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円背なら必須!背張り調整 Vol.2

前回では、円背の方の困難と、その解決肢に車椅子を加えてくださいとお伝えしました。具体的に、どのように車椅子で解決するのかをご紹介したいと思います。

車椅子を体に合わせる時には、全体のバランスを考えます。円背の方の姿勢を整える時の目標は、主に2つ。体幹から無駄な力が抜ける姿勢を作ること、そして、可能な限り胸・肩・耳のラインを垂直に近づけることです。

①骨盤を安定させる

円背の方はどうしても骨盤が後ろに寝ています。円背のある方が一枚布のバックサポートの車椅子に座った場合、背中がバックサポートに当たってしまうので、お尻を奥まで入れることができません。そのため、骨盤を支えるものがないので、不安定なまま後ろに傾いています。これをしっかりバックサポートで支持をするを考えます。

極端に後景している骨盤を支えるためには、2つの方法があります。1つは背張りのマジックテープベルトやABSの骨盤サポートベルト。それが難しい場合は、ノビットシステムなどのクッションです。

この時、骨盤は無理に立たせないことです。骨盤の角度は、体幹から不要な力が抜けて上方向へ伸びる状態がベストです。もし骨盤を立たせようとした時に、体幹が前方へ逃げた場合は、限界を超えていますので逃げない範囲で調整をします。また、ベストな角度が慣れなくて疲れるという訴えがある場合には、もう少し骨盤を寝かせて保持することもあります。本人の違和感を軽く考えると、車椅子に座る時間が短くなったり、正しく座らなかったりするので、あくまでお客さんと相談しながら行います。

②胸郭を支える

次に決めるのは胸郭の支持です。骨盤の高さは、あまり個人差ありませんが胸郭は個人によりかなり違います。そのため、手で背中を軽く押しながらポイントを探っていきます。目安は、やはり頭が上方向に伸びたり、力が抜けて表情がやわらかくなることです。本当に微妙な、この違いを見つけられるかどうかが成否のカギとなります。

③円背の場所を確保する

背張り調整機能の大きな利点は、背中の丸まった部分の空間を確保できることです。そのため、骨盤を胸郭を支持した後は、体の曲線に沿ってマジックベルトを調整してきます。場合によっては、車椅子に付属してあるマジックベルトでは長さが足りないことがあります。その際は、市販のマジックテープを追加して、体幹が前に押し出されたり、一か所だけが強く当たるということがないようにセットをします。

➃胸・肩・耳を垂直に近づける

骨盤と胸郭のベストポイントを見つけられたら、多くの場合は胸・肩・耳のラインも以前に比べて垂直に近づいているはずです。しかし、誤嚥の問題を抱えている場合や首まわりの緊張が取れない場合は、もう少し垂直に近づけなければなりません。その時には、バックサポートの角度を変えたりティルトを倒したり、逆に、座面の後ろを数センチ上げることで骨盤を立たせて背筋を伸ばすという選択肢もあります。ただし、後ろを上げる場合は食事やおやつなど、時間を決めて調整するようにしましょう。移動の際には、必ず座面の後ろが前より低くなっている状態で使用してください。

今ご紹介したのは円背の方のための背張り調整のポイントと手順です。

解決の選択肢を持つ

背張り調整が成功すれば、円背の方が抱えている多くの困難が解決、あるいは軽減できます。ゴルフボールが挟まっているような違和感も、張り調整をすれば背中全体で支えられるのでなくなります。背骨に沿ってできていた発赤や痛みも、軽減することができます。

アームサポートにしがみつく必要がなくなるので、全介助で食事していた方がご自身で完食するようになったケースもあります。

それまで誰とも目が合わず寡黙に一日過ごしていた方が、背張り調整をすることで、隣の利用者さんと目が合うようになり、どんどん明るくなり、デイサービスの同じテーブルの方とおしゃべりをして一日笑顔で過ごすようになりました。その姿に、「〇〇さんって、本当は社交的な方だったんですね。ずっと無口な方だと思っていました」と漏らしたデイサービスの職員の方もいらっしゃいました。

嚥下が難しく、一口当たりの量も少なく、半分しか食事をとれなかった方も、背張り調整をしてから数週間後には完食するようになりました。

これらはすべて、背張り調整で姿勢を整えることで解決(軽減)できることです。円背のほとんどの方が、1人でいくつもの困難を抱えていました。それだけに、円背の方についての相談内容は多岐にわたっています。背中の褥瘡、仙骨の褥瘡、嚥下や食事介助、食事時間が長い、車椅子をつかんで放さないので移乗が大変、自走ができない、滑り座り、車椅子から落ちそう、疲れやすくてすぐに横になりたがる・・・。

あなたのお近くに、これらの内容に心当たりのある方はいらっしゃいませんか? 「円背だから、仕方ない」と障害を理由に問題解決を諦めていたなら、グッドチャンス!です。あなたの頭をシフトしてください。

「〇〇だから仕方ない」から「○○で解決できるかもしれない」に。

そして、その選択肢の中に、車椅子を加えてください。車椅子には、うまく座位姿勢を保てない方の姿勢を整える機能があります。有効に使えば、姿勢による困難を解決、あるいは軽減できるかもしれません。車椅子や姿勢についてのご相談は、シーティングエンジニアの資格を持っている福祉用具専門相談員か、理学療法士、作業療法士にご相談ください。

お近くにいらっしゃらない場合は、Facebookのコメントまたは、下記へご相談ください。

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 車椅子安全利用コンシェルジュ 久内 純子

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