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エイプリルフールでしたね

嘘がよくわからないときがある。嘘というか冗談を真にうけてしまう。
疑り深い性格だから信じてない人のことは、かなり本当らしくても疑ってかかるが、近しい人だと良く考えたら全然嘘だろうということをあっさり信じてしまう。

保育園でバイトしていた頃、営業時間の最後までのシフトに入っていた。18時過ぎるとほとんどの子は親の迎えが来ていて残っているのは一人とかになる。その時残っていたのは一人でも遊べる子で、僕は面倒を見るといってもほとんど何もすることがなかった。僕以外にはもう一人正職のM先生がいて書類作業をしていた。「早く迎えに来ないかなー」とか「暇ですねー」とかしゃべるともなくしゃべっていた。子供たちの声のしない保育園は電気がついていてもなんだか薄暗く、子供も一人ではそんなに沢山しゃべったりしないから、大人二人はやることを何とか見つけながら時間が過ぎるのを待っていた。

いよいよ掃除するところもなくなってきたころM先生が「ゆう先生もう帰っていいよ」と何の抑揚もないトーンで言った。
僕は内心よかったと思いながら「はーい、じゃ失礼しまーす」と答えたら「冗談冗談。どんなに子供少なくても職員二人は居なくちゃいけないんだよ」とまた全然抑揚のない声で返された。

「はは、あーそうなんですね」とこちらも負けずと抑揚のない声で返した。それからなにごともなかったかのように子供のもとに行き「なに読んでるの?」となんとか平静を装ったが頭からチリチリ音がするほど恥ずかしかった。なんだその冗談。本当っぽすぎるよ。言い方が全然冗談ぽくないし。よく考えたら確かに、職員一人で怪我したり、急病になったら子供を誰も面倒見れないからそうなんだけど、二人いる必要が今の時点では全くなさ過ぎて真にうけてしまう。大体いつもは冗談なんかぜんぜん言わないじゃないかM先生。めちゃくちゃ真顔じゃないか。言った後すら。

ということがままあるので冗談を言うときは冗談を言うぞ!という感じを出してほしい。よくわからないから。


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