努力は報われない

1999年。意に反して早期退職優遇制度を勧められたとあるグループ企業の58歳の課長が、本社の社長室に押し入って切腹するという事件があった。社長室に押し入った男性の抗議文が残っている。その一部に次のような箇所がある。

『入社以来30有余年。会社と運命共同体として、寝食を忘れ家庭を顧みる暇もなく働き支えてきた従業員の努力の結晶が、今日の当社の姿を築き上げたのである』

厳しい言い方になるが、寝食を忘れ家庭を顧みる暇もなく働いたのは、そのような人生を選んだ個人の自由意思であって、そうすることに対して会社が報いるかどうかはまた別の問題なのである。

王貞治さんの名言「努力は必ず報われる。もし報われない努力があるのならば、それはまだ努力と呼べない」も昭和の高度経済成長期を背景に発せられた言葉。尋常ではないスピードで環境が変化する現在には当てはまらないのかもしれない。

現在に合わせて解釈すれば、
「世の中は公正ではない。よって、ほとんどの努力は報われないだろう。その中で、どんな場面でも臨機応変に対応出来る知恵と体力と機敏さを習得する準備をしなければならない｣なのかもしれない。

変化し続ける環境と価値観を、自分らしく捉まえて、進むべき道を見定めていきたいです。