Twitterに書いた言葉たち(801~810)

801)骨に彫刻を施して
月は一層滑らかな光を宿す
半透明な触手を排水口で飼う
淫蕩する夜更けのぬるい井戸の底
絡まり合う縺れた言葉の蔓が
喉の奥へ侵入すると
偏頭痛が挨拶のノックを繰り返す
左側が慈雨に浸って
右側が砂漠に突入すると
丹田は豊かな水の恩恵を受け
押し寄せるざわめきの中の一匹の魚

802)出たり入ったりする人格の発光
こんにちは
さようなら
こんにちは
さようなら
連続的な点滅にも似て
隙間にすべり込む善意
瑞々しさが跳ねると
言語化された意識の一端が
そっと絞められてゆく
こんにちは
さようなら
こんにちは
さようなら
瞬く間に連れてきた群生
こんにちは(憎悪を植付け)さよなら

803)人形のパーツに紛れて
あなたはそこに在った
些細な違いを指し示して
あなたはそこに在った
その顔だけ不鮮明であり
乾いた砂は水を飲み込み続けた
流れはみえない所で走ってゆく
あなたはそこに在った
明確な悪意として顔を持ち始めると
あなたはそこに在った
ゆっくりとただそこに
あなたはそこに在

804)途切れた糸を繋ぐと、歪に婉曲した
庭木は繁殖して暗く生い茂る
葉陰には果実の深い誘惑
虫を呼ぶための甘いにおい
枇杷、梔子、無花果、柘榴
小動物の来ない庭先で
拒絶は排他的だった
彼女の生身は樹木になり始め
雨は当たり前のように雷雨と化した
激しく/叩いて/濡らす/樹皮から
蜜は虫を/甘く呼ぶ

805)彼は娘を連れ出して
あたしはわたしを乗っとる
操縦権の剥奪が行われ
幻視が始まっていた
多重露光にみえている
その合間の曖昧な色を決定す?る
当然の結果?を介入!バグは呼応す?る
ゆっくりと化した文字のかお彼女
頭を振って追い出す
まともな人の出勤課題の提出
きちんと、しないと。
わらう口許

806)惰性が多くて厭になる
大きさか量でしょう?凡そは、だけど。
そっとしておこう、と
疑問に釘を打つ
格子越しに正当な傲慢さを
「あたし達、最強だったよね」
立ち上がれずに今は床と友好的
(誰にだって出来る)
それは出来た人の眩い科白
「謳歌したらご自由に」
時期を見極めて着水してください

807)明る過ぎて目が暗む
眼窩に闇を共存させて
渦巻く乳白色の血液
時折、彼女たちが頭の中を占拠する。
蛋白質の皮膚のきらめき
ときめきを装飾して
新しい戦闘服を探している
部屋の四隅にミラーボール
金魚の鱗にもみえる
使い古された泪のにおい
嗅覚ばかり触れている
明日にはまた脱却するだけの外側

808)眠る迄が今日だからね、
彼の羊を飼い慣らしている
適切なわたしの牧羊犬
起きたら明日だから、ね
再確認する昨日のわたしたち
猫の被り物を準備して
転ばぬ先の杖を実践する
140文字の打ち方について
彼は羊を育てている
わたしは「待て」と「行け」を命令する。
(多幸感で柵の中は満ちていた)

809)駆け抜けるとそこは鏡面に見えた
上下も奥行も狂っている
伸ばした腕が境界線で幾億にも見える
思わず引っ込めて立ち竦む
足元から腕が伸びてくると
逆さ吊りになって空に植えられる
逆立つ髪が樹木のようで
これが正解だとばかり行われる
あちこちから声のない悲鳴が溢れるばかりだった

810)換気扇が稼働して
働き者の鼠が駆け回る
外枠を用意して
怠け者の鼠が横たわる

限界値を設定したら
声は抜けていかなくなる
カラカラと回る音が空を切る
(もうこんな時間)
と呟くと実感は流れ出す
どこから湧いてくるのか

「虫の知らせでしょうか?」
声だけで現れる存在が可視化される
夜はおやすみ

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