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札幌で家を売る⑫ 内見者は来るけれど

【4】みーくん、「気に入った」って言って

同じ日の夕方、幼児を抱っこした男性(③さん)が、奥さんと一緒に見に来ました。ハウスメーカーの技術職だそうで、「わが家を建てるなら自社を使わないわけにいかない。もちろんその質の高さには自信があるが、値段も高いので悩んでいる。社員割引きもないし、中古住宅なら、よそのメーカーでも角が立たないと思って見に来た」とのこと。

構造体の設計やデザインを担当している目からも見ても、良い造りだと言ってもらえました。予算を少しオーバーするが、これくらいの条件を揃えた物件はまたとない、と話しているのが聞こえます。が、奥さんとしては予算内に収めたい様子。どうせオーバーするなら、もっと狭くて良いから新築にしたいと、話がまとまりません。

「みーくんはどう、ここに住みたい? みーくんが良いんなら、ここに決めるよー」
「…?」
息子に助けを求めた③さんでしたが、結局保留ということになりました。

【5】二世帯同居を始めたばかりのお隣さんまで

4組目の見学は、お隣さんでした。もともと家族4人暮らしだったのが、つい1年前くらいにリフォームを済ませてご両親と同居を始めたのを知っていたので、不思議に思いながら迎えました。

見に来たのは親世帯の方で、「息子夫婦に強く勧められて同居を決めたが、家の使い勝手が悪く落ち着かない。お隣が売りに出ると知って、こちらに引っ越せないかと思った。高齢夫婦2人で住むには少し広いので、将来的には民泊を考えても良いかなと思う。ただ夫にはその気はなく、今も『見るだけでも』と誘ったが来なかった。息子夫婦に至っては、『そんなお金どこにあるの?』と取り合ってもくれない」とのこと。

「私も定年まで勤めていたから、お金はね、あるの」と声を潜めます。結局、もう少し家族で話し合ってみるということになりましたが、その後もしばらく、庭仕事をしながらのお隣の視線を感じました。

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