(+Princequillo)にHyperionと前で粘る血の補強も抜け目なく、メゾンブランシュの部分はRibot+Alibhaiの組み合わせを持つAllegedにNureyevを合わせた形で全体的に足りない部分がない

強いて言えば血統表だけ見ると宝塚記念を走るにしてはHalo的キレ味を強調しすぎている感があるところだが、イクイノックス自身はドバイで押し出される形ながら逃げて勝っているため、前に行ってロングスパートを掛けることは十分可能に見える
あくまでドンピシャとは言えないだろうが、去年の秋天から考えると純粋な競走馬としてのスケール感は疑いようがなく、また国内レースに比べ欧州馬も活躍しやすいドバイシーマクラシックで負かした馬たちがその後ホームに戻って完勝、ないしは善戦していることを思うと、日本主要GⅠの中ではやや欧州質になる当レースで予想から外すのは難しい
 

ただ二番手以下に評価したい馬は結構幅広くて、オッズ的にも上位にいるジャスティスパレスはNureyevやNasrullahもしっかりあり、形的にそう不足ない構成ではある

個人的にはディープが強く出てるように見えていて、前の馬をキレイに捌いたりエンジンの切り替えなどに器用さが見られないぶん阪神2200mを上手く立ち回れるか若干疑問は残るが、消すほど評価を下げるべきではないか

全兄のラブリーデイが宝塚記念を勝利しているボッケリーニもやはりNureyevにGraustarkのクロス持ちで、Nasrullahとスタミナの血も入るなど条件は合うはず

あとは自身のスケール感がこのレースを勝ち切るに追いついているかどうかと、全兄のラブリーデイが勝った時のペースが宝塚記念として少々特殊だったのは気なるポイントか

個人的に少なからず正攻法でイクイノックスを負かせる印象を浮かべられるのはジオグリフだ

母父はNasrullah++Nureyev+Graustarkのお得セットであるキングカメハメハで、さらに下のラインはサンデー×テーストで広範な日本芝適正の高さがベースにある
そして父は輸入種牡馬のドレフォンだが、米国的Nasrullah(+Princequillo)を濃い目に持ちつつRibotをクロスして粘り強さも補強
さらにNureyevの父にあたるNorthern Dancerはもちろん、母父・Forliもちゃっかり持っているのでNureyevを刺激する部分も散見される

血統表だけ見れば今まで挙げた要点をしっかり抑えてあるし、戦績的に評価を落とされがちな所に関しても、各レースをよくよく振り返るとそこまで悪いわけではない
皐月賞以降の芝レースであるダービー、秋天、香港Cはそれぞれキレ負けしていただけで垂れているわけではないし、血統表から考えればむしろ自然な敗因
ダート戦でもわりあい芝レースに近い特性のあるサウジカップでは先行して4着まで残るなど、本領はやはり前目からの抜け出しと見るべきで、皐月賞での勝ち方も5・6番手からの進出だった
この時の勝ちパターンを、上がりがかかってキレの必要性が薄い宝塚記念で再現できるなら、ふたたびイクイノックスに土を着けても不思議ではない

あとは陣営がこの馬をどう捉えているかという点と、古馬になり米国色がどれだけ強く出てきて阪神2200mが持つかの賭けだが、オッズもそう下がりきるようには見えないので相対的に見ると悪い判断には思わない

あとは面白そうなところでいうとスルーセブンシーズか

NureyevやSadler's Wellsはないが、父のドリームジャーニーは、全弟のオルフェーヴルが非常に高い欧州適正を見せて宝塚記念でも勝っており、ドリジャ自身も宝塚記念を制しているし、母父のクロフネもこのレースでは高い適性を見せている血(クロノジェネシスやレイパパレの母父で、フレンチデピュティ持ちになるとエイシンデピュティやショウナンパンドラなども好走)
母母・スルーオールの部分ではNasrullahとPrincequilloを強調していて、案外このレースで狙うのは正しく見える
スルーセブンシーズ自身のスケール度合いはやはりメンバー中で下から数えたほうが早いと思うが、穴を空けるだけの下地は十分あるはずで、万馬券を狙いに行くなら抑えてみて悪くないだろう

逆に人気に対して危険馬に思えるのはディープボンド

去年の宝塚記念は4着で掲示板に入ったものの、前有利なこの舞台でハイペースを3番手追走できるキズナ系の米国的突貫力が活きる展開で、終盤はNasrullahのスピード持続力を絞り出した完璧な立ち回りと、ディープボンドとしてあれ以上のレースは無かったように思える
それで勝ちきれなかったのだから更にペースが遅くなりそうな今年は自分で展開を作れない弱点がさらに重くのしかかりそう

また、阪神での開催が短かった昨年に比べて長期間の使用で馬場が荒れていそうな今年はNureyev≒Sadler's WellsやHis Majesty(Graustark)を持たない当馬にはおそらく不利に転ぶはず

「Lyphardクロスを作りながら米血とNasrullahで先行力と持続力を出したディープ系」とざっくり考えるならそこまで悪くないが、現在のオッズに対して見合うだけのスケールと中距離適正があるかは正直疑わしいし、キングヘイローを介したLyphardクロスを同様に持つイクイノックスはさらにRibotやNureyevも加えている形なのでどちらにせよ勝ち切るには厳しいだろう
2〜3着がないとは思わないが、単勝10倍台で買えるタイプではない

こうして総合的に見て来ても、やはりイクイノックスを真正面から倒せる馬は居ないように思える
内寄りの枠を引いたぶん包まれて動けなくなったり、この舞台をあまり得意としないルメールの騎乗が噛み合わないパターンをどこまで考慮するかだが、それを覆せるだけの条件が揃っている他馬もほとんど見つけられなかった
ただ2〜3番手の中で突出する馬もいないと思うので紐荒れの妙味は期待できそう


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