くちなし

花を散らしたような模様が
静かに泣いている
朝から夜その狭間で息をして
僅かに擡げた首が伸びる
曖昧な言葉を舌に乗せ
身を捩ると泪は流れてゆく

朝霧の立つ軒先に吊るした
花束に隠した薬指

夜半、薫りばかり思い出すのは
虫の知らせにも似ている
背後で落ちる乾いた音
花の隙間を縫うように現れ
わたくしは逆さになって揺れていた

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