見出し画像

旅に病で夢は枯野をかけ廻る

旅に病で夢は枯野をかけ廻る

芭蕉最後の句である。

旅に出たいけど、出られなかったんだね、じいさん。

気持ちがわかるような気がした。


山が好きだった。

心が洗われる、というけれど、ほんとにそんな気がしていた。


山はナメたら死ぬ。

これは、登山する人ならみな感じていることだろう。

道具はちゃんとしたものをそろえなければならない。

リュックを買ったり、登山靴を買ったり、テントを買ったりした。

関東平野はたいへんに広いので、山に行くのもずいぶん時間がかかった。

すなわち、お金も時間もかかったのである。


でも、好きだった。

この石の次はあの石に足を置けばコケないだろう。

歩くことだけに知恵を使っている状態も、好きだった。


身体を悪くして、山道を歩けなくなった。

もう地球のどこへでも行けるとは言えない。

仕方ないことだけど、悲しかった。


だが、ああ、夢は枯野をかけ廻るのだ。

近い将来、出かけることだろう。

どうせ死ぬならベッドの上じゃ死にたくないなと思った。

この記事が気に入ったら、サポートをしてみませんか?
気軽にクリエイターの支援と、記事のオススメができます!
2
講談社ブルーバックス『メールはなぜ届くのか』『SNSって面白いの?』発売中! 2013年より脳病にて半年間入院、右半身不随、一本杖の男。

こちらでもピックアップされています

琴線に触れた
琴線に触れた
  • 66本
コメントを投稿するには、 ログイン または 会員登録 をする必要があります。