母仔猫エサ待つ縁側秋の朝
朝、私が散歩と朝食を終わって帰るころをいつの間にか覚えてしまったみたい。帰ってきて、マスクを洗い外に干そうと硝子戸を開けると、しっかりとお行儀よく座っている。
いえ、別に……ご飯が欲しいわけではないんです。ただごあいさつに、というふうな顔して。
母は子を子は母を慕い野良なれど
「もうちょっと待っていなさい。今、食事出るから」
「もう待てないよ~」
「あんまり物欲しげな顏しちゃだめ。お行儀よく、ね」
「うん、わかった」
食べてこそ今朝の命やいわし雲
「おいしいね、母ちゃん」
「黙って食べなさい」
「今日のご飯、違う味だ!」
「ちょっと高いの、買ってくれたんだね。いい人たちだ、この家の人」
朝冷ゆる秋薔薇咲きおり庭の隅
少し疲れた花びらで懸命に幹にしがみついている薔薇、やがて散ることも知らず。
ネコの母子、来年まで生きているかどうかも分からない。そんなことを知らないから、今日という日をひたすら生きてゆける。知らないという以上の幸せはないのではないか……。
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