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わたしの出会った判事たち -11-

ノーブルな男性(ひと)(1)

「今度赴任してきた判事さん、ハンサムだって」
「幾つぐらい?」
「まだ若そう。奥さん、いるんだって」
「がっかり」
「とにかくハンサムというかノーブルなんだって」

わたしたちの間ですぐに話題になったH判事。男性委員にもすこぶる評判がいい。

結局、どんな仕事もそうだろうが、仕事は人との交流と繋がりで成り立っている。
職場で好かれる人の条件は、オトコオンナを問わず同じじゃないかな。

性格に強い「癖」がないこと。仕事上のパートナーに対して「思いやり」があることだと、わたしは思う。
地位の上下、権力があるかないかはほとんど関係がないように感じる。

赴任したての「ノーブルでハンサムな若い」判事。
女性は幾つになってもこんな男性に胸ときめかせる。自分、あるいは相手が結婚しているか否かは関係ない。人間、枯れ木や石ころではない。

素敵な人に胸ときめくのは自然の摂理だもの、ね。

わたしも興味津々。だが、なかなか組み合わせてもらえない。二か月目ぐらい、やっと来た!H判事の事案が。
わけもなく心弾ませて調停室に入る。相調停委員も何やらソワソワ。

「H判事と組むのは初めてなんです。楽しみだなあ」
「わたしも」
「評判いいですねえ」
「アイドル並ですね」
九時五十五分。ドアが少し開く。緊張と期待の瞬間!
両調停委員、そろってドアに顔を向ける。

開けて入って来た男性(ひと)は……。
ほっそりした体型、優しげな顔立ち、シャイな笑顔。紺色のスーツに淡い水色のネクタイ。
全体に、これぞ「ノーブル」という雰囲気!

感じいい……。
こう感じたのは、『裁判所』でいっしょに働く男性委員たちがよほど感じ悪いから?

いえいえ、高齢者の集団だから若い人が美しく見えるだけ!

人間、すべての人が美男美女であるわけがない。ほとんどの人は欠点だらけの容姿。でも、「感じいい」というのは素晴らしい美点だ。
全体的な雰囲気が「いい」ということ。
服装、立ち居振る舞い、話し方。すべての好感度が高得点のひと。いわば「雰囲気美人」というか……。

会っただけで相手を味方につけてしまう世にも幸せなヒト。
人の好みはそれぞれだから、このタイプを『物差化』するのは難しいけど。

「おはようございます。よろしく~お願いします」
判事さんは最初にわたしを見て、次に男性調停委員を見てにっこり。

明るい朝の始まりだ。良い仕事できますように……。


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