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サラダバス

シンデレラは窓辺で溜息をついていました。
「私もお城の舞踏会でフィーバーしたいなぁ」
突然、シンデレラの目の前に老婆が現れました。
「お困りのようだねお嬢さん」
「あなたは?」
「あたしは魔法使い。あんたの願いを叶えてあげるよ」
「お金!」
「目の色が変わったね。そうじゃなくて舞踏会に行きたいんじゃないのかい?」
「ああそっち。ええ、でも着ていく服がなくて」
「えいっ」
魔法使いが杖を振ると、シンデレラの服がきれいなドレスに変わりました。
「まあ素敵!」
「お次は乗り物だよ。それっ」
今度は、黒塗りのベンツが現れました。
「さあ、これに乗って舞踏会へお行き」
「あの、他のはない? これだと別の集会へ行くみたいだから。何より世界観が違うし」
「世界観?」
「もっとファンタジーっぽいやつ」
「ファンタジーねぇ。それなら、ていっ」
「グゴオォォォォォッ!」
「さあ、このドラゴンに乗ってお行き」
「怖っ! そっちのファンタジーいっちゃった!」
「このドラゴンはね、昔あたしが勇者と旅をしていたときの仲間なんだよ」
「そっち側の人だった! おばあさんの過去には興味あるけど、今はもっとこうロマンチックでファンシーな感じで。かぼちゃの馬車みたいな」
「ふーむ。それなら」
魔法使いは、たまたま持っていたサラダに魔法をかけました。すると、サラダはバスに変化しました。
「さあ、このサラダのバスに乗ってお行き」
「近づいたような遠ざかったような。まあいいわ。それじゃ、おばあさん行ってきます」
「12時までには帰るんだよ、ってどうしたんだい乗らないのかい」
「あの~、私サラダのレーズンが苦手で。他のにしてくれない?」
「好き嫌い言うんじゃないよ、まったく」
「リムジンとか」
「あんたさっき世界観とか言ってなかったかい」
「役に立たないなぁ。あ、ごめんなさい言いすぎました。ドラゴンのブレスはやめて。私フバーハとか持ってないから」
「じゃあ何がいいんだい」
「そうね、空から行ったら面白いかなぁ。あ、それよりおばあさんの昔話聞かせて。勇者と旅してたときの」
「やれやれ。そうだねぇ」
こうして二人は、朝まできゃっきゃとフィーバーしました。


※規定文字数をダイナミックにオーバーしてますが参加させていただきます。



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