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なんとなく
昔々、僕は生活に必要なものをバックパックに詰め込んで、四国を歩いて一周したことがあります。時々思い出すんですけど……「最近はリモートワークばかりで、めっきりと歩かなくなったなぁ」なんて日には、特に思い出します。
僕は20代の半ばでした。たしか仕事を辞めたばかりでした。その頃の僕は、今で言うシェアハウスで暮らしていました。シェアハウスといっても、独身寮をリフォームしたような大きなところでした。そこには半分の日本人と、もう半分の外国人が住んでいました。夕方になると仕事から帰宅する日本人と、観光から戻ってきた外国人が、共同のキッチンやダイニングに集います。
僕は当時、離婚したばかりの営業マンのおじさんに気に入られていました。料理をしてダイニングへ行くと、おじさんが隣に座り話しかけてきます。このおじさんと一緒にいると、良いことがあるんです。優秀な営業マンの大半がそうであるように(イメージです)、この人も近くの女性に話しかけることに迷いがありません。
その時も、近くに独りで座っている小柄な女性に「いつココに来たの?(住むようになったの?) あんまり見かけないようねぇ? あ、私はバツイチの〇〇。あなた、かわいいよねぇ……へぇ、もうそんな歳なの? 見えないなぁ。こっちの草野くんと同じくらいなんだね。よろしくね(笑」なんて感じで、気さくに話しかけるんですよ。羨ましい……。
それで食事をしながら、彼女が、ここに来るまでにどんなことをしていたのかが話題になりました。ここでは、いわゆる一般的なサラリーマンはいません。たいていは旅行好きだったり……もしくは企業勤めに馴染めなかったり……もしくは僕のように両方の人間が大半です。
彼女の過去の話から、つい数週間前の話にまで辿りつきました。最近、四国へ旅行へ行ったと言います。僕は四国へ行ったことがなかったので、興味津々で聞いていると……彼女が「四国のお遍路」という言葉が出てきました。
恥ずかしいことに、僕は「遍路」とか「八十八ヶ所」という言葉を聞いたことがありませんでした。彼女は、そのなかの一つの寺へも行ってきたという話でした。
食い入るように聞きました。当時の僕は、海外を旅したことはあったのですが「僕は日本のことを何も知らないなぁ」って思っていた時だったんです。
それで、そんな歴史的な……スタンプラリーのような巡礼の旅に、思いっきり そそられました。
彼女はすぐに四国のガイドブックを、部屋から持って来てくれて、それを見ながら遍路について説明してくれました。
それで、これは行かなきゃって思ったんです。
思い立ったが吉日です。住んでいた宿は基本1か月で更新しなきゃいけません。その更新の日が近づいていたんです。
次の日には、靴を買いに行きました。初めてのニューバランス。スポーツをしている人が履くシューズといった印象で、今ほど一般的なブランドではなかった気がします。ただ、えらく歩きやすいっていうのは知られていて、初めて買ってみたんです。
あとは四国までのフェリーの手配をし、荷造りして、1週間後くらいには部屋の荷物をおっさんに預けて旅立ちました。
早いでしょ(笑)?
な〜んにもすることがなかったし、したいこともなかったし……もともとバックパッカーで、毎週山に通うトレッカーでもあったから、靴以外の用意はいつでも出来ていたんです。
いちおう家族が心配するかもと思い、家族で唯一連絡を取り合っていた妹へ、電話で「1か月くらい出かけてくるから、電話が通じなくなっても心配しないで」と言い置いておきました。
そして出発……。
たしか夕方に出港して、昼前くらいに徳島へ着いた気がします。
そして僕は、四国でいくつかの運命的な出会いをすることになります(女性ではないです)。というのは、また気が向いたら書き進めようと思います。
※※
トップ画像にお借りした写真は、遍路中に撮り溜めた写真の一枚だそうです。情緒的できれいな写真ですね。
この頃の僕は、もうデジカメも持っていたしフィルムカメラも使っていたはずなのですが、写真が全く残っていないんですよね。デジカメは充電できそうもないし、フィルムカメラは重いしで、持って行かなかったのかな……。早くリタイアして、今度はカメラを持って四国を一周したいなぁ。
昼休みも終わりにして、仕事しなきゃだなぁ…。
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