草食系男子に教えられたこと

ここ、草食系男子養成所では、草食系指導教官のもと、明日の草食系男子を目指す数多くの若者が、日々厳しい訓練に励んでいた。毎年、この養成所からは超一流の草食系男子が輩出され、世界各地で活躍している。

そして今、新たな草食系男子が、ここから巣立とうとしていた。

「この養成所で学んだことを胸に、草食系男子としての誇りを持ってこれからの人生を歩んでほしい」
時に厳しく時に優しく、そして時に遠慮がちに指導してきた教官が、目の前に整列した生徒たちに言葉をかける。
その言葉に真剣に耳を傾けている生徒たちの目は、希望に満ち溢れきらきらと輝いていた。
「では最後に、草食系男子の教えを皆で斉唱し終わりにしたいと思う」
「はい！」
「斉唱！」

”押す前に引け”
”三尺下がって女性の影を踏まず”
”女性に話しかけるときは部屋を明るくして２ｍ以上離れて”
”女性の服についたガムは冷やすと取れやすくなる”
”ガムはチョコレートと一緒に食べると溶ける”
”ガムを噛みながら玉ねぎを切ると涙が出ない”
”ささくれは指でつまんで取ろうとすると大変なことになるからちゃんと爪切りで切った方がいい”
”犯人はヤス”
”毎週金曜日はポイント２倍”
”拳銃は最後の武器”

「よろしい！　君たちは立派な草食系男子だ！」
「はい！　ありがとうございました！」
生徒たちが一斉に礼をする。
教官の目に、涙が浮かんだ。