Twitterに書いた言葉たち（６０１～６１０）

６０１）密猟された言葉が
Twitter(140文字)の密室で
静かに解体されてゆく
微生物の食事の如く
緩慢な触手が蠢いている

６０２）(あなた)の(日常語)を
分解してゆく(視線)から
(見えない)存在を(見える)ようにする

６０３）脳内で培養液に浸かって
幻想は無意識に育つ

６０４）ピピピーピピー
ツーツーツツー

機械音楽家の寝室
脳波が乱れています

「プログラムを
正常に立ち上げてください」

６０５）小規模の消去法
悉く蒐集されてゆく
燃やされる為に
生み出された訳では無い。

６０６）無菌室に美しい剥製を隠した。夢のような腐敗臭を誤魔化す薬品の匂いと白い皮膚と長い睫毛。椅子に座る彼女の周りを密封する個室の周りには百合の花が咲き乱れている。(死んだ者の見る夢は現では無いのか？)声は誰の声音なのか？内臓など生々しいものを一切排除された彼女の閉じた瞼が震える。
[覚醒]

６０７）幼少期、骨を拾うと胸が高鳴った。少し黄色みがかった白い骨、生成色の軽い骨。校庭の片隅で何故かそれは落ちていたので、木の枝を拾うように拾った。それから杖のような枝も拾う。綺麗な羽根も拾う。持って帰れないので校庭の隅でそれを捨てる。拾ったものは自分のものにはならないのだから。
[散策]

６０８）風変わりな人物が東の方角へ通り去った。少しすると、西から男が来て「変な奴が来なかったか？」と訊ねるので東へ行ったと答えた。西から来た男は東へ去って行った。少しすると風変わりな男が来て「変わった奴が来なかったか？」と訊ねるので東へ行ったと答えた。これが繰り返し続いている。
[同じ顔]

６０９）間接的に貴方を食べる
庭の池に蟹が住む
死んだ貴方を蟹が食う
その蟹を私が食う
間接的に私を食べる
庭の池に蟹が住む
死んだ私を蟹が食う
その蟹を貴方が食う
混線してきたアナタを
間接的に食べる蟹が池に住む
[池に住む蟹]

６１０）遅れてくる雨だれの音色
叩いた弦が震える

花開く幻影の奥から
生命に名前がつけられた

貴方の指先が消えるまで
あとどれくらいの時間が許される？

美しいものたちは音もなく
此処から過ぎ去る

地面の中で温まった
私の胎児が転生を繰り返す

隣りの罪人が灰と化す
骨が産まれる夜に死者は戸を叩く