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「お尻を奥まで入れる」の意味・・vol.1

「お尻を奥まで入れて座ってください」
そう言われたことのある車椅子ユーザーも多いと思います。あるいは、支援者でしたら一日に何度も利用者に言っているかもしれませんね。

お尻を奥まで入れないで座っている状態を「滑り座り」と言います。この座り方をすると、様々な弊害があります。仙骨に褥瘡ができたり、ずるずるとそのまま車椅子から転落したり、腰痛になったり。

「滑り座り」×褥瘡

褥瘡予防効果のあるクッションを使っている方は、機種によっては効果が発揮できていない可能性もあります。なぜなら、多くの車椅子用クッションは骨盤の部分がやわらかく沈み込むよう、そして腿の部分は少し硬めにして安定感を保つようにしているからです。「滑り座り」をしていると、骨盤が乗る位置が前方にずれるので、本来腿が乗るはずだった少し硬めの部分になることがあります。そうすると、本来見込まれていた褥瘡予防の効果が期待できなくなります。もちろん、それで褥瘡ができなければ問題ありませんが、もし、褥瘡を繰り返しているなら座り方を考えるか、前方もやわらかめの素材でできたクッションへの変更をお勧めします。

「滑り座り」×転落


車椅子からの転落も怖いですよね。在宅でも施設でも、転落のご相談をいただきます。転落したままフットサポートの奥にはまって、数時間動けなかったというケースもありました。ずるずるとお尻を前に出して座る方は、もともと座り心地が良くない方が多いです。そもそもの座り心地を改善することと、お尻や腰に負担のかからないクッションを使うことで、ほとんどのケースで転落がなくなります。

「滑り座り」×腰痛


滑り座りで腰痛を訴える方は多いです。お尻を奥まで入れて座ると、バックサポートが骨盤を支えるのでとても安定し、楽に座ることができます。しかし、バックサポートが体に合わない状態のまま座ると、座り心地が悪かったり、腰や背中が疲れるために、自分でお尻を前に出して不快から逃れようとします。原因はこれだけではありませんが、多くの滑り座りはこうして発生します。

しかし、楽に座りたいからと始めた滑り座りは、実は腰や背中の筋肉に多くの負担をかけています。
お尻を前にしてバックサポートに寄りかかると、骨盤が後ろに倒れます。多くの場合、骨盤は中途半端な角度のままになります。この状態は、筋肉に大きな負担がかかります。そして疲れるとお尻を少し前に出してみる。それを繰り返すと、転落になります。

通常、筋力とバランス感覚のある人は、座り姿勢を変えたいと思ったら、お尻を奥に入れなおしてみたり、右や左に傾けたりすることができます。しかし、足や体幹の筋力が弱っている人が、座り姿勢を変えたいと思ったときには、重力の方向にしか体を動かすことができません。体幹を右や左に傾けることも、バランスを大きく崩し、立ち直りができなくなりますから現実的ではありません。そうすると、“お尻を前に”の1方向になってしまうのです。

この,、ご自身による座り直しが続くと、転落になります。

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