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エイチ・ツー・オーに捧ぐ詩【詩集】

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2019年6月の記事一覧

ゼロ

私の部屋には海がある 誰も知らない海がある 布団を捲り手繰り寄せ 波打ち際へと辿り着く 土踏まずから少しずつ 徐々に体を馴染ませて 大きくひとつ深呼吸 両目を瞑り覚悟して 一気に頭を沈ませる くるりと体が回ったら そこは私の海の中 私の海には夢がある 貴方の知らない夢がある 目眩が止むのを待ってから 両の瞼をこじ開ける どちらが上でどちらが下か 光が射すのと逆側へ 勝手に沈み始める体 深く潜れば潜るほど 海底の闇は濃く疼く どくりと熱が生まれたら そこは貴方の夢の中

あまやどり

ふたりぼっちの散歩道 静かに重なる足音は 同じテンポからずれていく 僕はひとり上の空 遠くの電線を見つめている 突然変異の黒い雲 あなたはひたりと足を止め 手のひらを上にかざし見る ふたりで駆け込む東屋を 予報にもない夕立ちが襲う 無限に連なる絹の糸 密やかに吸い込まれては 町並みを映す鏡面を穿つ 会話はいらないと拒むように あなたは目線を合わせない 雨露の如く募る願い 言葉に変えてプレゼントしたら あなたの瞳は戻るだろうか 二度と帰れない日々さえも 甘く照らし出す罪が