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【Gibson J-200 The64 Story アーカイブ】クロサワオリジナルモデル開発秘話、そして次なる構想~Road to 65th~

2022年2月にクロサワ楽器は創業65周年を迎えます。私は断然、記念すべき年に向かい記念モデルの開発に取り掛かります!という意気込みもあるながらまだ何やるか決定していない今日この頃、前回、The59 J-45の製作秘話アーカイブを公開しましたところ、The64は書かないの?とご意見をいただきましたので、ここでは2014年にリリースし大好評を得たGibson J-200 The64の特集記事を加筆修正し掲載していきます。(*2021年現在、このモデルは生産、オーダーしていません。)

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Gibson Five Star Dealerとしての特権、Gibson社へのカスタムオーダー。2007年より当社もFive Star Dealerとして認定され、数多くのカスタムオーダーを実現してきた。黒澤楽器店55周年を記念して、創立年である1956年製J-45の仕様を再現した"55th Anniversary1956 J-45"(*1)
エレキギターも含めた1959年製Gibsonギター独特のネック形状を始め、材質、サウンドホール位置、ADJスタッドまで当時の使用にとことん拘った"J-45 The59"&"J-50 The59"。

(*1)2011年は創立55周年記念モデルとして1956 J-45を発表しました。65周年では何をやろうかな。2012年にThe59 J-45が完成。次のモデル開発の為に費やした苦難の日々をお届けしています。

これまでクロサワ楽器店Gibsonアコースティック・チームはGibsonギターの伝説に挑むかのようなリイシューモデルの企画、販売を行ってきた。

数あるGibsonアコースティックLine-Upの中で、代表モデルとして挙げられる物が幾つかある。中でもJ-45を筆頭としたRound Shoulderモデルが一般的であるが、それは価格帯・取り回しの良さ・使用アーティストの多さからも窺い知れよう。過去にも"Custom"といえば"J-45"が取り上げられることが多く、弊社もご他聞に洩れず、数多くのJ-45をベースとしたカスタムを手掛けてきた。前述した2つのJ-45ベースの当社カスタムは全国の多くの方に評価していただき、我々の予想以上のスピードで追加生産分も含めて完売。

「What's Next?」

"J-200"といえばGibson Acoustic Line-Upの中で最大のBody Sizeを持ち、価格帯もTopクラス!正に"King of Flat Top"と称せられるに値する存在感を1937年のデビュー時より世間に知らしめている。
Elvis Presley / Bob Dylan / George Harrison / Keith Richards / Ronnie Wood / Neil Young / Edge(U2) / Pete Townshend(The Who) / Lenny Kravitz / Sheryl Crow etc...国内においても、忌野清志郎 / 斉藤和義 / 長渕剛 / 世良正則 /竹原ピストル(ex.野狐禅) etc...国内外の名だたる"Rock Legend"に愛され続ける本モデル。

生産開始から77年間の歴史の中で、幾度のモデルチェンジを経て来た本モデル。Bob Dylan / George Harrison / Keith Richards / 忌野清志郎 / 斉藤和義 / 長渕剛 が愛し、見方によっては一番"Gibsonの個性"が強調されている1960年代中期以降の仕様に着目し、今回当社カスタムとして"1964年製 J-200"にスポットを当てた。

Epsode1 苦悩

2012年12月末に発売開始された弊社カスタム"The 59"シリーズ。3モデル計175本はほぼ完売。(2014.7 現在)
細部に至るまで我々は「拘り」を追求し、Gibson Montanaがそれに応えてくれた結果である。我々スタッフがお客様に対し、自信を持ってお勧め出来るギターをGibsonが産み出してくれたお陰である。しかし、ここに安住している訳にはいかない!限定生産モデルである"The 59"はいずれ店頭から消える。

「次」だ。

2013年9月某日、本社マネージャーよりGibsonアコースティックチームに緊急招集!@神保町 某American Dining Bar テーマは・・・

「What's Next?」

次のギブソンアコギのカスタムオーダーはどんなモデルをやるのか?我々は夜の帳が下りたダイニングバーに集結した。結論になかなか辿り着けない「会議」という名の宴(?)。繰り広げられる議論。終電の時間は刻一刻と迫ってきていた。カオスに放り込まれ、もがき苦しんでいるのには大きな理由がある。かつては発注単位がミニマム6本であり、我々はかなりの自由度を持って複数モデルを毎回オーダーしてきた・・・しかしカスタムオーダーのシステムが変更され、発注単位は50本となったのだ!つまりよほど人気の出る、すなわち我々の立場からすると「たくさん売れるヒット商品」を作らなければならないのだ。極端なルール変更に戸惑いを覚えながらも、現実を受け入れるしかない我々はアルコールに力を借り(?)、眠たい眼を擦りながら熱い議論を戦わせた。

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・・・ん?気づくと1人足りない・・・!?

「マネージャーは?」

もう帰ってた。

マネージャーが「トイレに行く」と席を立たれた際にカバンを抱えていた事に不自然さを感じなかった訳ではなかったのだが・・・上に立った人間というのはいかなる場合であっても自分の置かれている状況を客観的に見ることの出来る能力を備えているのだと、改めて実感した瞬間であった。

そして一同に時計を見る・・・「終電がない・・・」

残された我々3人の覚悟は決まった。幸いこの店はAM 5:00まで営業している。

議論再開!!

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(*2)手前が私、真ん中がスタッフ池森。一番奥がスタッフ臼井。

年間の売上を分析してみると、(せずとも)圧倒的なモデルがある。勿論、J-45である。Standardシリーズ、True Vintage、1960’s復刻版、1950’s復刻版、カスタムモデル。需要に沿って多種多様に展開し、云わば"Gibsonアコースティックのフラッグシップモデル"といえばJ-45以外には考えられない。昔からである。弊社においても2011年に限定55本で展開した"55th Anniversary 1956 J-45"2012年末よりシリーズ計175本を展開したJ-45"The 59"上記2モデル以外にもアディロンダックスプルース仕様の1960’sカスタムや、ラージピックガード仕様のTrue Vintage etc...冷静に考えれば"J-45"ベースのカスタムであれば、ある意味我々の不安は軽減される。他モデルと比較しても「需要と供給のバランス」を予測しやすいからである。
しかしここ数年、我々は渾身の力を込めてオリジナルカスタムのJ-45を展開してきた。お陰さまでそれは結果にも結びついた。(*3)

(*3)2021年時点でTrue Vintageは廃止、1960’sや1950’s復刻版はそれまでは限定生産扱いだったものがその人気からオリジナルコレクションとしてレギュラー品に変更。今もトップクラスの人気を保っている。

新たなチャレンジをすべきでは?
では何を?

マネージャーがステルス戦闘機のように姿を消す前から議題に上がっていたモデルはある。

【 J-200 】だ。


Episode2 決意

我々が結論した理由はこうだ。

1.ミニマム50本のカスタムオーダー品を成功させるためにはインパクトが必要である!だけどJ-200を50本ひゃバカげている。
2.前回のJ-45 "The 59"同様、ビンテージのJ-200オーナーがスタッフの中にいる。再び忠実なCADデータを用意しビンテージの詳細データをGibson社へ提供しよう!
3.「歴史への挑戦!」このスタイルこそ我々の追い求める姿である。やれんのか!?やってやんよ!
4.とにかく"J-200"はCOOLだ!
5.早く帰りたい・・・

マネージャーは議論の最中、何度も我々に確認した。

「J-200?本気か?勝算はあるのか?」

正論である。Gibsonアコースティックの仕入れ量が世界一多い、当社クロサワ楽器をもってしてもJ-200を年間に50本仕入れた事は無い。それをバリエーション無しの1モデルで50本を頼むというのは正気の沙汰ではない。勝算?この時点である筈もない。そう、あるのは気合だけである。
ただマネージャーはトイレに立つ前にこうも言った。

「君らが決めたからには最大限のバックアップをする」

マネージャーが自宅のトイレにとっくに辿り着き、シャワーを浴び、イビキをかいている頃、我々は腹をくくった。

J-200 The64で行く! (*4)

(*4)名称決定にも様々なアイデアが出されていった。J-200 "The 64 Half-Century"?、なんか長い。「J-200 Animal」?アニマルと言われても認知度ないのでは?本モデルに近い仕様を使用していたディラン、清志郎を意識(リスペクト)して「1964 J-200 ”Charisma”」?
最終的にはシンプルにJ-200 The64に落ち着いた。


1964年製J-200の復刻・・・どこまで再現出来るか?現行品と比較し、相違点を先ず洗い出した。

1.ボディ厚に関して、1964年製の方がテーパーが浅く、ネックジョイント部が厚い。
2.トラスロッドカバーに"CUSTOM"のバーティカルロゴ入り。
3.Tune O Matic ブリッジ上の駒が白いナイロン製。
4.バックのセンターストライプマーケトリー(寄せ木細工)デザイン。
5.ブレイシング構造
6.ワッフルバックチューナー
7.サンバーストの風合い
8.ピックガードの材質およびデザイン
9.3ピースメイプルネック

前回のJ-45 "The 59"開発時にはネックプロファイルを国内で3D CADデータに起こしGibsonMontanaへ提供。その他のデータについては当時のMontana工場GMと開発責任者が来日された際に細かく計測し持ち帰った。

今回のプロジェクトにおいてはイベント等でMontanaサイドの責任者が来日される予定もない上に変更希望点が多く、文書や写真だけでの指示に不安が残る・・・このままでは理想のモデルは完成しないだろう。ならば…

MONTANA工場まで本物の1964年製J-200を持っていこう!

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Episode3 First Contact in Montana

2013年10月某日。「熱い思い」を伝えるべく、当社Gibsonアコースティックチームのメンバーを代表し私、岡崎が(当時はDr.Sound店の店長)デイバック一つ、傍らにはハードケースに収められた1964年製のJ-200を携えモンタナに飛んだ。エコノミークラスでトランジットを含めると約20時間!窮屈な座席でのロングトリップに腰は悲鳴を上げ、睡眠不足で意識朦朧となる中、我が1964 J-200はCAさんの計らいによりファーストクラスのクローゼットの中でゆったりと快適な旅を満喫した・・・(*5)

(*5)この1964年J-200はThe59と同じくアニマル池森氏の私物。万が一置忘れでもしたらその鋭い牙で私の首元は食いちぎられていたであろう。実際モンタナに到着後、急遽予約してあったホテルに宿泊できないトラブルがあった。理由は近くにサーベルタイガーが出没したからだそうだ。ロッキー山脈にほど近いモンタナらしいエピソードである。英語は全く話せないが、池森が来たのか?と聞いてみたところ、モンタナスタッフたちは笑ってくれた。言葉の壁を超えるアニマル、恐ろしい男である。

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Montanaで毎回我々の窓口になってくれるのは開発/マーケティング/営業MGRのRobi Johns氏。いつも我々の無理難題に対し、前向きに検討してくださる強い味方!作成したオーダーシートを元に机上にあげられた実機を前に仕様確認は進む。

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超弾丸出張の為にミーティングはかなりタイト。Gibson側からは1964 J-200を精査する為に「実機を1ヶ月ほど預からせて欲しい」との依頼!日本は真夜中なのを知りつつ持ち主に国際電話し、得た回答はしおらしく

「やさしくしてね・・・」

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Episode4 Comparison

帰国後、Gibson Japanを通じて届いた何パターンもの見積書と睨めっこしながら何をどこまで再現するかの社内議論の場を幾度も設けた。仕様を妥協すれば買いやすい価格に収めることも出来るがそれに意味がるのか?いや、そこまでこだわった仕様にどこの誰が共感するのか?値段が高くなりすぎる!答えは無い。前例のない挑戦なのだから。

ここで写真を参考に現行品と1964年製J-200の相違点を比較してみたい。

1.ボディ厚の差

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写真左:1964年製J-200
写真右:2006年製1960’s J-200
【 1964 】 【 2006 】
ネックジョイント部 102mm 95mm
クビレ部 110mm 115mm
エンド部 120mm 120mm

本写真では分かり辛いかもしれないが、数値にしてみると上記の差が存在する。ボディ厚の差は確実にサウンドに影響する重要なポイントであり、特に低音出力に差が出る。

2.トラスロッドカバーデザイン

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写真左:1964年製J-200
写真右:2006年製1960’s J-200

太い白枠は一緒だが、センターに"CUSTOM"の文字がバーティカルに入る。

3.Tune-O-Maticブリッジ上のサドル(駒)

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(*6)上の写真は1964年製J-200、下が当時現行モデル2006年製1960’s J-200

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1961年から採用されたTune-O-Matic Bridge。(元々はLes Paul Modelのパーツ)近年"Japan Limited Model"(*7)としてリリースされている60s StyleはTune-O-Matic Bridgeを搭載しているのだが、サドル(駒)の材質がナイロンから金属に変更となっている。また、Bridgeを支える両サイドのスタッド(ネジ)もサイズが異なる。※スタッドサイズは1964年頃まで大小が混在。

(*7)Japan Limitedはギブソンを特に強化していますよという証であるFIVE STAR DEALERのみオーダーする事の出来た日本限定モデルの事。有名な60’s J-45EBや記事で触れている60’s J-200などがあった。

4.バックのセンターストライプマーケトリー(寄せ木細工)デザイン

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上が1964年製J-200 、下が2006年製1960’s J-200

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1964年製の方がかなりシンプルなデザイン。翌年1965年になると若干変更がある。

5.ブレイシング構造

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現行品はサウンドホール内部左右に嘴(くちばし)のような張り出したブレイスが存在。モンタナでもミーティング中に発見しその場で変更点に加える。効果は不明であるが、1964年製には同様の場所にフラットのブレイスが存在。

6.ワッフルバックチューナー

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上が1964年製J-200 、下が2006年製1960’s J-200

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1962~63年頃から採用されたのがKLUSON製のWaffle Back Tuner。1968年にはGROVER Rotomatic Tunerへと変更となる。近年の復刻版は60年代後半を意識しているのかもしれない。

7.サンバーストの風合い

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上が1964年製J-200 、下が2006年製1960’s J-200

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経年変化の差はあれど、1964年製の方が赤みの入った3トーンサンバーストであるのに対して、近年物は縁の黒味が強くて太く、2トーンサンバースト。

8.ピックガードの材質およびデザイン

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写真は上から1964年製J-200 、リミテッド1960’s J-200 、J-200 Standardの順

現在のJ-200 Standard採用のPGは塩ビ素材で絵柄はプリントになっている。ピックスクラッチ等で絵柄が消えたり薄くなったりする事はないのだが、質感に差が出る。現行の復刻版1960’sJ-200に採用されているPGは厚み/材質/エングレイブされたデザイン等、かなりの再現度といえよう。写真では分かり辛いが、復刻版PGも花のデザインは黄ばんだペイントになっており、ヴィンテージテイストの演出に成功している。

9.3ピースメイプルネック

1962年製に2ピース/3ピースが混在しているが、基本的に1960年代は3ピースメイプルネックだったJ-200。現行品においては全てのJ-200モデルで2ピースメイプルネックを採用。

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上が1964年製J-200 、下が2006年製1960’s J-200

Episode5 Second Contact in Montana

2014.1月末、予定より2ヶ月遅れでデータ抽出の為にモンタナ工場へ長期出張していた1964年製J-200が帰ってきた。

2014.3月某日、今度は再三登場する池森がプロトモデルの進歩状況確認の為に渡米。(*8)

(*8)池森「俺がモンタナ入りする時はいつも雪なんだよ、寒いから代わってくれ夏に行かせろ!」私「逆に自分は夏ばっかりだから雪景色見てみたい」

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まだネックとボディがジョイントされ、塗装された状態でしかないプロトモデル。オーダーシートを確認しながら、細部の仕様について改めて指示。
これまで我々がリイシューモデルをオーダーし、一番苦労したのがカラー指定。なかなかこちらの思いが伝わらず、ダメ出しは当たり前。しかし、今回は一発で…良い感じである!

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Episode6 Proto Model到着

企画立案から9ヶ月…2度のGibson Montana工場訪問を終え、仕様が決定し待つこと3ヶ月…この9ヶ月の中で何事もなくスムーズに、仲睦まじくプロジェクトが進行した訳ではない。見積に絡む仕様決定の段階では弱気になる者も現れ、立案時の目標を見失いかけスタッフ間に険悪なムードが漂う時期もあった。仕様/価格/納期、実際に組み立てているのは国内ではなく、遠く離れたアメリカ…リアルタイムでの情報は入ってこない。我々の頭を悩ませ、不安にさせる要素は幾らでもあった。

(*9)主に池森は完成遅れに怒り、私がなだめる。これを犬のしつけ業界ではハウスと呼ぶようだ。

そして6月某日…待ちに待った念願のプロトモデルが到着!

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早速、岡崎と池森は冷静さを極力保ちながら、目の前にあるやっと出会えたJ-200"The 64"プロトモデルと対峙した。息を呑み、ブラインドデートの相手と初めて会うときのような緊張を感じながらケースの蓋を開けた。特有のボンドの匂いと共に表れたNew King of Flat Top!
とにかく…かっこいいのである!

ギターである以上、音を奏でる道具(楽器)である以上、その音質/音色が重要視されるのは至極当然。我々も過去に遡って仕様確認し、オーダーシート作成する際、まだ「聴こえない音」に「希望」という思いを馳せる。
しかし!「ルックス」もオーナーの所有欲を満たしてくれる重要なファクターである事を否定する者は少ないだろう。憧れたミュージシャンが使用していたギターと同じモデル名のギターを手に入れても、数十年の月日を経てモデルチェンジが行われ、カラーリングや仕様が異なっていても当然のこと。

だが、我々Japaneseは「古き」を尊ぶノスタルジック民族なのである。(だと思う…)その思いを過去のカスタムオーダーモデル達で追求してきた訳だが、Gibson Montanaサイドになかなか伝わらず、「文化の違い」に毎回困惑した。が、今回は我々の期待を裏切り、

一目惚れするほど格好いい!

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#1 バックのセンターストライプマーケトリーは当時のデザインを基に新たに復刻!

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#2 3ピースメイプルネック再現!サンバーストのグラデーションが非常に美しい!

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#3 トラスロッドカバーの"CUSTOM"バーティカルロゴは新規にGibson Montana工場で作成。

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#4 諸事情によりKluson Waffle Back Tunerではなく、GoldシャフトのKluson Keystoneタイプペグを採用。

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#5 クローズドマスタッシュブリッジ上のTune-O-Matic駒はTUSQ製(人工象牙)。両サイドの大きいスタッドは1964年装着のモノから採寸、金メッキ処理済。

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#6 メイプル材の側板はエンドピン部でジョイントされているのだが、近年のGibsonアコースティックにおいてメイプル、ローズウッド側板仕様のジョイントは強度を保つ為にセルロイドを噛ませている。1964年当時にこのセルロイドは存在しない。(#6-1 pic)
商品化に向けて強度を保ちつつ、当時の仕様の再現が可能か、Gibson Montana工場にて検証中。

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細部の検証/確認が終わり、いよいよサウンドチェックである。おもむろにピックを弦にあてがう池森。特にそう決めていたわけでもないが、岡崎との目配せがまるで合図かのように、重力に任せて弾き下す…

「ふ、太い!」

予想以上の音圧に震え、メイプルジャンボボディが繰り出す独特の空気感に驚愕!

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確実に現行品とは音の厚みが違う!これは変更したボディ厚に影響されたものであろう。ナイロン駒の代わりに採用したTUSQ製の駒もタイトなメイプルサウンドの実現に一役買っているのは間違いない。
池森と岡崎はかわるがわる1964年製Vintage J-200とNewcomer "The 64"を弾き比べ、湧き上がってくる興奮を隠せないでいた。

100%の再現は当然出来やしない。「予算」の関係もあり、皆様にお求め安い価格設定も大きな命題だった。ただ、自身を持って皆様に言えるのは…

「COOLなJ-200が生まれた」

J-45"The 59"に続く我々の[Second Try]は形になり、今秋より50名の腕の中で昇華を迎える。

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ここまでが当時の特集に加筆したアーカイブバージョンです。こうして完成したJ-200 The64でしたが、我々と同じかそれ以上の情熱を持ったJ-200ファンは多く、心配をよそに絶好調のまま一気に完売までたどり着きました。再生産版もリリースしては即売が続く「確かなモデル」と自信を持って言えます。残念ながら次の発売は全く決まっていませんが、プロト完成時に2人とも「まあまあ泣いたなあ、」という事を改めて思いだしました。

やらなくちゃいかんモデルですね。

【Gibson The59 J-45 History アーカイブ】クロサワオリジナルモデル開発秘話、そして次なる構想~Road to 65th~








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