人工光合成ってどうなの?


i.講演会に行った理由

11月21〜24日は京都大学の学祭期間でして、授業が休みになり京大生はそれぞれ屋台を出したり、講義室を借りてサークルごとにイベントを開催したりします。中にはNF期間で授業が休みになるのをいいことに旅行に行ったりする人もいます。

ii.そもそも、日本のエネルギー自給率ってどのくらい?

前置きはこのくらいにして、今回のタイトルにもあるように「人工光合成」についての講演を聞いてきました。講演をしてくださったのは京都大学大学院工学研究科物質エネルギー化学専攻教授の阿部 竜先生です。一応、今回の講演会に参加した理由を説明すると、僕が化学系専門というのが主な理由で、現状日本のエネルギー自給率が他の先進国に比べて著しく低く、わずか8%という値であり、万が一明日から輸入がストップした場合3ヶ月で備蓄が尽きるという状況に危機感を持っているというのも今回の講演会に参加した理由です。皆さんは、明日から電気、ガスが使えないと言われたらどうしますか?幸い今の日本は信頼もあり、輸出が停止されるようなことはない(おそらく)ですが、現在なくてはならないエネルギーを他国に依存しているという状況は非常にまずいと個人的に思います。


画像1


(引用:経済産業省資源エネルギー庁「日本のエネルギー2018 『エネルギーの今を知る10の質問』」)

(URLhttps://www.enecho.meti.go.jp/about/pamphlet/energy2018/html/001/)(引用日2019/11/23)

とまあ、このような内容の話から阿部先生の講演は始まりました。もう1つ、普段は意識しないけれど言われると「ああ、そうだな」と思ったのは、生物のエネルギーはどこからきたのかという素朴な疑問に対する答えです。

iii.私たちのエネルギーはどこからきたの?

動物は食べなければ生きていけない→植物を食べる→植物はCO2と水と光エネルギーからグルコースなどの糖を作り出して生命維持をする。

という構造になっているのは理解できますよね。また、動物はグルコース(糖)を使ってCO2を排出しています。つまり、グルコース(糖)はエネルギーの運搬役であり、実は光のエネルギーを人間が使えるようにしているだけ、つまり動物は光のエネルギーを使って生命維持をしているのです。

とまあこのように、人間は光合成がなければ生きていくことすらできない存在なのです。「そろそろ自分たちで使うエネルギーは自分たちでなんとかしないといけない」(阿部竜.講演会中の言葉)

そういう現状を原動力に、先生方は研究をしているそうです。

iv.今話題の水素ってどうなの?

現在、クリーンなエネルギーとして水素が取り上げられていますよね。その水素は空気中に大量にあるとか、すぐに手に入れることができるわけではありません。今使われている水素は主にメタンを酸化することでH2を得ているのです。

CH4 + O2 → CO2 + 2H2

このような反応で水素を得ているので結局二酸化炭素を排出しまっているんですね。メタンは日本でほとんど取れません(メタンハイドレート を除く)ので、結局日本のエネルギー自給率は水素利用では解決しないということです。ここで、天然の光合成を参考に、水を還元して水素を得るという手法が登場するのです。

v.阿部先生の研究

しかし、それは簡単にはいかないのです。専門的な言葉を使わずに説明すると

水から水素を得るには「水素の還元」と「水素の酸化」という2つのレベルの違う作業が必要なのですが、天然光合成も人工光合成でもその2つを跨いで一気に反応させることはできません。なので2段階ジャンプの要領で間に1つステップを挟むことで2つの作業をつないでいるのです。


画像2


(参考:阿部研究室「研究テーマと概要」図2)

(URL:http://www.ehcc.kyoto-u.ac.jp/eh41/home/abe/research/)

また、光のエネルギーと一口に言っても、波長ごとにエネルギーが違うので、どの光を使うのかによっても難易度は変わってきます。阿部先生は、可視光を使った人工光合成を実用化するのを目標としているそうです。

大体のイメージがついたでしょうか。エネルギー貧困国の代表である日本の根本的な問題を解決する1つの手段としてかなり期待できるのではないでしょうか。国際情勢に流されない安定した国になることができるかもしれないのです。

最後に、阿部先生の言葉で、僕がこれから学生生活を送る中で覚えておこうと思った言葉を紹介して終わりたいと思います。

「研究をする時は、数十年先に役に立つ研究テーマを設定、研究する必要がある」

今年ノーベル化学賞を受賞された吉野彰さんは1983年にリチウムイオン二次電池の原型を完成されたということで、その研究成果が今の電子機器に必要不可欠になっているのを見ると、確かに数十年先を見越した素晴らしい研究であったということがわかります。

ちなみに、吉野さんは京都大学工学部石油化学科(現:工業化学科)出身だそうです。京大出身は本当に優秀な科学者が多いですね。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?