シートベルトで命を失わないために
日常的に介護タクシーや福祉車両を利用している車椅子ユーザー、あるいは介護職の方も多いと思います。今回は、車椅子のまま乗り込んだ場合のシートベルトの付け方についてお伝えします。介護職、車椅子ユーザーはもちろん、お近くのケアマネジャー、福祉用具専門相談員、介護タクシー等の運転手さんにもシェアしていただけると命を守る力になると思います。
NHKでも何度か報道されたので、ご存知の方もいらっしゃると思いますが、シートベルトの間違った使い方で死亡事故が発生しています。同じ車に乗っていた他の人(車のシートに座っていた人)は軽傷ですんだのに、車椅子のまま乗り込んだ方だけが死亡するというケースが報告されています。
この事故死の直接原因となったのがシートベルトの間違った着用方法です。
衝突したり急ブレーキをかけた時に、車中にいる人の体は前に飛び出します。これを防止するのがシートベルトの役割です。シートベルトが当たっている部分には大きな力がかかります。車の座席に座っている人は、肩から反対側の腰下、そして腰下から腰下への3点でベルトを固定します。こうすることで、体が飛び出そうとする力を肋骨や骨盤などの骨で受け止め、内臓へのダメージを最小限に留めることができるのです。
車椅子に座っていても、基本的には同じです。肩から反対側に斜め1本、腰下から腰下へ1本、合計2本のベルトを通していると思います。その時に体のどの部分にベルトが位置しているかをチェックします。(車椅子の部分ではなく、体でチェックします)
チェック箇所リスト
①肩首 ②骨盤 ③車椅子付属のベルトもチェック
①シートベルトは肩にかかっていますか? シートベルトが首にかかっていないか、確認してください。首にかかっていると、身体が前に飛び出した時、首で衝撃を受け止めることになるので非常に危険です。シートベルトは肩にかかるように調整しましょう。
②もう一つのチェックポイントは、骨盤です。シートベルトが骨盤に当っていることを確認してください。正しく座れていないと骨盤を固定するのは難しくなります。必要なら座り直しをした上で骨盤にシートベルトをしてください。ベルトが骨盤からはずれていると内臓を圧迫し、非常に危険です。骨盤に当っているかを確認するのは、肩から腰下へ通すシートベルトも、腰下から腰下へ通すシートベルトも同様です。骨盤は座るとかなり下位置にありますので一度、座った時の自分の体で確認するとわかりやすいと思います。
③車椅子についているベルトも確認してください。介護保険で車椅子を使っている方は、車椅子のベルトはあまり使っていないと思います。しかし、車椅子を障害者手帳で支給された方は、ベルトを使っている方も多いと思います。車に乗る時は、骨盤ベルトと胸ベルトを正しく装着しているか確認してください。特に骨盤ベルトを緩めに使っていたり、骨盤ではないところで止めている方が結構いらっしゃいます。車椅子のベルトも間違った使い方をしていると、シートベルト同様に内臓圧迫などの原因となることを知ってください。
具体的な装着方法
ほとんどの車椅子はシートベルトをきちんと装着しようとすると、アームサポートの下の板(スカートガード)が邪魔になってしまいます。急いでいたり時間がなかったりすると、ついついアームサポートの上やすぐ下にある隙間を通したくなってしまいます。車椅子のアームサポートの上は、体では肋骨のない胃からウエスト、アームサポート下の隙間はウエストから下腹あたりの骨のない部分にあたります。この場合、体がシートベルトの下へ滑りだしたり、内臓を圧迫するなどのリスクがあります。とても危険な使い方なので今すぐ止めるべきです。
跳ね上げ式アームサポートの車椅子の場合・・・一度アームサポートを上げてシートベルトを通してから、アームサポートを元に戻してきちんとロックしてください。
固定式アームサポートの車椅子の場合・・・アームサポートの下にある板(スカートガード)の下を通すのが基本です。シートベルトが骨盤に位置していることを確認してください。しかし現実にはスカートガードの下にシートベルトを通せないケースも多いと思います。その場合は、車の座席や専用の車椅子に移っていただくか、跳ね上げ式アームサポートの車椅子への変更をお勧めします。
シートベルトの付け方について、「まあこれくらいなら大丈夫だろう」という感覚は捨ててください。安全か、危険か。この二択しかありません。介護職や介護タクシー等のスタッフが正しい知識を持つのはもちろん、車椅子ユーザー自身もきちんと知識を身につけて、自分の命を守ってください。
お近くのケアマネジャーさん、福祉用具専門相談員、介護職などの支援者にもシェアしてください。利用者の命はもちろん、事業所や職員を守る力にもなると思います。
リクエストの御礼
今回は、noteを読んでくださった方からのリクエストをいただき、シートベルトの記事を書かせていただきました。リクエストをいただきまして、ありがとうございます。とても嬉しく、力になりました。感謝します。
このnoteは、車椅子ユーザー、家族、友人、支援者、サービス業、行政の方等、車椅子に関わるすべての人が幸福であり続けるための情報提供を目的としています。
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