Twitterに書いた言葉たち(911~920)

911)利き手が多弁になると
塞いでゆく明滅の顔
鬼瓦が燥ぐのは
雨音に宿る雷鳴の所為
仕草が美しいのは
愛を孕んでいたからだ

空白を浸した水色に
早実が冒した薄紅に
赤と青の葬列に並んで
白い仮面の下で悼んでいたのか

明るくなる頭上に砂が流れると
雲は菫色の秘密を唱える

912)亡骸に土をかける
布団の温みを思い出して
かなしみは球体の記憶
目の奥で揺れている
貝のような気配
恐ろしいのは断絶すること?
それとも継続することか、
耳の奥から波羅蜜
寝言にも似て揺蕩う心地良さ
増えてゆくのは嬉しいのか
煌めくのは銀の月
星の粉を飲み込んで羽を生やした

913)片手間に走り出す
黄色の電車に
夏を詰め込んでいる

緑の牧場で黒い馬が駆ける
夜の気配から闇の化身
転生する頃には根を張って

歯列を確認すると
ブラシの隙間から覗く目
白い蝶のたまご

膿んでいるのは誤謬
恐れを孕んで
穏やかに産み落とした

914)球菜に包んだ肉が呼ぶ
声が頭上から滴る
夢まぼろしの類いです
伝わるのは点滅信号の合図
回路はまだ働いている
シナプスの丁寧な仕事から
少しだけ逸れた道筋
金色のスープの底では
片言に煮立つ音
包丁の背が語るのは
驕りではないのか
ゆっくりと引いた手から
血が垂れてゆく
それは茜色の西の空

915)関節に届いた順から
視線は追跡しています
折れた茎は骨でしょうか
緑に晦い前世の海で
浮かび上がるグロテスク
肉塊に名はなかった
手足の折れ曲がったところから
戻ってゆく鶴の祈り
七色に見えていただけの願い
やわらかく開いてゆくと
シンメトリーに際立ったから
左右不対称に崩す事で均衡にした

916)針がぐるりと一巡りする合間に
言葉をぐさりと刺してゆく
単純作業の釘打ちは呪いのようで
音もなく近寄って声もなく囁く
まるで密やかな呪いにも似た儀式
自分の知らない自分を
誰かに反映している
「気配からは忍び寄るのだ」
「一長一短ではない一朝一夕でもない」
涙は色を奪われて溢れる

917)蚯蚓脹れが蠢いている
負け犬の遠吠えが終わり
季節は押し潰されて咲いた
バケツの中に花の顔だけ
詩篇を埋めるように摘んで
腐乱した夏に死体は立っている
大人しい程の従順さで
誰も此処には踏み込まない
左手の薬指で絡まる意図が爛れ
ゆっくりと差し込んだ光が蕩ける
安堵の息を残して骨は睡る

918)嗅覚は鈍っていないか
犬の吐息の色をして
世界は閉塞していないか
薔薇色の幸福を口に運んで
死んでくれないか
願わずとも遅かれ早かれ
芽吹いている悪意の目
口や耳も埋めておいてくれないか
不要な産物を犠牲に
登り詰める心算ならば
何処へも往けないのではないか
従来通りに楔を打つと
腫れる聖痕

919)死の気配は痙攣と共に訪うと
皮膚の上で恐怖は滲んでゆく
あなたの声はくぐもって
暗褐色の夢をみる
手放す瞬間の恍惚と
滴ってゆく重い肉片が
人生に背いているようで
感情さえすぐに薄れるから
無の境地で遮られた感覚だけ
途切れる最期を伝えていた
引き合うのは食慾で
閑雅な午後のゆめ

920)痛むのは肉体のどこか
気配ばかり探っていると
霧散してゆくだけです
鈍った脳が誤作動して嘯く
甘やかな灰色から
歪んだ声を聴かせて」
片側交互通行の自戒のようで
滞りがちな流れを汲んで
孤独から時間を浪費している
その洞穴の空疎な眼差しを
真摯に受け止めた獣の目
「傷んだ事を気の所為にして

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