現代詩フォーラムに投稿した詩:7

【傾聴する額縁】

夥しいツノの群れが
君の皮膚の上を這ってゆく

生焼けの空が爛れている
膝の上の夕日を何度も剥ぎ取る
未だ白い三日月を突き刺して
悼みが止むまで雨を飲み込む地面
爪先で詰って
ポケットの中の鍵を慰める

知恵熱が発している声
重い扉 鴉の鳴き声 電車の走る音

悲しみ 哀しみ 孤独 カナシミ

壁の染みが浮かび上がってくる
人の姿で浮かび上がってくる
少しずつ少しずつ
近づいてくる

気が触れる寸前の意識に
狂気が囁く
嘔吐く喉が灼かれて辛い

木菟の鳴き声が
遠くで呼ぶのだ
アルコールを漂わせて
亡霊は泣くのだ
幽かに光る
螢が池に浮かんでいる

(かわいそうに、ね)

言葉ばかりが軽々しく落ちる
水音をバックグラウンドで拾う

耳の奥から虫歯菌が労働く音がする
スルスルと走りながら
逃げ惑う翳
逃げ水の前口上で
そっと紐を結び直して
壁一面に伸びる蔦は蔓延る

風見鶏が屋根の上で傾いている

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