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手抜き介護 115 続・タクシードライバー

母は両膝に人工関節が入った身障者なので、年に1万円分くらいのタクシーチケットが市から配布される。昨年まではほとんど使う機会がなかったのだけど、車を手放した今年は病院通いに重宝している。

通院の朝、母が真新しいチケットの束を出してきた。200円券1枚1枚に名前を書かなければならないのだけど、前回かなり多めに書いてまだ残っていたはず。「前に書いたものがあると思うけど」と言ったら、「探してみるけど、今はそれしかない」との返事。そこで新しくまた20枚くらい名前を書いた。今思えば、ここで変だと気づくべきだった。

診察を終えて無事に帰ってきた2日後、たまたま私が買い物で留守のとき、タクシーの運転手さんが実家を訪ねてきた。一昨日使ったのは、何と去年のチケットだったという。母が慌てて今年のものと交換し、謝罪した。年度ごとにチケットの色が変わっているらしいのだけど、意識しないと気づかない。ああ。

帰りのドライバーさんは、まだ現れていない。領収書をもらっていないから、どこのタクシーかも分からない。調べてみたら、市内だけでも営業所は十数か所ある。ちょっと迷ったけど、片っ端から電話して問い合わせてみた。「ウチではない」「そんな話は上がってきていないので、よそだろう」「色が違うから、ウチのドライバーならすぐ気づく」と、該当者が見つからない。

個人タクシーだったかもしれない。チップと相殺しても、数百円の持ち出しになる。万事休す。家に着いたらすぐ車いすを下ろしてくれて、母が玄関に入るのを見届けてから発車するような温かい男性だった。運転手さん、ごめんなさい!

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