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「発見!身のまわりのアノニマスデザイン展」ごあいさつ

ごあいさつ

 学芸員養成課程の授業「博物館実習I」は、実際の博物館や美術館等で行われる学外実習の前に、基本的な知識や技能を身につけることを目的とした学内実習です。さまざまな専門分野の学生が、博物館学を基盤としながら人文科学・自然科学・芸術学などについて幅広い見識を深めたり、すべての分野の資料の取り扱いを体験したりするなど、領域横断的かつアクティブラーニング(体験学習)型の授業を行っています。

 一年を通じて行われるこの授業のまとめとして毎年行われる「展示制作実習」では、テーマごとにグループとなって調査・解説執筆・発表をしてもらうのですが、今年度はアート&デザイン系のテーマとして「アノニマス・デザイン」を選びました。

 参加メンバーの多くは芸術学やデザインを専門としている学生ではありませんが、日頃なにげなく使っている身近な生活用品を「作者不詳のデザイン」として発見するゲームを大いに楽しんでくれました。その上で、誰がデザインしたかわからない道具がそれぞれの歴史や文化を背景に改良やリデザインを繰り返してきたことを共通理解としました。展覧会の名称やキャッチコピーは全員による企画とディスカッションで導き出されたものです。

 授業の最終講評会では、18名の学生たちは二人組で一枚ずつ作成した解説パネルの前に実際に持ち寄った物品を並べ、その場でスピーチによる発表をしてもらいました。美術館の学芸員が展示室で作品の解説をするギャラリー・ツアーと同様のことを、実際に演じてみることで体験的に学習してもらったのです。

 本展はそういった授業を通じて得られた実習成果の展示です。ありふれた日用品も展示台に並べられるとまるでデュシャンのレディメイド(既製品)のように立派に映ります。解説パネルはとくに形式的なきまりを設けず、それぞれの創意工夫で制作したので統一感に欠ける印象があるでしょう。しかし、本展において見るべきものは展示台の物品より、むしろ一見ばらばらに見える展示パネルであり、そこにこそ学生の個性や表現が表れているのです。そのことをご理解いただいた上で、壁に掛けられた「作品」を一点一点ご鑑賞ください。

 本展が学生たちの日頃の学習活動の成果を示すと同時に、首都大学東京における学芸員養成課程の教育活動の一端を知っていただく助けとなれば幸いです。授業実施と展覧会開催にあたっては大学教育センター学芸員養成課程の村田昌利助教、土屋健俊特任助教に格別のお力添えをいただきました。また、システムデザイン学部インダストリアルアートコースの日高良祐助教には明晰な助言で学生たちの制作を支えてもらいました。記して感謝します。

首都大学東京 システムデザイン学部 インダストリアルアートコース准教授 楠見清


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