公園の手品師/フランク永井
往年の大歌手フランク永井の歌に「公園の手品師」という歌がある。
フランク永井といえばなんといっても「有楽町で逢いましょう」「東京ナイトクラブ」なわけだが、当人は「公園の手品師」がいちばん好きだったそうだ。
一度シングルのB面でリリースしたものを、再吹き込みしてA面にして発売しなおしたらしい。
それだけ思い入れがあったしヒットを願ってもいたのだが、歌手の思いに反して、ちーとも売れなかったらしい。
そりゃそーだよ売れないよこんな曲。
ただ、歌手がなぜこの歌に思い入れていたのかは、なんとなくわかる気がする。
この曲、恋とか愛とかを歌った曲ではないのだ。
恋愛にはどうしてもシチュエーションが付随する。主人公のプロフィールも要求される。
舞台が夕暮れの教室であればどうしたって主人公は高校生とかだろう。テーマは必然的に青い恋になり、物苦しい性愛とか不倫とかには絶対にならない。AVじゃねえんだからよ。
こうした歌をフランク永井は歌えない。限定は歌ばかりでない、歌手にまで及ぶのだ。
だが、「公園の手品師」にはその限定がない。ある景色の不思議さ・おもしろさ・さみしさを淡々と描いた歌であり、年齢や性別に関わらず誰でも歌うことができる。
きっとその自由さが好きだったんだろう。
その自由さを広めたい、という気持ちも大きかったはずだ。
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