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de&iマガジン〜ダイバーシティ関連記事〜

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ダイバーシティ・コンテンツ・リサーチャー草冠結太のマガジンです。ダイバーシティ&インクルージョンを感じられるイベントやコンテンツに関する記事をまとめます。あとヒップホップも。
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#セクシャルマイノリティ

手記の朗読と歌で、HIVの今を知る。「Living Togetherのど自慢」に行った

(本稿はプライバシーに配慮し、会場の様子は撮影せず、個人に関する記載は公式サイトの情報に留めています) 入口のドアを開けるなり、私は左手をポケットに隠すのをやめた。 そこが安心していられる空間だと、すぐにわかったからだった。 薬指に指輪をはめた自分は、その場にふさわしくないのでは。そう怯えていたのだが、ホッとした。 私が訪れていたのは東京・新宿2丁目のスナック九州男。新宿に長く通っていれば、一度は耳にする老舗だ。 そこで「Living Togetherのど自慢」というイベ

15分後の幸せが約束されている短編映画「ストレンジ」

たった15分で、人はこんなに幸せになれる。 「ストレンジ」は、そんなショートフィルムだ。 好きなことが見つからず、部活を選ばず塾に通うオデコちゃん。高校生。 好きなことに食欲旺盛で、夢まであるドラァグクイーンのクマさん。 二人が出会って、友だちになって、お出かけする。そんなひと冬のお話。 映画は二人の会話で展開していき、機微の移ろいを丁寧に描いていく。 だから大きな転換があるわけではない。そして、そこがいい。 恋ではない。憧れでもない。友情と呼ぶには淡く、でも運命的なほど

十家族十色でいい〜ドキュメンタリー映画「二十歳の息子」感想記〜

ドキュメンタリー映画は小説よりも奇なり 映画「二十歳の息子」。 はじめて知ったのは、東京にあるポレポレ東中野という映画館のサイトでした。 映画の惹句は 私の第一印象は「はいはい」。 SOGIEを安易に設定に使う物語が好きになれません。 しかし。この映画は違いました。続くリード文は、こう。 え?え?ドキュメンタリーなの? 驚きました。そして、こちらがストーリー紹介。 待て待て待て待て。これは絶対に観たい。やばい。あと1週間で東京での上映が終わってしまう。 ということで

映画「エゴイスト」を観て、かつての家族を思い出した

ある日、私の母親がボーイフレンドを連れて帰ってきました。 そのボーイフレンドは、トランスジェンダー男性でした。R君と言いました。 その日から、私たちは家族になりした。 彼とは、私が大学生になってから就職して、一人暮らしをするまで、一つ屋根の下で暮らしました。草冠家の祖父母ともども。 私、弟、母親、FtMのR君、じいさん、ばあさん。 多様性とやらに屋根をのせたような家。 ま、うまくいかないですわな。 なので、映画「エゴイスト」の終盤は、観ていて気が気じゃなかった。 「浩輔

LGBTQセンター「プライドハウス東京レガシー」探訪記〜情報の量と質、ホスピタリティがスゴかった!〜

「見つけた!」 とある施設のSNSを見た瞬間、思わず声をあげました。ウォーリーを探せたテンション。 その施設とは『プライドハウス東京レガシー』。LGBTQ+にまつわる情報発信をはじめ、多岐にわたる活動を展開しているところです。 LGBTQ+について、ちゃんとしたことを知りたい時。理解を深めたい時。ネットや書籍ではなく、誰かに質問したくなることがあります。 そんな私にとって(会社の人事部とかにもそういう方いるかも)、プライドハウス東京レガシーはまさに虹色に輝いて見えました。

90歳の館長と9人のドラァグクイーンのドキュメント映画「十人十色の物語」が、寝不足してでも観る価値ある名作だった。

駅前の女子高生たちが、バッと一斉に私を見ました。 さながら、チーターを察知したガゼルの群れ。 「キャー!ミミズク、めちゃかわー!」 と、私が叫んでしまったから。 そりゃ見ますよね。 だって、ヒゲのオッサンが野太い声を、甲高く響かせてるんですから。 「きゃーみみずくめちゃかわー。だって」 「キャハハハハッ!」 誰かがマネをして、ドッと笑いが起きていました。 たまたま、ペット用の小さなフクロウを肩にのせて散歩してる人がいて。 私が思わずハシャいでしまったのがいけなかった。

約1,000人の大行進!東京トランスマーチ2022が「想像以上」の連続だった

2022年11月12日(土)。東京都新宿区で「東京トランスマーチ2022」が開催されました。 11月20日の「トランスジェンダー追悼の日」に先駆け、トランスジェンダー認知週間に開催されたこのイベント。 一部報道によれば、当事者を含めた約1,000人がマーチに参加したとのこと。 会場に、路上に、まさに多様な人々が大集合して、メッセージを発信しました。その様子をレポートします。 賑わうブース、熱いスピーチ。多様性を体現した会場はグッドバイブス会場となったのは、東京都新宿区の新宿

家族にトランス当事者がいた私が悶絶した映画「片袖の魚」〜マイクロアグレッションは本当に”マイクロ”か問題〜【ネタバレ注意】

『居心地が悪くなる映画』というものがあります。 もちろん、いい意味で。 自分が今いる場所を疑うきっかけになってくれる。そんな映画。 シアターフォーオールで配信されている「片袖の魚」という映画が、まさにそれでした。 悪意なき人々が意図せずに、だからこそ日常的にとってしまう差別的言動。 そんな、"マイノリティへの小さな攻撃”がテーマの一つです。 監督いわく 「日本で初めて、トランスジェンダー当事者を一般公募でオーディションして作られた映画」。 とのこと。 読後感は、ソワソワ

レインボープライドに行って、肩車できるうちはしたほうがいいって思った話。

「やっぱりレインボーパレードっつーくらいだから、雨はつきものなんじゃないの?」 「あんな。雨のあとに晴れんと出ないんで、レインボーはよ。それと、パレードやなくて、レインボー”プライド”やで」 「ほんとに俺が楽しみにしてると、確実に雨が降るよね」 「あんたの雨男っぷりは、ほんと迷惑やで。パレードの人ら風邪ひいたらアンタのせいやで」 2022年4月24日。東京・渋谷?代々木?で行われた東京レインボープライドに行ってみたんです。家族で。娘と、出不精の妻も珍しく一緒に。 日曜日に。雨

元・結婚情報誌編集者も思わず泣いた。二人の新郎を寿ぐ披露宴ムービー〜たった5分で多幸感100%の物語〜

映画祭で、披露宴ムービーを、流すの? 何かの間違いだと思いました。もし本当だったら世も末だと。 しかし、映画祭のフライヤーには、確かに書いてありました。 「結婚式披露宴ムービー(5分)」と。 その映画祭とは、札幌LGBTQ映画祭2022。2022年9月に開催していました。 私はかつて結婚情報誌の編集者兼ライターをやっていました。 なのでこのテの結婚式やら披露宴やらの動画は、ひと様よりいくぶん多く観ている自負があります。 ちょっとやそっとじゃ、心が動くこともありません。 寂