ジャケ表

「汐」オーケストラ編曲 打ち込み前編

前回まででテンプレートができ、あとは音を作っていくだけになりました。ここで完成版を張り付けておきますので、前回の説明と比べてみてください。

説明にない音は、あとから追加したものです。ここからは、その手順を説明します。

Aパート

DAWなのでどこから作り始めても良いのですが、今回は構成を変える気はないので素直にAパートから作り始めます。

ここはコードもメロディも弦なので、Loegriaを立ち上げたトラックに全部作っていくだけです。本来はVn1,Vn2…と分けて作るべきなのかもしれませんが、和声を考える段階では編集が面倒になりますので、この手の総合音源を使うことが多いです。今回はLoegriaの音をそのまま生かすので、最後までこのままとなります。ですので、この段階でエクスプレッションを書いていってもOKです。

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メロディとコードを打ち込むとこのようになります。ここで考えなくてはならないのはバスをどう動かすかです。原曲はF#から動いておらず、3小節目のIVも最低音はF#のままです。こういうのはKey曲というかまごめ曲には非常に多いですが、アレンジによっては変えた方がいい場合があります。ロマン派風のはっきりした響きが欲しければここはBにするべきでしょう。今回はもやもやした響きのままで良いのでこのままです。

余談だけどKey風にアレンジしたければピアノでIV/Iとadd9がポイントだよ…

また、5小節目4拍目は原曲に無いVの響きを入れてあります。なんかちょっと動かさないと寂しいからというのが理由ですが、印象派風なら不要だったかなとも思います。

ここまで原調で打ち込んできましたが、調をどうするかはこの辺で決めたいです。結局ここまで書いた内容で分かる通り、印象派風という程ではないけれどもやもやした響きを生かす方向性なので、このまま原調で作ります。

で、ここまで作ってやはりリズムが寂しいことに気付きました。ポピュラー音楽から入った人は、打楽器がリズム担当と考えると思いますが、このようなオーケストラでは打楽器はリズムを担当しません。ここ重要なので覚えておいてください。印象派くらいまでの打楽器は、行進曲のスネアドラムを除けば低音・高音増強装置です。シンセのサブオシレータやキラキラ系と同じ扱いで、決して曲の骨格を担うものではありません。

ですので、太鼓系などの打楽器を足すのはアウトです。ここでやれることは、細かく動く木管を足すとか、弦を動かすとかですが、もやもやした響きはそのままにしたいので、安直にハープで原曲と似たアルペジオを足すだけにしました。安直さを出したくなければ、各自工夫しましょう。

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ここまでできたらBに進みます。

Bパート

Bパートの骨格は金管ですので、チューバとサックバットのパートでコードを入れます。この段階ではメロはまだ決まっていないのですが、弦が空いているのでとりあえず弦で入れます。金管と張り合うにはオクターブにするのが良いでしょう。また、バスは引き続き弦もユニゾンで担当します。オーケストラでは低音が不足しがちなので、他の楽器が骨格になる場合でも、場合によってはチェロやコントラバスを残します。

ちなみに、チェロとコントラバスはオクターブで使うのが基本です。名前からしてバスを担当するのはコントラバスと思われがちですが、バスを担当するのはチェロで、コントラバスはそのオクターブ下を補強します。もちろん慣れてくれば色々な可能性がありますが、よくわからないうちはチェロのみ、盛り上がるところではチェロとコントラバスとのオクターブユニゾンでバスを作ってください。

このパートは古風な五度進行が続くので、和声法の知識がある方は総動員していただいても良いですが、印象派風の響きを狙っているのであれば、あまりがちがちに禁則を守っても原曲から離れていくばかりで良いことはありません。何事もほどほどにしましょう。

盛り上がっていくにしたがって木管でカウンターメロディーを入れていきます。ここで活躍するのは対位法の知識ですが、まあポップスのつもりで適当に入れていっても良いでしょう。ポイントは、リズムか音か音の動きか、どれかまたは複数がメロディと違う事をするということです。印象派風であれば平行5度が生じた隙間やmaj7th,9thに音を置いても違和感がありませんので、そういう所を狙ってフレーズを作ってみてください。

Bパートの終わりは14小節目ですが、ここと最後だけrit.になっているということはここが盛り上がりどころということです。ここで楽器が勢ぞろいするように楽器を増やしていくと良いです。また、減衰音のピアノと違ってオーケストラは持続音をどんどん盛り上げるということができますので、1小節伸ばしてsus4の響きを入れてみました。楽器を重ねると低音不足になることは前述したとおりですので、ティンパニに登場願って低音を補強します。ティンパニは前述のとおり低音補強装置ですので、コードのルートを鳴らします。

Bパートはここまで。次はCパートに入ります。

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