舌痛症と認知行動療法

私は以前に、口腔カンジダ症による激痛の舌痛症にかかり、感染の治癒後も舌と上あごの粘膜が荒れている。医師からは舌痛症・口腔灼熱症候群・粘膜が荒れるタイプの口内炎(カタル性口内炎)などの診断をもらった。

最近寝る前にオーディオブックで「傷つきやすいアメリカの大学生たち」という本を読んでいる。


傷つきやすいアメリカの大学生たち:
大学と若者をダメにする「善意」と「誤った信念」の正体

この本は、著者らが知恵を求めてギリシャの賢人に会いに行くというエピソードから始まる。賢人は「常に自分の感情を信じよ。決して疑ってはならない。」という知恵を授ける。


すると、著者らは「感情だけに従うと誤った方向に導かれやすいため、感情を疑い、現実をゆがんでとらえることから自分を解放できてこそ心の健康が得られる」と納得しない。


著者らは認知行動療法に詳しいため、常に「自分の感情を疑え」と訴える。自分の感情を信じることを「感情的決めつけ」と呼び、「認知の歪み」という非現実的な思考パターンにはまり込む原因なのだといい、うつ病や不安障害の特徴なのだという。

私は、この「自分の感情を疑え」というメッセージには驚いた。日本の世間一般では、「自分の直感を信じる」ことは、ポジティブに捉えられている気がする。恋愛ドラマやバラエティ番組の心理テストなんかだと「直感を信じて」というメッセージをよく見かける。

ただ、改めて考えてみると実生活では、あまり感情に振り回されるよりは、しっかりとした理由に基づいて判断・行動したほうが良い結果につながりやすいだろう。この本によると、

認知のゆがみには例えば、「破局化」(この問題に答えられなかったら単位をもらえない。そしたら、退学させられ、仕事にも就けなくなる……)や、「ネガティブ・フィルタリング」(称賛の声に気づきながらも、否定的な反応ばかりに目を向ける)などがある。このように歪んだ、非理性的な思考パターンに陥ってしまうのが、うつ病や不安障害の顕著な特徴だ。

傷つきやすいアメリカの大学生たち

認知行動療法、面白そうだなぁと思って調べて、漫画での解説を読んでみた。一例として、ふと「憂鬱な感情」に陥ったとする。そう感じさせた事実は何なのか、でも、プラスに考えられる事実があるか、と自分で反証し、気分を変えることができる、といったような感情をコントロールする手法があるようだ。


ちなみに、舌痛症を認知行動療法で治療したという論文もあった。舌の痛みのことばかり考えたり、将来的に治らないと考えしまったりすることを「認知の歪み」として、症状を気にしないようにし、将来どうなるかを不安に考えなくなることをゴールに治療したケースもあった。


私の舌痛症にあてはめて考えてみる。最近は粘膜の荒れは残っているものの、「痛いと言えば痛いし、痛くないと言えば痛くない」程度だ。いちいち意識を向けなければいいんだけど、舌のことを考えて、「うん、気持ち悪い」と感じる時もあるし、不安な気持ちになるときもある。


そんなとき、認知行動療法的なアプローチでいくと「気持ちは悪いが酷かった頃に比べればだいぶマシになった。」と反証して気持ちを持ち直す感じだろう。確かに、嫌な気持ちを引きずらず、脳内でとっさに気分転換できる思考パターンかもしれない。


「気の持ちよう」の舌痛症に関しては、そういう風に気分転換をトレーニングしていって、辛いと感じなくなる、忘れることが「治った」というゴールなんだと思う。

なお、認知行動療法でいう感情を疑えというのは、感情を全否定するのではなく、その感情が適切でない信念や考えに基づいていないか疑え、ということのよう。適切な感情は尊重されるべきだと私も思う。

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