Twitterに書いた言葉たち(951~960)

951)皮膚で摩擦が言葉を交わしている
床の冷たさが魚の鱗を真似て
立ち上がってゆくのを視る
肉体は細部に宿る雷鳴を聴くと
反射する声に合わせて打った
柏手から今日へ明日の耳を持ち合わせ
待ち合わせた昨日の線をなぞる
齧った月の皮を残して
飲み干された酒精の残り香
夜な夜な呼応する報せ

952)雑踏に紛れた詩篇の渇き
喉笛が鳴っている
あれは女の声ではなかったか

夕涼みしながら川を見下ろすと
水底で膝を抱えたお前が視えた

隣りに立つ白い服が風を含んで
音もなく膨らむと
瞬く間に攫われて消えていった

時折、お前を思い出すと
水底に蹲るのは
俺の方だったと見間違える

953)亡霊と幽霊と亡者の聲を
分別をつけるように
切り揃えてゆく夜半は
何者にもなれない俺が煮詰まって
お前の顔をしている

グラスの中の氷が過去を反映する
映画の無声で蘇るのは
俺ではないのか
預言者の指先はゾッとする程
冷たい死者の気配がする

切り取られた顔はお前ではなかったか
声が罅割れる

954)空で放し飼いしている獣
名は体をあらわす
それで、君は満足か?
背後で蠢くと
人の形に酷似して
「生きた心地がしないな」
声だけが落ちてゆく
鳥の影が過ぎると
わたしはお前の顔をしていた

955)麻痺してゆく指の
肉と肉の間の骨が軋む
小さな部品を取り替えて
誤魔化しながら過ごす
「あなたにはあなたの悪意があって
それに目を逸らす内はまだ頑なだ」
「霙を鍋の中で表現すると
芸術点は高いのです」
噛み合わない会話を通じて
少しずつ離れてゆく
接点の惰性で尾鰭は翻り
羽搏きで傅いた

956)骨で引っ掻くように
粟立つ皮膚が予感する
秋に刻んだ秒針の神経を
落とした枯葉で見失う
歯痒さを敷き詰めた靴音が
底の方で石に当たって
微かに削れてゆくのが残念でした
回復は放置ではない
悪い部分を切り捨てて腐敗を防ぐと
切り捨てられた部位が
遠くから喚いていたようだ

957)物干し竿に干している
真昼のユメが溶けていた
やわらかな曲線の寝息と鼾
それからオレンジ色の空
雲を添えていたのは
誰しもやりがちな行為だから
それを好意とは呼ばない
鄙びた野草が繁殖してゆくと
裏庭で小動物が群がった
残されるのは骨だけ
それも小骨の譫言だった
また明日からやり直し

958)横たわると伸びるか溶けるか
皮膚から鱗ははらはらと零れて
透き通って消えてゆきたい
川の向こう側で手を振っている
自分の顔がいつも視えない
転んだ足元の花が散って
綺麗な押花の標本みたいだった
(あなたの声を奪ったのは誰?)
他人事みたいな対応で延命は出来ない

959)鯨の雲が迎えに来るから
飛び乗って、と掛け声のタイミングを
一人だけ逃すような時間

(あなたの正義感に押し潰されるのは
結局あなた自身なのだから)

二つの穴が足元にある
二つの穴に種を蒔く
「歓喜せよ」
あなたのいない春が来る
わたしのいない春が来る

960)侵入するようにゆっくりと
這い進んでゆくようにゆっくりと
あなたの目から私たちは
脳へと進んでゆきます
(成功です)
着地した片隅の信号をゆっくりと
置き換えてゆきました
気憑いたかどうかは夢の中で
答え合わせしましょう

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