Twitterに書いた言葉たち(771~780)

771)向日葵の種がこぼれる
邪悪な太陽が黒く燃えている
見えていたものが(みえていないのだ)
容易く折れてゆく茎を咥えて
飛んだつもりが落下する
横たわった骨から
養分を啜って芽が出ると
煩い程の湿度が重く覆い被さる
不可視のものを幻視し始めるとき
お前は幾度目かの死を生き始める
安寧の明滅と共に

772)赤裸々な告白を破いて
スカーフには別れの言葉
屋上の階段には黄色の目印
「小さな遊園地のケルピーだったよ」
水面ギリギリの駆け引き
か弱いイメージの塗り重ね
ツノはくれてやったから
残りは口の中で暴れ狂うだろう
花壇の下で目覚めると
指は水掻きの付いた蹄で
鬣は鱗の隙間から生える
青緑の馬

773)くぐもった顔なので声も同様です
薄暗がりで恐れていたのは
「誰ですか?何を、ですか?」
怒りの矛先に気付いて爪を噛むと
萎びた花粉が淫らにみえる
お頭の具合を訊ねるにはお似合いの
お上品な軽蔑を添えて
ゆっくりと沈んで
ゆっくりと剥がれて
ゆっくりと貪り
肉は無くて骨だけで休みます

774)果肉の甘さだけで種ばかり残った
食べ尽くすには足りずに口が尖る
根源を探るとあなたは慈しむばかり
ここは新緑の呼吸があふれて
四月の無知を孕む
記号の明確化で区別されると
あなたたちの選別は終わります
一回りする頃に
肉体の結実した花々が
顔を一斉にこちらを向きます
圧巻と息巻いて唾を吐く

775)腰にいくつも卵を抱えて
おかあさんの顔で
おとうさんの体を
受動的な復讐は幼稚な顕現で
優柔不断な怒りは反芻している
、だけを繰り返すばかりなのだから。
模様は柄で迷彩化している
喉仏を有難がって
灰の中から見つけ出すと
嬉しそうに笑っていた
おとうとの耳と
いもうとの鼻が
仲良く並んでいる

776)投げやりな返答があって
扁桃腺で苦瓜が実る
土のにおい
腐ったさかなの
転げてゆくクチバシ
黄泉竈食だったかしら、
叫ぶのと呼ぶのが同時に訪う
いつもそうなの、ね
タイミングが悉く賽の目
河原で街角に遭遇する
黄昏に点滅信号
注意を促すだけの
甘い、腐る手前
嗅覚の予言から身内の腸が示される

777)内緒話が花咲くと
あの婆さんがやって来て
ちょきんと鋏で切って
持って帰ってゆく
それをどこに?
それを何に?
そうして明くる日
あの婆さんは嬉しそうに
ちょきん、と鋏で切って持ち帰る
その花の顔は誰だったのか
軽くなった自分の首から上が
鏡に映らなくなった
仕方ないので代わりに
小石を置く

778)積み上げた罪の数が
年齢を三倍過ぎたところで
迎えがやって来た
彼は薔薇の花びらをくるりと巻いて
灰にしてゆくのだった
憧れは遠くに置いておくと
ふくよかな薫りを漂わせるのだ
重なり合う書物から
抜け出た魂たちの墓碑銘を
囁くように読み上げる
彼女の横顔が停止し
優美な死体は完成する

779)折り返し電話が鳴ると
外ではあんなにも煩かった虫たちが
静まり返っているので
冬の気配を模倣した相手が
受話器越しに吹き込む虚実が
恐るべき重さで収穫される
手の上で受話器は震えていた
その冷たさが距離を忘れさせて
子どもの頃の約束をちぎる
「おかえりなさい」呟くと
窓には無数の手形がある

780)かみの切れ端があって
形而上で捉えるのと
やっぱり違うんだろうな
あなたこれ何にみえます?
男は火を近付けてくる
それは乾涸びた中で見つめ返す
息が詰まる思いを憶えて
背骨には釣り糸が嫌な音を立てる
「吊るされるようですよ」
女は壁を眺めている
その中にわたしだったものがある
その奥には、

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