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de&iマガジン〜ダイバーシティ関連記事〜

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ダイバーシティ・コンテンツ・リサーチャー草冠結太のマガジンです。ダイバーシティ&インクルージョンを感じられるイベントやコンテンツに関する記事をまとめます。あとヒップホップも。
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#創作大賞2023

43歳、初めてハイヒールを履いて知ったこと。その半年後。

聴くと心がもう一度、ファイティングポーズをとれる。 きっと誰にも、そんな歌がある。 私にとって、RHYMESTERというラップグループのMy Runway feat. Reiはその一つだ。 この曲を聴いて思い出すのは、今年1月のこと。その日、私は生まれて初めてハイヒールを履いた。 きっかけは「DRAG QUEEN x パフォーマンス朗毒劇 QUEEN's HOUSE」という、ドラァグクイーンの舞台。”毒”は誤字ではない。 その劇場で「wiDth last」というシューズブ

15分後の幸せが約束されている短編映画「ストレンジ」

たった15分で、人はこんなに幸せになれる。 「ストレンジ」は、そんなショートフィルムだ。 好きなことが見つからず、部活を選ばず塾に通うオデコちゃん。高校生。 好きなことに食欲旺盛で、夢まであるドラァグクイーンのクマさん。 二人が出会って、友だちになって、お出かけする。そんなひと冬のお話。 映画は二人の会話で展開していき、機微の移ろいを丁寧に描いていく。 だから大きな転換があるわけではない。そして、そこがいい。 恋ではない。憧れでもない。友情と呼ぶには淡く、でも運命的なほど

紙ヒコーキおじさんのいる公園に

朝っぱらから、妻が暗い映画を観ていた。 子どもと夫をともに失った女。女の生活を支える、秘密を抱えた男。 テレビ画面が、二人の幸せな日常を静謐に、そして儚く映していた。 「こんだけ男前やと、軽トラ乗っても男前やな」 妻が暴言で俳優を褒める。車種と運転手の顔だちに関係を見出す人に、初めて出会った。彼女との鑑賞はいつも新鮮だ。 そうは言ってもこの映画は、起きぬけには重すぎる。 私は迫真の演技にいたたまれなくなり、近所の公園へ散歩にでかけることにした。 春には桜の名所として賑わう公

ホットでスイート、そしてビター。難民・移民フェスに家族で行ってきた

※本稿の写真はすべて、さまざまな環境・状況下にいる方に配慮しています。出店者の顔は撮影せず、国名などについても言及していません。一般来場者や出演者についても撮影許可のないものは画像加工しています。あらかじめご了承ください。 会場は気圧されるほどの熱気。ランチは辛くて、うまいうまい。 公園に着くなり 「このうた、しってる!」 娘が私の肩車の上で、手拍子をとった。 「Oh Happy Day, Oh Happy Day!」 ゴスペルシンガーのソウルフルな歌声が、会場に響き渡っ

娘とアール・ブリュットをみに。

ポケモンからアール・ブリュット展 いかん。 このままではゴールデン・ウィークが、 バイオレット・ウィークになってしまう。 正確には、ポケットモンスター・バイオレット・ウィークに。 なんならすでに半分なっちゃってる。 娘は憑かれたように画面を見つめ、ボタン一つでピカチュウを戦闘に送り込む。何度も何度も。 待て。生物多様性をキミの代理戦争に利用するな。乱獲はやめろ。それは無用の殺生というものだ。 かくして私は娘をお出かけに誘ってみた。 「お父さん、行きたいトコあんだけど、付

ホラー映画として楽しむ「東京2020オリンピック SIDE:A/SIDE:B」

魔物ですね、サブスクのレコメンド機能は。 「あ。配信はじまったんだ」 と、うっかりクリックしたら最後、そのままズブズブと。 「東京2020オリンピック SIDE:A」もそんな映画でした。ズブズブついでに「SIDE:B」まで一気見。時間が溶ける溶ける。 オリンピック反対。パラリンピック賛成。そんな私にとって、オリンピックは複雑な気持ちにさせられる催しです。 オリンピックとパラリンピックはセット開催と決められてしまっている。パラリンピックを開催するには、オリンピックがついてまわ

父娘でパレードに手を振った日〜東京レインボープライド2023探訪記〜

今年のレインボープライドは、想像を絶していました。 2023年4月23日(日)、渋谷・代々木で開催されたレインボープライド2023に、家族で行ってきたのですが。 コロナ禍明けということもあり、去年とは段違いの盛り上がり。 人も情報量も多すぎ。親子でよいお出かけになりました。 街全体がレインボー一色、いや七色。 渋谷駅を降り立つと、もうレインボープライドに参加するであろう人たちがたくさんいました。 この時点で祭り感といいますか、フェス感といいますか。盛り上がるわけです。たぎ

恋愛という鍵でしか、幸せの扉は開かない。わけがない。〜映画「そばかす」感想記〜

初夢は見ましたか? 私は「恋の夢」でした。しかも一晩で豪華二本立て。 学生時代にフラれた人への恋。 そして、社会人になってから浮気された人との恋。 どちらも、明けましてフラれました。 悪夢のような出来事を、わざわざ悪夢で再現するという、笑ってないと泣けてくる型の初笑いで目覚めたのですが。 これほどまでに恋愛を意識した(というかウナされた)夢を観てしまったのは、年末に観たとある作品がとんでもなく面白かった影響です。間違いない。 そのとんでもなく面白かった作品とは 「そばか

ヒップホップ好きが考えた「差別・ヘイトにどう向き合うか?」〜大学講座とライブ、2つの視点から〜

あやうく「ツイートする」ボタンを押してしまうところでした。 とんだヘイト投稿を。あっぶねー。 私はダイバーシティに関係したイベントやらコンテンツやらを、リサーチしたり、観たり、行ったりするのが趣味でして(ヘンな趣味)。 ちょいちょい見たり聞いたりするんですよね、マイノリティへの差別発言やヘイトを。 その晩も、目に余る悪意ツイートに出くわしまして。 ヘイトにヘイトをぶつけるという、放屁合戦みたいなことを仕掛けそうになりました。 すんでのところで正気にかえりましたが、ヤバかっ

明るく、楽しく、しぶとく!映画「こころの通訳者たち」に響く対話のクリエイティビティ〜ラップ最高!パンフに”たたり”!〜

諦めない。それだけで、こんなに痛快だなんて。 すべての仕事がこの映画のようでありたい、と感じた映画でした。 いわゆる”お仕事もの”ではないに。 その映画とは「こころの通訳者たち」。 素晴らしい映画だったので、その感想をここに書き留めておこうと思います。 手話に音声ガイドを?「こころの通訳者たち」のあらすじ。 この映画、ドキュメンタリーなのですが。 事実は小説よりも奇なり、を地でいってまして。 話が少し混み入ってます。なので、ザックリとあらすじを。 かつて「ようこそ

元・宗教3世が観た、映画「寛解の連続」【ネタバレ注意】

久々です。思わず天井を仰いでしまった映画は。 「わー」とも「あー」ともつかない唸り声を上げながら。 しかも開始早々10分そこそこで。 そこから100分間、ズブズブどっぷりです。 映画のタイトルは「寛解の連続」といいます。 あまりに面白かったのは、自分と共通点がありすぎたから。 その感想を ・ヒップホップ映画としての魅力 ・元・宗教3世から観た、ラッパー小林勝行 という観点で述べてみたいと思います。 なので、以下ネタバレを含みます。未見の方はご注意ください。 でも、本当に