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食感のバランスと味覚のペアリング! デザート系かき氷のカリスマが探求する「おいしさの正解」とは

第2回で、都内初のかき氷専門店「ひみつ堂」(台東区谷中)の店主・森西浩二もりにしこうじさんにおいしさの秘密を伺ったライター。かき氷作りの面白さを聞いていたら、自分でも作りたくなってきたゾ。私ならではのかき氷ってなんだろう。マイかき氷を創作する上で譲れないこととは。改めて森西さん、そしてもう一人、ユニークなデザート系かき氷でブームを牽引してきたあの有名店の店主にも話を聞いてみた!


絶対に譲れないもの、それは……

まずは、森西さん、かき氷を作る上で絶対に譲れないことって?
 
「自分が食べてれ込んだ素材の味を最大限生かすこと。そのために蜜を手作りするのは譲れないですね」
 
なるほど、森西さんは、自分が心から気に入った素材を使っているからこそ、それを表現したくて、どんなに大変でも蜜を手作りし続けているのだ。
 
つまり、かき氷を通して自分が素直においしい! と思うものを表現できれば、それが「自分らしいかき氷」と言えるのかもしれない。
 
「自分の好きなものを生かせ!」それが森西さんからのアドバイスだとライターは受けとった。
 
森西さん、ありがとうございました!

森西さんのかき氷への熱い思い、しかと受け取りました!

デザート系のカリスマは、かき氷が好きじゃなかった!?

さて、もう一人話を聞いたのは、デザート系かき氷の名店「サカノウエカフェ」の店主・町山友康まちやまともやすさん。もともと普通のカフェだったが、2015年の夏からかき氷の提供をはじめ、現在はかき氷の専門店として行列ができるほどの人気店だ。一度看板メニューの「こおりのショートケーキ」を食べに行ったことがあるが、氷といちごシロップ、ふわふわのクリームが溶け合っていく食感と甘さに食べる手が止まらなかった。

創業時からの人気メニュー「こおりのショートケーキ」。中にはいちごの果肉が入っている

なんと今年5月、マレーシアのクアラルンプールに海外初出店。現地にいる町山さんに、オンラインで話を伺った。
 

クアラルンプールからオンラインでインタビューに応じてくれた町山さん

実は町山さん、本来かき氷があまり好きではなかったという。それなのになぜかき氷屋に!?
 
「夏場の集客のためです。元々一般的なカフェメニューも出していたのですが、東京の住宅街という立地上、特にお盆の時期はお客さんが減ってしまって……。暑いなかでもわざわざ足を運びたい! と思ってもらえるメニューを作らねばと考えた末、かき氷に目をつけました」

サカノウエカフェの名前の由来は、文京区湯島の坂の上にあることから
ポップな内装がかわいい。女性客が多いが、男性客が一人で来ることも

なるほど、地理的制約がきっかけになったのだな。
 
しかし、サカノウエカフェがかき氷を始めたのは、都内で専門店が増え始めていた頃。すでに競争が激しくなりつつあり、そこに割って入るのはかなり大変そうだ。その点、不安はなかったのだろうか。
 
「確かに、ちょっと始めるのが遅いかな、かき氷ファンに受け入れてもらえるかなという不安はありました。でもやるしかない。店の存続がかかっていましたからね。とにかく試作して食べて、上手うまくいかなくてまた試作しての繰り返し。24時間かき氷のことを考える日々が、結局3年続きました」
 
作った試作品の数はなんと400種類近く。そこから絞りこまれ、現在の約100種類のメニューにたどり着いた。
 
「自分がかき氷をあまり好きじゃなかったからこそ、最後までおいしく食べられるようにするには、どうしたらいいかを考え続けました」
 
町山さんが作るかき氷は、自分らしい味を見つけようともがいた3年間の汗と涙の結晶なのだ。

蜜とクリーム、そして氷との絶妙なバランス

サカノウエカフェのかき氷の味の特徴は、おわんのように丸いフォルム。そして、ふわふわのホイップクリーム・蜜・柔らかな氷がそれぞれ口の中でほどけて、混ざり合っていくなんとも言えない食感だ。
 
基本的に、氷の上に蜜とクリームが重ねられたメニューが多く、重心が上にある。見た目の美しさと、蜜とクリームの重さを支える頑丈さ、この両立に結構苦労しているそうだ。
 
「手で押さえすぎると、氷と氷の間の空気が抜けてしまい、固くなってしまいます。そうすると、蜜と一緒に食べた時にほろっと口の中でほどける食感が無くなってしまいます。その一方で、ある程度しっかり成形しないとクリームの重みで崩れてしまう。この力加減が難しいんです」
 
なるほど、蜜や具材の重さか。それは考えたことがなかった。自分で作る際には気をつけよう!

たまに登場する裏メニュー。7月上旬は「キャラメルチーズんだ」を提供。気になる方はInstagramを要チェック (Instagramより)

生はちみつで漬け込んだナッツとヨーグルトクリームを合わせた「氷蜜花」は夏から秋にかけての人気メニュー (Instagramより)

現在も新しいメニューの開発に余念がない町山さん。インスピレーションはどこから湧くのだろうか。
 
流行はやりの食材は意識していますね。人気のスイーツ店のパフェを食べ歩いたりして研究しています。フードペアリングの考え方も取り入れています。例えば、いちじくと豆腐、桃とアーモンドなどは意外に思えますが、科学的に相性が良いと証明されているんですよ」
 
フードペアリング! そこまでやっているんだ。かき氷は奥が深い……。


手を加えておいしくなるなら、その方法を考え尽くす

いまや行列が絶えない人気店に
クアラルンプール店
かわいらしい「チーズベリーパンダ」は、クアラルンプールでも提供 

最後に、町山さんにも、かき氷作りで絶対に譲れないことを聞いてみた。
 
「おいしさの正解を探し求めるということです。そのままの方がいいものは当然そのまま使いますが、手を加えたほうがさらに魅力が引き立ちそうなものは、その一番の方法を徹底的に考え尽くします。お客さんに喜んでもらうためには、妥協できないポイントですね」
 
町山さんの長年にわたる努力やあくなき探究心に触れ、「自分でも作れるんじゃね?」と甘く考えてしまっていたことを反省。ほんとゴメンなさい!
 
本当に私、マイかき氷なんて作れるのだろうか。ちょっとどころか相当不安になってきた。
 
その不安がオンライン画面越しに伝わったのか、町山さんは、優しく声をかけてくれた。
 
「はじめから上手くいくわけありません。失敗して当たり前。これは、かき氷作りを始めたころの自分にも言ってあげたいですね」
 
そうだ。専門店が出すような見た目も味も完璧なかき氷を、素人の私がいきなり作れるわけがない。まずは挑戦してみることだ。そして、失敗したらもう一回やってみる。これぞ、てさぐり魂!
 
よーし!! 自分らしいかき氷作りを楽しむぞ!
 
次回、ついにライターが初めての本格かき氷作りに挑戦!

(つづく)

Supported by くるくるカンカン

クレジット

文:古澤椋子
編集:いからしひろき(きいてかく合同会社
撮影:蔦野裕
校正:月鈴子
取材協力:ひみつ堂サカノウエカフェ
制作協力:富士珈機

ライター・古澤椋子 https://twitter.com/k_ar0202
1993年生まれ、東京都板橋区出身。水産系の社団法人、ベンチャー企業を経て、2023年よりフリーライターとして活動開始。映画やドラマのコラム、農業系イベントの取材、女性キャリアに関するSEO、飲食店取材など幅広く執筆。在宅ワーク中心で、運動不足なことが課題。

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