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果たして中裕司さんは悪い人だったのか?いや、彼は白髭公その人だったのかもしれない

# はじめに

この記事は確証のない推察や、社会的にデリケートとされている不都合な真実、そしてゲーム業界における陰謀論を取り扱っています。半分は真実かもしれない、でも半分はファンタジーかもしれない。断定して怖がることも変だし、解明して糾弾することも変です。それらを理解したうえで読んでください。この記事は半分がフィクションです。

できれば業界の方々はすぐに読むのをやめてください。あなた方にとって過激な内容が含まれています。読んだことによって起きるかもしれない不利益に、私は責任を持てません。

はじめに変なことを言います。罪は罪ですが、罪ではありません。裁くのは私たちではありません。裁かれるのは私たちです。

# いきなり何だ、一体どうした

実績については多くは語らぬが、海外の人が日本のゲームを素晴らしいと言ってくれる切っ掛けを作ってくれたり、日本が誇るオンラインゲームを開発し続けられる切っ掛けを作ってくれたりしたゲームクリエイターである中裕司さんが、「インサイダー取引」という株取引における不正行為に手を染めたとして罪を問われた。

いくつか報道はあるが、適切に「中さんの情報」→「その周辺の情報」→「関連するかもしれない経緯の情報」という順番で早とちりやミスリードを排除している電ファミニコゲーマーの記事が秀逸であるので、そちらを参照してほしい。

本投稿は「なーんだ、やっぱり中裕司って悪人だったのか、犯罪者にはかける情けもねえなヘヘヘ」という、ネット上に溢れる過激な態度を取る人々による風説の流布、誹謗中傷のようなその情報操作、同調圧力が広まること、またそれに流される無知な人々が多く表れることを危惧し、ここに擁護側の立場から外野としての見解を示すものである。あくまで外野である。真実を示すものではないため勘違いはしないでほしい。

一言いっておくと、私はスクウェアのゲームが好きだった。大好きだった。セガのゲームを全然触っていない私が突然ファンタシースターオンラインを選んでプレイした理由は、Sa・Ga2 秘宝伝説のパーティを再現できるからだった。どちらも好きだった。

この件は、私を含むそれらのゲームとゲーム業界を愛する人々への、重大な裏切りだ。

# 中裕司氏はどうしてインサイダー取引を行おうと思ったのか

インサイダー取引とは、かいつまんで言えば「もうすぐドコソコの会社がナニナニするらしいよ、今のうちに株買っておけば株価上がって儲かるんじゃない?どう?」という誘いに乗る事である。株を購入する本人が、株価高騰が予想される確固たる情報を事前に獲得し、その情報が公開される前に自らの意思で対象の株を購入することで成立する不正行為とされる。

わかりやすく(?)NGSで例えてみよう。1,050メセタで散々投げ売りされていた「アームⅢ」のカプセルを、デバッガーのバイトをしていた友達から「次のアプデでアームⅢが覇権OPの交換素材になるってさ。今のうちに3,000個ぐらい買占めようぜ」と持ち掛けられたとする。ほんとかなぁそれ?って訝しく思いながらもアルム・パワーの実装の前にアームⅢを3000個、315万メセタで買占め、それをアプデ後のアームⅢが88,000メセタで売れる時期に売りさばき、取引税を加味して2,400万メセタを売り上げ、あなたは差額にしておよそ2,085万メセタ(20M)を得たとする。3Mの出資でだ。

経済無法地帯であるPSO2においては、この手の不正行為は呆れるほど腐るほど反吐が出るほど行われている。インサイダー取引はこの小話の中で「デバッガーの友達から未公開の確定情報を仕入れて高騰することが確実と予想される素材(=銘柄)を買い占める行為」がその定義にあたる。

やったことあるんだろ。その汗を拭きな。

このような不正が内通者の協力によりいくらでも何度でも可能なため、株取引においては抜け駆けは重罪であると定義され、現代の法では重い罰則や徴収が課せられるようになっている。懲役もしくは500万円以下の罰金、それに加えてインサイダー取引で得た利益のすべてを没収とのことだ。さらには前科一犯のハンコも頂くことになる。

インサイダー(内部者)取引を行なった者は、5年以下の懲役もしくは500万円以下の罰則(又は懲役と罰則の両方)がかけられ【金商法第197条の2 13号】、インサイダー取引によって得た財産は没収されます【198条の2 1項1号】。

なお、法人にあっては、犯罪を行なった法人関係者個人だけでなく、法人そのものにも罰則がかけられる場合、その法人に対して5億円以下の罰金がかけられます【207条1項2号】

SBI証券公式サイト「インサイダー取引を行った場合の罰則はどうなりますか?」
https://faq.sbisec.co.jp/answer/5ee0844250df5000122071ed

中裕司さんは業界に長くいた人間だ。考えつかないようなアイデアを実現するほどの凄腕プログラマーと称される高い能力の逸話を持ち、何よりもプレイする人たちの楽しみや感動を第一に考える利他的な(そして周囲を巻き込んでのはた迷惑なほどに自己犠牲的な)ゲームプランニングの実績、ゲームの品質と開発チームの士気を維持するための総合監督=ディレクターという管理職としての経験も長い。ファンタシースターユニバースが走り出しに失敗し、ユーザーからのヘイトが募ったあの頃も三吉隆夫さんを見捨てずに後ろ盾として支え、時には監督責任としてユーザーの皆さんに謝罪のメッセージを載せることすらあった仕事の鬼だ。

あまりにも純粋で世間知らずなためにインサイダー取引について「本当に知らなかった」と本人が述べるのであればそれはまったくもってお笑いだが、これだけ長い間株式会社に勤めていて、部下の成長と作品の行く末を見つめ続け、黒い噂もちらほらと聞く2000年代初頭のセガに在籍し尽力しておきながら、インサイダー取引の何たるかを知らないなんてそんなことは十中八九ありえない。危険は常に誘惑としてそばにあったはずだ。

そんな彼がスクエニに在籍した途端、自分が一切関わっていないドラクエの新作ソシャゲに目を見張り、金の亡者のように不正行為に手を染めて収益を得たというのか?いや人はわからんものだ、目の前にニンジンがぶら下がっていればそれに食いつくこともありうるのではなかろうか?…なんて、そんな茶番が通用するかよ。

思うに、誰かを救うために自分の身を差し出したんだろうな…。残念ながらそういう人だよ。

# 事件の周辺にある怪しげな数字の話

ファミ通comの記事であるが、中裕司氏の紹介を冒頭で行いながら「スクエニの元社員がAimingの株式およそ16万2000株を、4720万円で買い付けた」というミスリードを誘いやすい書き方での具体的な数字が載っている。頼むから公式メディアとしてこういうのはやめてください。誤解を生むから。

この「16万2000株を4720万円で買い付けた」のは、元スクエニの佐崎泰介氏と鈴木文章氏である。ごめん、知らない。ググっても経歴が出てこないし関連する作品からのメッセージ性も見えない。

下記の記事からすれば、ドラクエ10とドラクエ11に「同名のクレジットが存在」するらしい。ご本人かどうかはハッキリさせないのが礼儀。

佐崎容疑者については『ドラゴンクエストXI 過ぎ去りし時を求めて』や『サガ スカーレット グレイス 緋色の野望』に、ミドルウェア関連の業務に関わっていた人物として同名のクレジットが存在。
鈴木容疑者については、『ドラゴンクエストX いにしえの竜の伝承 オンライン』にてイベントプログラマーとして同名のクレジットが存在する。

スクエニ元従業員ら、インサイダー取引容疑で逮捕。『ドラゴンクエストタクト』開発元の株を、公表前の情報をもとに買い付けた疑い
https://automaton-media.com/articles/newsjp/20221117-227002/

彼らはドラクエタクトが「Aimingによって開発されます」という発表がある前の2019年11月?12月?かそこらに株を買い付けたとされる。impressの記事によれば情報が公開されてAimingの株が活発に売り買いされるようになったのは2月5日以降とのこと。

株の買い注文はタイトルが発表された2月5日以降に買い注文が殺到し、2月6日にはストップ高となる370円を記録した。その勢いから2月7日も引き続き買い注文が集まるものと思われ、「ドラクエ」ブランドがもたらす影響力を物語っている。

Aiming株価、「ドラクエタクト」共同開発発表でストップ高に
https://game.watch.impress.co.jp/docs/news/1233888.html

2019年11月頃のAimingの株価をGoogle先生に尋ねてみると、一株257円前後で売買されていたことがわかる。

2月7日には450円になっていて、11月頃に16万2000株購入した場合には1株あたり200円ほどアップし3,240万円ほど利益を得たという計算になる。

7月頃のピーク時には1076円になっていたようだ。この時16万2000株を売らずに持っていたとしたら、その価値は1億7431万2000円にものぼり、元手の4720万円から考えると1億3000万ぐらいの利益を得たことになる。1万株ほどポイっと売っちゃおうかな♪なんてウキウキで売れば軽く1000万円の現金になるようなボロいお話だ。それほどまでにインサイダー取引というのは公平性に欠け、なおかつ(どこぞの上場ゴール並みに)忌み嫌われる行為なのである。

ただし…世の中はそううまくはいかない。ソシャゲの開発や運営の会社なんて、ゲーム運営制度に根本的な問題がある日本ではその評価が保たれることはありえず、中裕司氏がスクエニを追い出される2021年4月末ごろにはもう価値が386円に暴落していた。2022年11月頃に400円台まで回復したものの、株で大儲けしてやったぜと喜び勇めたのはせいぜい6カ月間。もしその間に株を売り損ねたら、不良債権のように自らの資産にひずみを作って居座ってしまう。逮捕されるリスクを背負ってまで青田買いしたのにな。

少しでもゲーム業界にいたことのある人間ならば、ソシャゲ開発や運営の会社の株を急いで買おうなんていうことはよっぽどじゃない限りしない。リリース後に評判を落として下落していく可能性のほうが遥かに高いのに、分が悪すぎる取引だ。インサイダー取引によって「不正に儲けた」というトピックだけがクローズアップされるが、本人がいつ株を売っていくら儲けたかがわからない以上、巷の人々が思い描いているような理論値の利益が生まれているかどうかは疑わしいのが現実だ。もちろん佐崎氏はうまく売り抜けたことだろう。手口が慣れている。アームⅢの相場を日々ウォッチしては変動を見定めて、拾った1本を57000メセタで売るかどうかで悩み続けた私にはなんとなく感じ取れる。

さてここで中裕司氏がどれくらい不正取引に突っ走ったのかを比較してみよう。彼が買い付けたとされる1万株280万円というのは、実のところ1月31日頃の相場に近いことがわかる。Aimingの株は2019年12月30日に313円を記録し、その後は300円前後を推移していたようなので、1月上旬に購入したならばその額は280万円では済まず300万円と報道されるはずだ。つまり、1月下旬に購入したという情報は信憑性が高い。

その後、一週間と経たずにドラクエタクトの開発がAimingであると発表され、中裕司氏はギリギリのタイミングで買い付けに間に合い、インサイダー取引を成立させた…。というのが表立っての筋書きだ。それに合わせてメディアは煽り立て、外野は「やっぱりな」と訳知り顔で石を投げている。

だけど、なんで一週間前なの

本件の主犯格とも言える佐崎氏は、11月か12月かぐらいからしばらくの間、わかっていて度々買い付けを行っていたらしい。それならば同じようにインサイダー取引を行う仲間がいれば声をかけているだろう。

中裕司氏にインサイダー取引の意思が明確にあったならば、12月のうちに同様のグループから声をかけられ、確実に勝てるギャンブルにありったけの金をつぎ込んでいてもおかしくない。なのに、中裕司氏はそのタイミングでは手を出さずにドラクエタクトの開発に関するプレスリリース公開の一週間前、280万という弱気な金額で10000株ぽっちを購入に踏み切った。なぜそのタイミングでその金額なの?

  • お小遣いなかった

  • 先に教えてもらえなくて慌てて買っちゃった

  • 11月に教えてもらってたけど2ヶ月悩んでた

どれかかな?彼がそんな小者だとしたら世間でこんなゲームの神様の一人みたいな扱い受ける?

何があったし。

ところで、プレスリリースの公開予定って本当に2月5日だったのかな。

# 事件の周辺にある不気味な可能性の話

各社がインサイダー取引の肝心要として報道している「事前に事実を把握し」というワードには、非常に危険な落とし穴がある。本人に一切その気がなくてもいきなり目の前に居座り「今度〇〇社と××社が△△するんだけどさぁ」と一言喋って振り向かせれば、それは経緯はどうあれ事実を把握させたことになってしまう。

あるいは、決算報告会などで「わが社は来月〇〇社と提携し~」といった本来クローズなはずの展望を語られてしまった場合はどうだ。そのときは仮にアルバイトの下っ端だろうと「事前に事実を把握した」ということになり、自ら進んでインサイダー取引の条件をひとつ満たしたことになる。

その枕詞を踏まえて、あなたがもし会社の誰かに揺さぶりをかけられたらどうだろう。いくらでも悪魔のささやきは紡がれる。閉じられた密室で。

それは事実ではない。可能性の話だ。どんな業界でもどんなグループでも、「そんな事実はありませんね。人聞きの悪い事を言わないでください」と言われてしまえばそれまでだ。つついたほうの負けだ。ただ、現実としてそのような手口で貶められる人々はこの世にごまんといる。人質を取られたなら、泥棒をするしかない。権利を握られたなら、弱い者をイジメるしかない。そのような不幸に縛られる定めの人々もいないわけではない。

中裕司さんがどのような状況、境遇にあったのかはわからない。セガに在籍していた頃に比べて、プロぺで部下に教鞭を振るっていた頃に比べて、うだつの上がらない日々が続き心変わりはあったのかもしれない。本人が本心でインサイダー取引で数百万ぽっちを儲けて逃げおおせてやろうと画策した可能性は終始覆らない。ただ同時に、会社が誠実ではなかった可能性も終始覆らない

(「バランワンダーワールドを作ってくれてありがとう」というファンのコメントに対して)
Googleによる英語からの翻訳
ありがとうございます😊
こういう人が一人でもいると少しは心が楽になりますが、裁判の証拠資料として嘘をついた資料を出す人は絶対に許しません。私は嘘の証拠を持っており、いつかそれを公開したいと思っています.

(業務命令で職を追われたことについて)
私以外にも何人も急に役職や仕事を外される人はいるようですし、実際に外された人も見ました。

(SEGAを退社したことについて)
出て行くタイミングでもなかったですよね?SONIC15周年でSONIC2006作っていて、PHANTASY STAR UNIVERSEも作っているのを自分から途中で投げ出す事なんて絶対にありえないですよ。当時は私の事では無く開発全員の給与についての話をしたら急に外される事になりました。だいぶ偉い立場にいましたからね。

中裕司氏のTwitterより
https://twitter.com/nakayuji/status/1588765858427727872

中裕司さんをそうなるように仕向けた人間がもしどこかにいるとしたら?それはどこにいるだろう?実はセガが関与していたら一体どうしよう?彼は2018年にスクウェア・エニックスに移籍し、バランワンダーワールドが2021年3月26日に発売されていることを考えれば2~3年はバラン1本のプロジェクトを回すので精一杯だったかと思われる。最大手のゲーム会社に中途採用で入った鳴り物入りのおじさんは、その存在価値を示すために、また自分が大見得を切って始めたプロジェクトのために、入社1~2年目であちこちの部署に顔を出して油を売っている場合ではなかったはずだ。

ならば、そんな大型新人の中裕司さんに社内情報のリークを直接持ってこれるのは「偉い人」か「開発チームの誰か」が濃厚となる。まさかとは思いつつも某ゲームのスタッフロールを確認してみたが…。

いや、なんでいるんだよ。怖っ!

# タイトル回収の本題:白髭公とは

「白髭公」とは、ファンタシースターオンラインに登場するキャラクター、『ヒースクリフ・フロウウェン』の二つ名である。物語のカギを握るキーパーソンとして描かれ、舞台の裏で暗躍する軍やラボの人間との関わりが仄めかされている重要人物だ。

「白髭公」と呼ばれる軍の英雄。アリシア・バズの育ての親であり、レッド・リング・リコの師。一世代前の英雄たちとして同時期にドノフ=バズ、ゾーク=ミヤマがいる。その2人と共に若くして国家に所属、軍で数々の戦功を立てた後に政府高官となる。その後、本星政府の不穏な動きを知りつつも、出奔した2人と対照的に政府に残り続け、軍部出身でありながらも政治中枢にも影響する強い発言力を持つ。なお、現在でも軍で使用されているフロウウェン系武器群は、彼が現役時代に使用していたものがモデルとなっている。

パイオニア1陸軍副司令として、パイオニア1に乗船。現在の調査ではパイオニア2がラグオル軌道上に到着する前に受けた彼の死亡報告は何者かによって捏造された可能性が高いことが判明。已然その生死は不明。

PSOBBオフィシャルサイト|NPCキャラクター
http://backup.segakore.fr/psobb.jp/world/npc.html

PSOに関する重大なネタバレとなるが、フロウウェンは最大の敵「ダークファルス」を巡る戦いのさなか、ダークファルスを構成する物質であり、有機物、無機物を問わず侵食しモンスターに変えてしまう「D細胞(D型因子)」に侵食されてしまっており、余命いくばくもなかった。

死を覚悟したフロウウェンはラボからの「D細胞を有効活用する研究に協力してほしい」という胡散臭い要請を了承、人体実験の犠牲者となり「オルガ・フロウ」という異形の怪物に成り果ててしまう。

ゲーム中にて彼からのメッセージを聴くことができるシーンでは、次のような彼の独白を聴くことができる。

老い先も短いこの身体が人々の未来のためになるならばなにも思い残すことはない。
そう考え、オレは幾つかの条件と引き換えに政府の申し出を受けた。

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提案を受け入れたとは言え心残りもあった…
この老いぼれを「師」と呼びこんな未開の地にまでついてきてくれた あの利発な娘。
オレの死を知らされた時あの娘はどう思うだろう…

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つまりオレは政府の連中に欺かれたということだ。
オレが実験体になるのと引き換えに出した条件、
それはコーラル本星政府へメッセージを届けること。
パイオニア2による惑星ラグオルへの第2次移民の一時中止。

内容が内容だけに揉み消されたのだろう。
パイオニア2の人々は何も知らされぬままこの地に降り立つのか…

白髭公メッセージログ(PSO)
https://privatter.net/p/770303

自らの勤めを武骨に純粋に果たして社会の歯車として貢献し、最後には自らの傷や弱みを握られて落ちぶれ、民や愛弟子の身を案じて捨て身の取引を持ち掛けるも、権力や狂気に振り回された挙げ句に棄て置かれ、詳細を知らない部外者たちに「もうコイツダメだな…」と苦虫をかみつぶしたような顔で悪、闇、脅威として討伐されてしまう老戦士の哀しいエピソードは、今の中裕司さんと重なるものがある…と思いたいのだ。

本人がこんな話を聞いたら「何をバカな」と笑いながら反論してくるかもしれないし、フロウウェンのファンは「白髭公は犯罪者じゃないので」と平和ボケした日本ないし地球の法律を掲げて反論してくるかもしれない。
だけど、彼と白髭公がその身にかぶっているのは、罪であって罪ではないのだ。それは罪をかすませるほどに深く物悲しい哀愁だ。

今、彼は烙印を押されて酷い物言いを受けている。彼自身は面白いゲームを作って会社や業界に貢献したかった、ひいては自分の作品を愛してくれるファンを喜ばせたかった、ただそれだけのシンプルな男である。

そのためには、手段を選ばなくてはならない時もあった。彼だって裁判のための書類を書く暇があれば、仕様書のひとつでも書いていたいと思っていただろう。スクエニからの文書や声明を検証する暇があれば、プログラマのソースコードのひとつでもレビューしてやりたいと思っていただろう。自らの仕事を続けるためなら手を汚すことも考えただろう。そのうえで、裏切られ捨てられる可能性も加味していただろう。それでも彼は、自分の作品を愛してくれるファンを、一緒にゲームを作った仲間を、喜ばせたかった。ただそれだけの男である。

ゲームクリエイターも人生の大事な時間削って良いゲームを作っていると思うのですが、その見返りとして目の前にニンジンがぶら下がっている方が良いゲームが出来るのをSEGA分社化の時に見たので、同じような仕組みにしたかったんです。私の事でなく沢山の部下達とセガの為になんとかしたかったんですよ

中裕司氏のTwitterより
https://twitter.com/nakayuji/status/1591970876551213056

それでも「犯罪者を信じることはできない」という方々はいる。それでかまわないよ。
だけど、私たちはいともたやすく簡単に、犯罪者になることができる。犯罪者にすることができる。私たちはどれだけ法律を振りかざしても、どれだけBANのシステムを解き明かして他人に訴えても、人である以上、人を裁くことはできない。裁くのはそう動くようにプログラムされたシステムだ。

君は、システムとそれを扱う人間を信用できるかな。

♯ 千年紀の終わりに

もし私たちが、その深い海の底へ真実を求められるほどに強く、そして豊かになったなら、会いに行こう。闇に蝕まれながらも優しい目をしたまま、成長した教え子をずっとずっと待っている彼の元へ。

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