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追憶のポエミー【詩集】

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2019年3月の記事一覧

僕らはどこへ向かってる? 僕らはどこから逃げている? さあみなさん 駅に向かいましょう 優しく微笑む先生が 目印の旗を高く振る おさない かけない しゃべらない 決められた道を言われたままに みんな同じく避難しないと このままで居たら だめですよ キラキラ輝く駅を目指して 後ろから急かされるまま 周りの人に流されるまま 黒々とした行列が 生き物のように蠢いた 息も出来ない人ごみの中で 透き通ったふたつの翼が 音を立てながら軋んでる 真紅の滴が一粒 疲れた背中に流れ落

花束

薄墨に淀むぬるい部屋 苛烈な紅が宙を裂き 夕暮れ時を告げる音 絡みつく湿度 不安な視界 例えば君がここに居て 僕を見ていてくれるなら…… 微笑みかける君の顔 あの頃のまま 今も きっと 絶望色した花束抱いて かすれた時間を積み上げて 重さをなくした花びらが はらはら流れてゆくのです 瞼の裏に消えた熱 退屈の味が粘りつき 唾を飲み込む苦い音 悪夢の終わり 亡者の吐息 確かに君はここに居て 僕を見ていてくれるから…… 微かな気配に揺れるもの あの頃のまま 今も ずっと

道徳的な学習の時間

薄っぺらい教科書が一冊 一週間で最高につまらない授業の始まりです 個性を見つけよう! 自分探しノートを書こう! 自分だけの何かが欲しい 誰かにとっての特別になりたい みんなに認めてもらいたい それがもしキラキラと輝いて 問答無用に素敵な自分を映してくれるのなら お金払ってでもダウンロードしたい かもね 普通は嫌だと我儘な心が叫ぶ 普通が一番と臆病な心が囁く 天の邪鬼にぐるぐる回って きっとそれが私だけの個性 なんてね 個性を見つけよう! 自分の性格を発表しよう!

夢の剣

“いつかあいつに勝ってやる!” 叫ぶだけならタダだから 寝っ転がって繰り返す その日が来るのを待つだけで 自分で立てる気もしない 負ける資格すら持ってない 心の奥じゃ分かってる 敵から身を守れるように 死にたくないから準備する 言い訳の盾を振りかざし 自嘲の鎧で完全武装 夢の剣は重たくて 持っても落してしまうから…… ガラスのケースに入れられて 飾られるだけのあの剣 たまに思い出して眺めて うっとり酔って ご満悦 “ここからが俺の戦場だ!” 口上だけは一丁前 戦う覚悟