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de&iマガジン〜ダイバーシティ関連記事〜

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ダイバーシティ・コンテンツ・リサーチャー草冠結太のマガジンです。ダイバーシティ&インクルージョンを感じられるイベントやコンテンツに関する記事をまとめます。あとヒップホップも。
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#エッセイ部門

43歳、初めてハイヒールを履いて知ったこと。その半年後。

聴くと心がもう一度、ファイティングポーズをとれる。 きっと誰にも、そんな歌がある。 私にとって、RHYMESTERというラップグループのMy Runway feat. Reiはその一つだ。 この曲を聴いて思い出すのは、今年1月のこと。その日、私は生まれて初めてハイヒールを履いた。 きっかけは「DRAG QUEEN x パフォーマンス朗毒劇 QUEEN's HOUSE」という、ドラァグクイーンの舞台。”毒”は誤字ではない。 その劇場で「wiDth last」というシューズブ

15分後の幸せが約束されている短編映画「ストレンジ」

たった15分で、人はこんなに幸せになれる。 「ストレンジ」は、そんなショートフィルムだ。 好きなことが見つからず、部活を選ばず塾に通うオデコちゃん。高校生。 好きなことに食欲旺盛で、夢まであるドラァグクイーンのクマさん。 二人が出会って、友だちになって、お出かけする。そんなひと冬のお話。 映画は二人の会話で展開していき、機微の移ろいを丁寧に描いていく。 だから大きな転換があるわけではない。そして、そこがいい。 恋ではない。憧れでもない。友情と呼ぶには淡く、でも運命的なほど

紙ヒコーキおじさんのいる公園に

朝っぱらから、妻が暗い映画を観ていた。 子どもと夫をともに失った女。女の生活を支える、秘密を抱えた男。 テレビ画面が、二人の幸せな日常を静謐に、そして儚く映していた。 「こんだけ男前やと、軽トラ乗っても男前やな」 妻が暴言で俳優を褒める。車種と運転手の顔だちに関係を見出す人に、初めて出会った。彼女との鑑賞はいつも新鮮だ。 そうは言ってもこの映画は、起きぬけには重すぎる。 私は迫真の演技にいたたまれなくなり、近所の公園へ散歩にでかけることにした。 春には桜の名所として賑わう公

ホットでスイート、そしてビター。難民・移民フェスに家族で行ってきた

※本稿の写真はすべて、さまざまな環境・状況下にいる方に配慮しています。出店者の顔は撮影せず、国名などについても言及していません。一般来場者や出演者についても撮影許可のないものは画像加工しています。あらかじめご了承ください。 会場は気圧されるほどの熱気。ランチは辛くて、うまいうまい。 公園に着くなり 「このうた、しってる!」 娘が私の肩車の上で、手拍子をとった。 「Oh Happy Day, Oh Happy Day!」 ゴスペルシンガーのソウルフルな歌声が、会場に響き渡っ

娘とアール・ブリュットをみに。

ポケモンからアール・ブリュット展 いかん。 このままではゴールデン・ウィークが、 バイオレット・ウィークになってしまう。 正確には、ポケットモンスター・バイオレット・ウィークに。 なんならすでに半分なっちゃってる。 娘は憑かれたように画面を見つめ、ボタン一つでピカチュウを戦闘に送り込む。何度も何度も。 待て。生物多様性をキミの代理戦争に利用するな。乱獲はやめろ。それは無用の殺生というものだ。 かくして私は娘をお出かけに誘ってみた。 「お父さん、行きたいトコあんだけど、付

ホラー映画として楽しむ「東京2020オリンピック SIDE:A/SIDE:B」

魔物ですね、サブスクのレコメンド機能は。 「あ。配信はじまったんだ」 と、うっかりクリックしたら最後、そのままズブズブと。 「東京2020オリンピック SIDE:A」もそんな映画でした。ズブズブついでに「SIDE:B」まで一気見。時間が溶ける溶ける。 オリンピック反対。パラリンピック賛成。そんな私にとって、オリンピックは複雑な気持ちにさせられる催しです。 オリンピックとパラリンピックはセット開催と決められてしまっている。パラリンピックを開催するには、オリンピックがついてまわ