Twitterに書いた言葉たち(831~840)
831)香辛料が喋り出すと
晴れ間がまた曇り始めた
満月のまじないは熱に浮かされて
頭の中で弾けるポップコーン
遠目には梟に見えただろう
食べ終わる頃には三日月を磨いて
太陽を洗い場で水に浸したら
乾くまで待って夜明けが来る頃
マッチで点火してやると
空は澄み渡った水面が
丁寧に敷かれているのだ
832)不穏さを傾けて耳を澄ますと
いつも女の声でくぐもっている
怨嗟は時間で相殺するしかなかった
(返礼に毒を含んだ花言葉を、)
花壇の下で消化されてゆくと
膿んだ肉塊も栄養でしかなくなる
プランクトンが泳いでゆく
空気を満たした祈りが文字化して
ホログラムで確認できた
「その目と耳に注ぎ込んで
833)尾鰭を描いていると
微細な線が踊り出して
目の端に辿り着くその延長線
結んだ点を解してゆくと
関係性が目に見えて溶ける
骨のない部分がやわらかでした。
俯いて手を黒くすると
キャンバスは夜を迎えた
常夜灯に守られて目を細めると
鰓は月明かりに稼働する
基幹として眼が半分くらい占める
834)水平線に触れて
じゅわっと音を立てた
幻は歓喜して飛び回って
踊る爪先が月を蹴飛ばした
枕に植えた種が育つと夢が実ります
たんこぶをそっと撫でて
裏側に隠して誤魔化す
葉焼けに書かれた言葉を切り取って
シャーレの上に置いて寝た
瞼の境界で陰翳が忍び寄ると
あなたの寡黙さが引き立ちました
835)伝達は膜を通り抜け
中枢に刺さってゆくと
反芻する面影が迫ってくる
膠に混じった困惑が定着する前に
金箔を貼り付けてゆく会合
ピンセットの先で視神経が瞬く
誰かの睫毛を旋毛の方で見据えて
矛盾を無邪気に迎え撃つ
傍らに獣の腸が詰め込まれると
あからさまな周期を調整した
「金の液体で補完せよ
836)中性洗剤で成り立つ水場の独壇場
視線は刺激的な放物線
夏がやってくる前に
梅雨が蝕んでゆく円形の遠景
夕暮れに優遇した茜色の矛先
保護した下線を確認して
再度連絡を添付して送信する
非日常のファイルには未解決事件
鉈や斧が置かれた小屋の壁に隠し扉
密室では小説よりも現実的な秘密が溢れ出す
837)手首から先が家出して歩き回る
不便なので帰ってくるまで
違うものを当て嵌めると
空間が澱んで顕現するサカナ
巨体を靡かせて泳ぐと
あちこちに食い破られた穴が空く
釣り糸が光ったら雷鳴が轟く
慌てて帰ってきた手が元に戻ると
やっと本の続きを読むことができた
紅茶には矢車菊の青が浮かんでいた
838)空腹を憶えると時計はぐるりと
針を真横に打ち付け鐘が鳴る
鮮度を大事にしている
指定先が沈没したので舟を編む
静脈から目覚めたばかりの朝
動脈で微睡み始める夜
白は青く濁り黒く澄んだ湖面が
息の根を止めに腕をのばした
絡まって解けなければ羽ばたいて行く
平和の象徴が豆を啄んでは目を狙う
839)無菌室では成長しない
ことばを篩にかける
捏ねて寝かしつけてから
形作って焼くと出来上がるのは
香ばしい生地の対談だった
夜の旋律を珈琲は吸い込んで
香り高く色彩を調整した
朧気に思い立つと椅子は倒れ
ペン先は菫色の睦言を吐き出した
至福は脳に花を咲かせて
不気味にみえているだろう
840)ハンガーにかけた皮膚を着込む
朝方は少し冷えて花が凍った
前歯に詰まった紙片を取り除くと
鏡に映る部屋が正しくみえた
怪魚が横切るとジンクスが過ぎる
黒く窪んだ顔を抱えて歩いてゆく
ねばつく風船を発見した
それを新聞で包んで鞄にしまう
時間が経つと死んでしまうから
なるべく急ぎ足で帰る
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