Twitterに書いた言葉たち(891~900)
891)強ばった身体の中で
骨が軋んで音を立てる
肉体を夢の前で脱皮して
入水すると魂は魚に擬態する
尾鰭が心地好く翻り泳いでゆく
(あなたの名前はここには必要なくて)
安堵に身が解れてゆくと
今度は浮上して風に揺蕩う蝶になる
遠くへ運ばれてゆくと
森の土の上に着地する
次は根を張って立ち上がります
892)右目の奥で残忍な光が
蹲って占拠している
波が切り裂くのはこんな夜
赤い電車が目の前で花びらに変わると
白昼夢は進行しているのでしょう
脳の襞に刻まれた憎悪にも似て
心象はくす玉でした
手練の仕草を好んでいた男の
愛した女の面影を横顔に記して
外から枯れ落ちる詩は甘やかに薫っていたのです
893)夜には逃亡する名残りを必死で掻き集めて尚、透明水彩を以て示した。
あなた のなまえを
きごう としての かおを
わたしたちは新たに設定
(アイコン)理想化
i(イコン)統御する
わたしの かおを
なまえとしての きごうに
点滅画面は軈て消滅するだろう
予言は予測通りに置かれた
/次は不透明水彩で
894)ただ静けさを望むなら
此処でなくても良くて
作られた森林にも酷似した
安寧に語りかけている
黒い箱庭で紫の水晶に
建築家には彼を指名して
卓上理論を展開する
揺らぐ紫煙を横目に
尾鰭は右から左へ滑ってゆく
背骨が掘り起こされると
彫刻した首が持ち上がる
あなたの前で霞む景観が崩れてゆく
895)グラスの中で泳ぐ向日葵
胡桃が枯葉と落下を恋しがる
あれは妹ではなかったか
音もなく風に向き合うひたむきな
その瞳の奥で星が散乱している
(季節を殺してゆくのは、それが流行だからではなくて?)
彼女たちの服装は際立っていた
枳の棘に包まれて笑っている
萎びた葉の裏で蝸牛が絵を描いていた
896)庭先でミントがモンスターとなって
暴力的な侵攻を進めていた
緑の羽音を呼び寄せて
きいろの天蓋に薬を塗った
危険を報せる為だけの警笛を
拒んでいたのは誰?
揺らぐ地平線を縫って
ボビンの月が顔を出した
(あなたのことはゆるさない)
亡者は列に並んでください」
整列させて頭を数えてゆく
897)空っぽの儀式を始めると
あらゆる目論見が弾け飛ぶ
(ここには何も無く
ここには何でもある)
在り来りな発想が夥しく産卵する
一粒ずつ絶妙に艶めいて
虚実でさえ結実してゆく
味蕾が震えるほど魂が懐かしむ
嗅覚が憶えているのだろう
あなたを前にして理性を脱却する
夜を統べるもの
その眷属の血へ
898)不要な耳は腐敗している
薬指から届いた
光は数を増して拡散
眩し過ぎて暗むのだから
そっと目を塞いで辿り着く
聴覚は捉えているのだ
波音に紛れて信号が送られ
砂もいつしか灰から
華美な姿を浮き彫りにした
爪先から始まって
貝の中で閉じてゆく
異物を吐き出したらまた
終わりを口寄せする永劫
899)頭の下で枕が暴れ出す
睡魔が退散するので
今夜も果物酒を呷った
赤い夜の気配が漂う
岸辺に辿り着いた娘を
見守りながら指先を走らせる
たった一行の為のエチュード
そしてあなたを慕うほどに
重く静まってゆく青い朝
あなたの所為にするだけで
すくわれた気がしている
絡まった糸はちょん切るだけ
900)背もたれに凭れて
一般的な幻を視ている
背表紙に憧れを当て嵌めて
中身は不揃いな背格好
(ここには140文字の言葉だけ)
気楽に気軽に吐き出す
即席麺の待ち時間に鳥渡
煽るように扇情的な色彩で
「主体が変わってゆくだけの空間を」
厳密に言うこともなく
曖昧模糊に濁しもせず
滞りなく終わらせる譚詩
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