教室の宿題(埋没編)
黒い血液 黒崎 水華
食材に手を伸ばして真っ二つ
柔らかな肉から流れ出る黒い液体
手を染める黒
夥しい黒
現実を侵食する黒
贖罪に手を伸ばして真っ二つ
皮を剥いた果物から滴る黒い液体
手に触れる黒
瑞々しい黒
現實を侵蝕する黒
異形のめ 黒崎 水華
墨汁 したたる 半紙の上 夜の血液 混入する
長い髪が邪魔をする」 古書の森を游ぐ紙魚
いつも黒い血が滴って邪魔をする
赤い血のはずがいつも逆立って渦巻いて
酸化して燃えて焦げて冥い道の上を這う
感情を吐き捨てて主語もなく吐き出して角が生える
夜半に顕わる悲哀と憤怒で紙面は黒い
長い髪が邪魔をする」 古典的な言葉の海で横切る魚影
(あれは 女の翳ですよ)
静かに 静かに狂う女の吐露された狂気だけが置いてある
墨汁が今日も蠢いて這いずっている
見下ろしている眼
見上げている芽
ただしずかに凝視している女の白い顔
白い部屋の壁に夥しい遺書
黒い泥の中から白い骨の花が咲く
上記二作は「黒」をテーマにして十行で決める、と謂うものでした。
[ひたひた]
黒崎 水華
恐怖は静寂の波を伴ってやって来る
呼吸)(息をする(呼応する こと
観念として存在している 言葉から
剥離する呪詛にも似たひかり
「呼び名は最初に憑ける呪いだから、」
点滅が継続する限り繋ぎあえた
産声はあがり続け
同時に最期の吐息も聴こえる
不可視なものを可視化して
不可避な可否による応答の足音がする
[吉祥果]
黒崎 水華
生命の息吹が吹き込み巡り
まだ時間が流れ続けている
(根源に立ち会うと同時に告別を孕む)
母は子の為にのみ母となり
裏腹に子の所為で鬼と化す
十センチの道を抜けた産声
白い血液は垂れ流れ続ける
(肉体に触れ合うと同刻に惜別を溢す)
血脈に結実した示唆を含み
綻びは滅びにも似て 苦い
[呼吸]
黒崎 水華
生者と死者の狭間に立つ
此処は(とても静かです)
老いてゆく(エトピリカが)置いてゆく
俗世から数センチ浮上した根無し草
緊迫は真昼に宛てがわれて銃口を引く
吊り下がったてるてる坊主の㊦(血溜まり)
肉声は仮面を被らないのか?」
否、思惑は重度の化石現象だ
飽和した境界線から祝福の鐘
幼子の産声が反響するばかり
上記三作は「生きる」がテーマでした(生きるとは?/遠い目)
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