現代詩フォーラムに投稿した詩:1
【曲線の音色】
夏の夜の終わりに
妖精の輪に足を踏み入れた
短針を飲み込んで
長針を吐き出した
秒針の枯渇が凍結してゆく
三針の傷痕が開いてゆく
真白いシーツの奥で蠢く
化生に成りつつある獣
冷蔵庫の低い唸り声
魚眼レンズの海鳴り
白砂が靴の中で歌い乍ら
浜木綿の色が滲む
歌集を啄んだ指先
爪先は背表紙を蹴飛ばした
秋の早朝
静かに枯れ落ちる言葉
血生臭いのは疼く所為
白い魚の腹が月に成る
カサカサと剥がれる瘡蓋
エタノールの馨に含まれる
包帯の海は春先に咲く冬の芽
柔らかなキャベツの芯
赤い尾鰭が影を引き連れ翻る
睡りは厳かに
白昼夢に蕩けてゐる
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?