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後発薬メーカーが生き残るために、後発薬を手放すことだってあるかもしれない

非常に気になる内容の記事がありましたのでシェアします。後発医薬品企業のよる問題が頻発する背景についてまとめられています。

拡大を続けてきた後発医薬品ビジネスが岐路に立たされています。相次ぐ品質不正は市場の歪みを浮き彫りにし、薄利多売を基本とするビジネスモデルの限界を露呈させました。使用割合が8割に達し、量的拡大に依存した成長が見込みづらくなる中、各社は事業の再構築を迫られています。

この話は、コンプライアンス違反といった言葉だけで片付けると見誤ると思っています。その背後にある理由について考える必要があります。

医薬品は、私たちの健康を維持する上で欠かせないものです。そのため、しっかりとした品質での供給が大前提にあります。これが崩れると、最悪死に至ったりするケースすらあります。なので、この問題をしっかりと理解し、打ち手を打っていく必要があると考えています。

この不正製造問題の背景は、このように説明されています。

ジェネリック医薬品の需要増に伴い、生産数量・生産品目数も急増したが、これに対応できる人員、設備が整っておらず、逼迫したスケジュールの中で業務に追われ、出荷試験不適合の件数も増加していった」。日医工が公表した外部調査委員会の報告書は、不正製造が行われた背景をこう指摘しています。

では、なぜ生産すべき医薬品数も増え、人員やスケジュール逼迫による不正製造にまで至ってしまったのかと言うと、ご存知のようにジェネリック医薬品利用の促進が強力に進められた経緯があります。これを読むだけでも辛くなるような内容で、ちょっとした地獄絵図の様相にすら感じます…

生産や品質管理の体制整備が追いつかないほど需要が急拡大したのは、国があらゆる手を使って普及を後押ししてきたからにほかなりません。国策で拡大する市場には新規参入が相次ぎメーカー間の競争も激化。シェア獲得を重視した安売り競争が繰り広げられ、それが薬価の下落につながるという悪循環に陥っていきました。

そして追い打ちをかけているのが、薬価改定です。

薬価の極端な引き下げにより、共同開発を行わなければ採算がとれない、リスクに備え、安定供給に資する生産体制を構築するために必要な利益の確保が難しいといったケースが生じる可能性があるのではないか」。

2021年6月に書いたnoteでも書いたのですが、これから薬価がどんどん下がると同時に、品質管理水準が高まるという状況の苦しさを(沢井製薬社長が)滲ませています。これは本当に問題だと思っていて、事業継続が難しくなるメーカーが出てくる可能性にも言及しているとおりで、今後診療+医薬品を含む医療費に対する全体的な対応が必要だと私も思っています。


当然の帰結として、業界再編や新規事業の動きとなるわけです。

「後発品が8割を占める時代を迎え、量から質への転換が必要だ。業界再編についても、真剣に考えるべき時期に来た」(今年3月24日の中央社会保険医療協議会総会で林俊宏・厚労省経済課長〈当時〉の発言)。相次ぐ不祥事を受け、改めて業界再編を求める声が高まっています。メーカー数・品目数の多さと、それに伴う弊害はかねてから指摘されており、品質問題を機に積年の課題が一気に動き出すかもしれません。

企業としてビジネスを続けていくための方法論としてはこれで良いのかもしれませんが、ジェネリック医薬品のもつ根本的な制度上の課題については何も改善されていません。

企業努力として、企業規模を大きくしても、新規事業を始めたとしても、薬価制度の変更が無い限り、ジェネリック医薬品の薄利多売ビジネスという足枷が付いたままです。

これに関連して、2021年10月13日の日経新聞に気になる記事があります。

薬価が毎年引き下げになるのは欧米先進国の中で日本だけだとして、各社の日本事業への投資判断に影響を及ぼしかねないと懸念を表明した。

医薬品業界は、人々の健康を守るという側面とともにビジネスを展開する企業の集まりでもあります。そのため、海外企業から見た場合に、日本という国がビジネスとして成り立たないと認識されると、日本で使える海外の医薬品が減ってしまう可能性すらあります。

一方で、日本企業からしても海外展開の方が良いと判断すれば、日本国内への関心は薄くなりますし、新規事業のほうに大きく舵を切り、ジェネリック医薬品の縮小だって可能性としてはあると考えています。

日本国内に医薬品を供給するという社会的な責務という理念だけに立脚するのではなくて、その責務をしっかりとこなせるだけのビジネス規模が実現できるような制度に本当にして欲しいなと願うばかりです。


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