ジャケ表

「汐」オーケストラ編曲 分析と方向性決め

タイトル絵はKeyPoints13で出したCDです。AIRの曲が中心だったのでジャケは観鈴ちんですが、ジャンルはKeyよろずとなっていて、Clannadから「汐」も収録してます。ちなみに戸越まごめ氏には無茶を言って一曲アレンジを頂きました。その効果か、スタンダードな選曲のためか、今でもうちのサークルでは一番売れます。悲しい…

曲について

世の中には思いつく通りに音を置いていけば曲が出来るんだ!という方もいますが、私のような凡人はちゃんとプランを立てて設計をしないと曲を組み立てることができません。なので曲の分析とコンセプト設計から入ることになります。

まずこの曲がどのシーンの曲かというと、Clannadのタイトル画面の曲ですね。この頃のKeyの作品は、最初にどんな音を聞かせるのかという設計が一作ごとになされていて、例えばAIRはゲームを開始して「回想録」が流れるまで何の音も出ないようになっています。シリアス作品でも能天気なサウンドロゴを出したりタイトルコールをする大部分のエロゲーメーカは1/100でもいいから見習ってほしいところ。

で、「汐」というタイトルは当然Afterで出てくる汐のことのはずです。こういうタイトルを付けるセンスも凄いですね。そうすると、イメージする方向性は2つあって、Clannadという作品の序曲と位置付けるか、汐というキャラクターのイメージと捉えるかになります。前者ならある程度音楽的に盛り上げたいし、後者なら儚さとか重い運命とかを感じさせるアレンジになると思います。後者ならピアノソロにかなうわけないので、ここでは前者にしました。…これは正解だったと後日公式オケアレンジを聴いて思ったのは秘密。

調性について

さて、オーケストラにアレンジする上で考えないといけないことに調性があります。絶対音感が無ければあまり関係なくない?と思うかもしれませんが、オーケストラの楽器、特に木管楽器はわずかな音域の違いで大幅に響きが変わったり、あるいは弦楽器は開放弦の音を含む調の方が朗々と響くとか言った要素があり、最近の音源は恐ろしいことにそんなところまで再現できたりします。ですので、あとから適当にトランスポーズすればいいんじゃね?とか言わずに最初に考えておくべきです。

この曲の調は嬰ヘ長調または変ト長調です。こういうシャープやフラットがメガ盛りの調は、オーケストラでは演奏しにくく響きも良くなく、ロマン派までの時代では一般的ではありません。一方ピアノ曲では超高速フレーズは黒鍵が混ざった方が弾きやすかったりするので、その時代でも一般的です。

前述の公式コンサートでピアノを弾いた梶田法子さんによると、この曲は変ト長調だそうです。

余談ですがプロの演奏者がこういう方向性を見出して表現すると、当然前述の「儚さとか重い運命とかを感じさせる…」方向性では打ち込みのオーケストラで太刀打ちできるわけがないので、またまた安心した次第。

で、この調をオーケストラで鳴らすもやもやした印象派風の響きになりますので、朗々とした響きが欲しければ移調すべきです。これは曲を分析しながら決めていきます。

ということで、長くなったので次へ続く…

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