戒名

仏式の葬式に戒名はつきものですが、いったい何なのでしょうか?必要条件ではないはずです。十分条件なはずです。この捻れは誤解を生んでいるのではないでしょうか?
東京のお寺で仕事していたときに、東京ガスの偉い方がお亡くなり、遺族の方が葬儀の打ち合わせにお越しになりました。葬儀日程の打ち合わせをして、いよいよ戒名の話になりると、息子さんがこの戒名でお願いしますと紙を見せるのです。その紙には、○○院殿○○□□大居士と書いてあり、これでお願いしいますというのです。此方としては、誰に授与されたモノであるのかをお伺いしましたこところ、遺族がお付けになったというのです。「父は偉大な人だった」という遺族の思いでよさそうな漢字を並べ立てて、院殿・大居士をつけた様なのです。その旨を住職に伝えますと、「遺族がいいというのならいいんじゃない。」と云うことになり、一文字につき四~五十万の戒名料と云うことでおりあいがついたのです。自分たちの思いが通じたと云うことで御礼として遺族からお布施の上乗せがあり、実際のお布施はかなりの高額になり、お布施が立った記憶があります。何だったんだろう?家族は、いい戒名と云うことで満足したのでしょうが、そこはかのない違和感がありました。ちなみに、そのお寺は、当時は庵というべきとても手狭だったのですが、現在は四階建ての大きなビルになっています。

また、地方の大寺で仕事をしていたときに戒名の改名を希望する遺族の方の相談にのったこともあります。その家族は、その地域で大きな商売をしておられたのですが、当主がお亡くなりなった後にその商売がだめになったのだそうです。その原因が、その当主の戒名に「山」の一時が入っているからと云うことで何とか改名してほしいということだったのです。山は、上から下へ流れる字なので家運が下がったという理由だったのです。一応、住職へお伝えし対処をお願いしたのですが、ほっとけと云うことで、私は話を聞くだけに終始せざるを得ませんでした。結果として、その家族はしびれを切らし、遂に離壇して他のお寺へ墓を移すということになったのです。その後、私はそのお寺を離れましたので、実際のことは知りませんが、その家族が商売を盛り返したという話は未だに聞いていません。

戒名は、宗派でそれぞれ意味合いが違ってきますが、共通しているのはその教えへの帰依と云うことが基本ということではないかと思います。本人に帰依の意思確認が出来ない上での受戒は全く意味をなさないのではないでしょうか?つまり、遺言でもない限り死後受戒は無意味ということになるのではないでしょう。


立川談志の『立川雲黒斎家元勝手居士』 はそういった意味でも興味深い戒名です。

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