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エイチ・ツー・オーに捧ぐ詩【詩集】

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#記憶

残り香

初夏の陽気に汗ばむ額 緑の合間に降る日差し 流れる水のささやきを 聞かずにぼくは歩いてく きらきら呑気に揺らめく水面 甘い匂いのあめんぼう 今日の小川は穏やかで 水位もあまり高くない 纏わりつく蚊と腫れた指 むず痒くなるあの眼差し 流れる水のささやきを 聞かずにぼくは歩いてく ちらちら脳裏に揺らめく皆も 青い匂いの甘えんぼう 明日の小川も穏やかで 変わらず流れていくのだろう 今も聞こえるきみの声 初めて交わした挨拶は―― 白いレースのカーテンが 微かに湿った風に舞う

三角フラスコ

何てことないエルレンマイヤー 透明なままゆらゆら揺れて 小さな泡と大きな泡と ぽこぽこ無邪気な音が鳴る “大切なものをひとつだけ” いったい何を閉じ込める? 例えばそれは思い出で 届かないから見つめてる 一瞬、僕に見えたのは 遠くに紅く燃える空 例えばそれは願望で 絶え間なく照らす隙間から 一際、僕を責めるのは 紫紺に溶けた朧月 誰かの為のエルレンマイヤー 澄んだ液体を抱き締めて 大きな粒と小さな粒と さりさり綺麗な音がする “要らないものをひとつだけ” いったい何