Twitterに書いた言葉たち(651~660)

651)月光を齧った
しゃりっと砕ける
星を齧った
しゅわっと弾ける
太陽は齧らない
火傷するから。

652)【壁の中の森】
六角形の部屋
琥珀色の時間
(私たちに必要な永遠)
(私たちに必要な生命)
自然界の法則
紫色の花の蜜

壁の中で森を作る
(それは私たちの家だ)
(それは私たちの血だ)
「小さなひかりが差し込んで
やがて盗まれるだろうか?」

私たちは家を守る
私たちは森を守る
「私たちは何を守る?」

六角形の森の部屋
私たちの故郷
琥珀色の永遠

653)十秒以内にお答えください。
九、結ばれた口が開いてゆく
八、阿吽の呼吸
七、それからゆっくりまばたき
六、早鐘を打つ心臓から
五、植物は急速に育つ
四、蕾は膨らんで
三、開いてゆく
二、名前は何ですか?
一、魂にとてもよく似ている。
雨粒を湛えて呼応せよ」

654)悲歌の雄鳥はコンドルとなってまたこん春を迎えようとしていた。色鮮やかな花々の上を弱々しい羽音が過ぎる。太陽の下で旋回を繰り返し、狂ったように鳴いていた。枯れた古木に止まり頭上を仰げば、どこまでも空の牢獄は続いているのであった。雄鳥は知らない。世界の切れ端を啄む為の歌を」

655)[真っ赤な:虚実と虚飾
/色眼鏡で偏愛家]

男はペディキュアを塗った爪先
から愛撫を始める
習性と呼ぶ固執に於いて数分
言葉を剥ぎ取ってゆく

(真実)に辿り着く頃
それはひび割れた骨董品

美しい過去の亡霊と心中する
男と女の寫眞(遺物)です」

656)蟲が音を喰っている
その咀嚼は降り積もり
青葉の梢に抜け殻を落とす
地面に触れるや否や
空はひっくり返る

凪の時刻を過ぎて
蟲は去ったのだ
陽の光と共に
抜け殻を踏み潰して
人々は通り過ぎてゆく

657)ちいさな波動が生まれる
小宇宙の毛先
つむじ風が冒険した
海域の獣が吼える

658)脈々と受け継がれる
その液体
その流動
喉を滑り落ちていく

腹の底に獣を飼う

私たち(顔のない鬼)
一枚の紙/ひとひらの花弁
飛び散って見失う
影に怯えている光の群れ

獣は私たちの顔でわらう
獣は私たちの声でさきわう

659)噛み砕いたことばから
生ぬるく滴り落ちる
不快感を露にする生肉
骨が軋んでゆくので
嘴が啄んでゆくのだ
ゆくゆくは、展示される。

660)謎を残して消えてしまう
現象が起き
通り過ぎるだけ
事象は精霊の発生
嗅ぎ分けた先々から
腐敗してゆく物質
手掛かりは言葉ひとつ
足掛かりに言葉ひとつ

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