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番外編 俺とフリーフォール@姫路セントラルパーク

単純な動作だからこそ怖かった

初乗車:2010年
好きなセクション:落下

 直落下型アトラクションの古典的名機と言えばこのインタミン製フリーフォールに他ならない。無機質な籠に入れられ、ただただ自由落下を体験させられるこの遊具。単純な動作の割には、そこらのコースターより怖い体験が出来たアトラクションだった。

 のフリーフォールが初めて設置されたのは1986年。まさにバブル経済前夜ということもあり日本に活気が満ち溢れていた時代だ。姫センと東京サマーランドにほぼ同時導入されたのを皮切りに(※1)、福岡スペースワールドや北海道ルスツリゾートなどに設置された。高さはタワーオブテラーよりもちょっと高い40m。今でこそ類似する遊具であるクレイジーヒューストンなど、もっと高さのある機種は登場しているが、1986年という年代を考えるとかなり攻めた遊具であったことは想像に難くない。

 めての乗車したのは、2010年頃だったかと思う。ディアブロ目当てに初めて訪れた姫路セントラルパーク。ディアブロは小高い丘の上に設置されているのだが、その脇にフリーフォールも設置してあった。第一印象は業務用エレベータといった雰囲気。なにも周りに無い原っぱに鉄製のやぐらが無造作に置いてある風景は、当時中学生だった俺にはなんだか殺風景な遊具に思えた。

マジで周りに何もない

 ろうか迷っているとニヤニヤしながら親父がやってきた。特に何も言わなかったが、その眼差しから“下からビデオ撮ってやるからお前乗ってこい(笑)“と言う無言の圧力を感じたので嫌々乗車したのだった。ただ、営業終了してしまった今だから言えるが、結果的にここで乗っておいて良かったと思う。

 り場に向かうと、乗る人が全く居なかったからなのか、係員のおじさんに“あ、お前乗るの!?”という驚きの表情を向けられた。こちらも、“乗るからスタンバってんだけどな”という思春期特有の若干不服そうな顔を見せながら、乗車した。

手荷物ロッカー
何度見ても殺風景なライド

 昇中は何か引っ掛かるような金切り音が常に聞こえ、不安感に包まれる。足元は金網となっており、真下が丸見えだ。目の前を見ると、建物を支える支柱がむき出しで、”エレベータのドアが開いた状態で上昇しているような雰囲気”だった。横の原っぱでハンディカムを携え撮影する親父が小さく見える。人間は宇宙から見るとちっぽけな存在なんだなと、スケールのデカい事を思ったり思わなかったりしながら頂上へ着いた。

立体駐車場のような

 上付近に着くと、そのまま数メートル前へせり出し落下。当時、ディズニーシーのタワーオブテラーは体験済みだったので、垂直落下に自信ニキではあったのだが、やっぱり怖かった。22名という大人数で乗車し、ディズニーという安心のブランドで構成されたタワテラに対し、経年劣化に伴うサビが随所にみられ、ほぼむき出しの状態で地上40mから一人で垂直落下するフリーフォール。まさに白鯨とビッグバーンのような対比。

 り出したと同時にノーウェイトで落下するライド、落下後すぐさま地面と平行になるからか、無重力状態はほんの一瞬だ。体だけがその場においてけぼりとなったような感覚に衝撃を受けたのを覚えている。

最終ストレート

 下動作後は、体があおむけの状態でブレーキゾーンを疾走する。ライド終了後も心臓がバクバクしており、まさに九死に一生といった感想だった。出口から俺が出てくると親父は相変わらずニヤニヤしており(※2)、乗って体験してみろよバカ!と思ったのだった。

 2022年に久しぶりに訪れた姫セン。フリーフォールの建物自体は残っていたのだが、稼働から36年が経過し補修部品も出なくなったのかしれっと営業終了してしまっていた。国内で現役稼働している個体はナガシマスパーランドだけとなってしまったので(※3)、未乗車の人が読んでいたら今すぐこのぶっきらぼうな遊具を体験してもらいたい。

色褪せたご案内

注釈
※1 国内へ輸入されたタイミングは同時だったようだが、営業開始は姫センが86年4月20日、一方でサマランは同年4月26日だったようなので、(シックスフラッグスで体験済みだった人は置いておいて)兵庫県民が日本で初めて垂直落下を体験したということになる。

※2 そんな親父を騙して鷲羽山スカイサイクルに挑戦してもらったのはいい思い出。

※3 一応ルスツリゾートにある個体は長期休業中扱いとなっているが、復活の見通しは立っていない。ナガシマ版も長期休業中だったのだが、まさかの復活を遂げた。


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